少年の主張空知地区大会 いじめと僕の夢 岩見沢市清園中2年・谷内君(学校 2019-08-08付)
【岩見沢発】空知総合振興局は7月中旬、雨竜町立雨竜中学校で少年の主張空知地区大会を開いた。管内の中学生16人が社会に向けての意見や未来への希望などを発表。審査の結果、「いじめと僕の夢」をテーマに発表した岩見沢市立清園中学校2年の谷内楓君が最優秀賞に輝いた。谷内君は、自身がハーフであることを理由に同級生にいじめられた経験を振り返り、自分をいじめから救ってくれた恩師のような先生を目指すことを宣言。自身が教師になったときにいじめに苦しむ子どもの光となれるよう、夢に向かう努力を誓った。
谷内君の発表概要はつぎのとおり。
「どうして、僕ばかりこんな思いをしなければならないんだ!」
そう思ってはいても、声に出すことができなかった。心の声は、彼らのもとには届かない。だからきょうも、いつものように叩かれた。
これは、間違いなくいじめだ。同級生たちによるいじめは、小3の夏休み明けからずっと続いていた。
どうして僕だけがいじめられるようになったのか。その理由が彼らの口から聞けたのは小5の終わりころ。それまでの約2年半、僕は、自分だけが差別されていることや、暴力を振るわれていることにずっと悩んできた。
いじめの理由。それは僕がハーフで、ほかの人と違ったからだ。ただそれだけの理由だった。僕は怒りと悔しさで胸がいっぱいになった。そんなくだらない理由でいじめられるなんて納得できない。理不尽すぎる。自分の生まれを変えることなんて誰にもできないのに。
自分はおろか、自分の大切な家族までもが否定された気持ちになった。悔しくて悔しくてたまらなかった。いじめっ子たちに対する怒りももちろんあったが、彼らと向き合わず、いつか誰かがなんとかしてくれるだろうと、他人に解決を任せ、自分からは何もしようとしなかったのが情けなかった。
僕をいじめから救い出してくれたのは5・6年のころの担任の先生だった。長嶋先生がクラスに掲げた2つのきまり。それは、「人を傷つける言葉や行動は絶対に許さない」ことと「頑張っている人や頑張っていることを認め合う」ことだった。
今、思えばすごく当たり前のことだが、恥ずかしいことに中2になった今でも守れていないときがある。長嶋先生は、このきまりを守らない人がいると、長い時間をかけてしっかりと話をしてくれた。このことが集団生活を行う上で大事なんだという先生の思いが伝わった。
このきまりのおかげで、僕はひどい“いじめ”から解放された。
しかし、目に見える暴力はなくなったものの、ちょっとした意地悪や差別は続いていた。先生は、そのことに対しても全力で向き合い、関係者同士でしっかりと話し合い、解決へと導いてくれた。
僕は、何事に対しても正面からぶつかり、全力を尽くす長嶋先生の姿を見て、深い感謝と深い尊敬で胸がいっぱいになった。このときから、僕の夢は教師になることになった。
きっかけをつくってくれた長嶋先生はもちろん、そのときまでなんとなくみていた先生方に対する視線は、熱いものへと変わっていった。子どもたちとどのように向き合い、どのような言葉をかけているのか。視野を広くもつと、先生方は一人ひとりに違う声かけや接し方をしているということが分かった。
もちろん先生方にも個性があるので、使う言葉や雰囲気も違う。しかし、どの先生からも感じられるのは子どもに対する愛情だった。いけないことをした人には、“怒る”のではなく、なぜダメなのかということを諭すための“叱る”だった。
僕は、いじめられたことをきっかけとして、このようなことまで考えられるようになった。「いじめのおかげで」というふうにいうと誤解されてしまうかもしれないが、自分の視野が大きく広がったのは紛れもない事実だった。
いじめを通じてみつかった僕の夢。教師。「どんな先生になりたいですか」。そう聞かれたら、僕は迷わず答えることができる。長嶋先生。僕の「恩師」であると同時に、「理想」だから。僕は先生のような人になりたい。
そのためには、まず、人から信頼されるような人になること。
信頼は、毎日の誠実な行いによってつくられる。勉強や生徒会、部活動はもちろん、掃除などの当番活動においても手を抜かず誠実に取り組み、努力を惜しまず夢に向かって走り続けたい。
あの日の僕のように、いじめに苦しむ子どもの光となれるように。
(学校 2019-08-08付)
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