【解説】〝ほっかいどう学〟への期待

（解説 2019-10-21付）

　ほっかいどう学を進めるきっかけとなった“北海道全体を学ぶ機会が少ない”とはどういうことなのか。それには、教育内容の変遷が大きくかかわっている。１９７１年の教育内容を定める小学校学習指導要領をみると、社会科の授業時数は１～６年まで通算６６３時間だったが、２０１１年には３～６年で３６５時間まで減少。１９８０年以前は社会科の副読本『わたしたちの北海道』が出版され、北海道を網羅的に学ぶ機会があった。しかし、授業時数の削減や学習内容の変遷によって、市町村単位を学ぶことにシフトした。

　北海道全体を広く深く学ぶ題材が失われ、道民自体が自ら育った土地の歴史を語ることができないことに危惧を抱く関係者は多い。ほっかいどう学推進フォーラムの設立は、そうした危機感が背景にある。

　一方、教材という意味で北海道は魅力に満ちた土地だ。道路、河川、農業、港湾、漁港の開発を一体的に進め、短期間でわが国の食料供給基地としての地位を確固たるものとした。それは、世界的に類をみない大きな成功事例と言える。

　先人たちがどういう苦労をしながら社会資本整備を進め、現在の暮らしにつながっているのか。それらを伝える意味でもほっかいどう学の役割は大きい。

　フォーラムの１０月１７日時点における正会員・賛助会員数は１７２団体・個人にのぼる。当面は小学校教員や教員を志す学生を対象とする教材開発の検討や、定期的なセミナーの開催を計画。着実な活動が多くの賛同者を募る最短の近道でもある。

　フォーラム関係者で作成した副読本を活用し、小学校教諭が授業をする、子どもたちは目を輝かせながら、北海道を題材に語り合う。近い将来、小学校の教室で実現することに期待したい。

(解説 2019-10-21付)