【PICK UP2019】求められる環境整備と指導力 遠隔教育の実践と課題(道・道教委 2019-12-12付)
ことしも残すところ半月余り。本道教育界では、道立高校長の公募制導入や学校における働き方改革など、多くの動きがみられました。本紙では「Pick Up2019」と題し、連載で各地域の1年を振り返ります。
◆先駆的な2校の取組
遠隔教育の推進に向けた動きが道内外で加速している。
文部科学省は、大学や研究機関などで運用されている高速の情報通信ネットワークSINET(サイネット)を令和4年度から初等中等教育で利用できるよう準備を進めている。全国の学校において、遅延や通信遮断のない高速通信による遠隔教育、機密性の高いデータ保存、費用・コストを低減した教育機会の提供が可能となる。
文科省の指定を受け、先行して取組を進める幌延町立幌延中学校は、外国語指導助手(ALT)による英語の遠隔授業、町外の道立高校生と交流する進路学習などの取組を推進。同じく道教育大学附属函館中学校は、地域政策に関する研究データをクラウド上に保存・共有し、福島町の中学校と交流する遠隔版アクティブ・ラーニングに取り組むなど、多様な実践を進めている。
◆自治体間格差が課題
一方、遠隔教育の推進に当たっては、ICT環境の自治体間格差が課題となっている。
文科省の調査によると、道内における平成30年度の普通教室の無線LAN整備率は約39%。55市町村で100%となった一方、18市町村でゼロにとどまっている。
ある自治体の関係者は「SINETが開通したからといって、通信速度の向上に直結するわけではない」と指摘。“高速道路”であるSINETへ接続できたとしても、学校で使うインターネットの回線速度やプロバイダが相応のものでなくては本来の通信速度が発揮されないというシステム上の制約が生じるという。円滑な接続を行うには、通信環境の整備が前提となる。
文科省は、令和2年度概算要求において、新規事業のGIGAスクールネットワーク構想の実現に374億円を要求。3ヵ年で全小・中学校、高校、特別支援学校で高速・大容量の通信ネットワークの整備を推進する計画で、初年度は全学校の3分の1となる約1万校での整備を目指している。
2年度から小学校で使用される新学習指導要領に対応した教科書では、URLやQRコードが記載されているものが多く、無線LANやタブレット端末など、教育の情報化を見据えたものとなっている。
ある教育行政関係者は、財政措置の拡充が必要としつつも「必ずしも高額な機器を一度にそろえる必要はない。地域や学校の優先順位を踏まえ、計画的にICT環境の整備を進めることが必要」と語る。
◆ソフト面の充実が重要
これまで道内小・中学校における遠隔教育は、児童生徒数の減少に対応するため、へき地校間をつなぐ合同授業型が主たるものだった。しかし、これからは新学習指導要領で示される対話的な学びの機会以外に、ALTなど専門家による質の高い教育の提供、日本語指導が必要な児童生徒、不登校や病弱児童生徒への支援など、多様な活用が想定されている。
ある関係者は、ICT機器や通信環境の整備だけでは十分ではないとし「ICT機器を効果的に活用する優れた実践事例の共有、教員の指導力向上など、ソフト面を充実させていくことが重要」と指摘する。
広域で小規模校の多い本道において、遠隔教育への役割と期待は大きい。そのための基盤となる環境整備と、教員の指導力が求められている。
(道・道教委 2019-12-12付)
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