【Pick UP2019】専門性高め切れ目ない支援を 高校における通級指導
(学校 2019-12-19付)

 本年度、全道の高校における教育上特別な支援を必要とする生徒の割合は1・0%ながら、1~2割に達する高校もあるなど実態は様々だ。ただ「年々増えてきている」との声は少なくない。

 平成30年4月から高校等における通級による指導が制度化。通常の学級に在籍している障がいのある生徒に対し、一部の授業において生徒の障がいの状況に応じた自立活動に相当する指導を行うもので、個々の障がいによる学習上・生活上の困難を改善・克服することが期待されている。

 通級による指導は、制度施行の2年目ということもあり、積極的な議論を行う学校がみられる一方、「あまりなじみがない」「校内で話題に挙がらない」など、いまだ浸透していない学校もある。ある教育関係者は「通級による指導を学習の遅れを取り戻すもの、希望があれば必ず実施するものと誤解する声がある」と懸念する。

◆校内体制構築を

 本年度から通級による指導を実施している高校では、校内委員会を中心に自立活動の必要性を検討。

 指導体制づくり、合理的配慮の構築など1年間をかけて準備を進めてきた。担当した教諭は「(指導を受けた生徒は)健康面・精神面共に安定してきた」と、通級指導の効果を話す。

 通級の指導によって特別な教育課程を編成する必要性を検討するには「校内体制の構築が前提」と関係者は話す。

 校内体制づくりを工夫しているある高校では、教職員の専門性の向上を目指し特別支援学校の教諭などを招いた校内研修を充実させている。また、本人や保護者からの情報をもとに、特別な支援や配慮が必要な生徒の実態を把握して年度当初から職員全体での情報共有を重視。専門的な関係機関の助言を受けながら、校内体制を構築している。

◆中高間の連携重要

 生徒の情報収集に当たっては「中学校との入学前の連携が一層深まれば、受入体制もより充実するはず」と学校関係者は指摘する。

 ある高校では、合格発表後に各中学校にチェックリストの記入を依頼し、新入生全員に対して対人関係や学習面などの実態を把握している。市の研修会や会議などで他校種との情報交換の場があることや、高校から積極的に生徒の進路動向などを伝えていることもあり、中学校から「スムーズに引き継ぎをしてもらっている」との声も上がっている。

 一方、他の高校からは「合格発表後からの短期間では十分に情報を収集できない」という声もある。

 中高連携に向けて、ある教諭は「学校間の努力のみならず、市町村や管内レベルでの切れ目のない支援に向けた連携・引き継ぎ体制の構築が必要」と指摘。

 また、今後通級を実施するに当たっての懸念事項として、専門性をもった人材の配置や校内環境の整備を課題に挙げる学校もあり、行政の一層の支援を求める声も多い。

◆多寡にかかわらず

 通級実施の必要性、特別な支援が必要な生徒の多寡にかかわらず「できる限り校内体制を整えておくことは多様な実態のある目の前の生徒へのきめ細かな教育にもつながる」と関係者は話す。

 専門機関からの助言を受けてすべての教職員の専門性を向上させながら、校内だけでは補えない部分を行政で支援し、全体で切れ目のない支援の充実に向けた取組が求められている。

(学校 2019-12-19付)

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