【Pick UP2019】 可視化と共有化で意識向上 上川 学校の働き方改革
(学校 2019-12-20付)

◆文科相メッセージ

 働き方改革が必要なのは先生を楽にするためではありません。学校が、子どもたちの未来に直結する場所だからです―。

 ことし3月、柴山昌彦文部科学大臣(当時)が発信したメッセージだ。「保護者・地域の皆さまへ」と題し、働き方改革への理解を求めたもの。

 教職員の長時間勤務の深刻な実態を踏まえ、学校現場における早急な対応の必要性を訴えて、「先生にしかできない教育活動に全力投球していただきましょう」と協力を呼びかけた。

 道教委は昨年3月、学校における働き方改革「北海道アクション・プラン」を策定した。策定から2年目を迎えた現在、上川管内の学校現場では「意識の高まりを見せているのは確か」とある関係者は話す。

 一方で、現場の校長からは「若手職員が熱心に教材研究に取り組んでいる姿を見ると、“帰って”とは言いづらい」「部活動の大会があったり、学校行事があったりと、先生の忙しい時期と業務量はそれぞれ。一律にそろえるのは難しい」など、依然、困惑する声も少なくない。従来までのやり方を見直すことはそう簡単ではないのが現状だ。

◆指定2校での取組

 道教委は本年度、新規事業として、新時代の教育を支える働き方改革推進事業に取り組んでいる。教職員の意識改革や効果的な取組を推進するもの。全道で4校が指定を受け、うち、2校が上川管内。旭川市立知新小学校と旭川西高校で、両校は民間コンサルタント会社と校長経験者のチームによる業務改善を進めている。

 知新小は、教職員一人ひとりが1日の時間管理ができるよう「自分マネジメントボード」の活用に取り組んでいる。

 自分マネジメントボードは、職員室内に全員から見えるよう設置。出勤時には退勤予定時間に、退勤時には翌日の出勤予定時間にネームプレートを貼る単純な方法で、一人ひとりの出退勤予定を職員室内に掲示し、職場全体で共有する試みだ。

 この取組一つでも、教職員の意識の変容がみられるといい、本間祐一校長は「昨年に比べ、時間外勤務はかなり減った」と評価する。

 旭川西高は、出退勤を管理するフリーソフトを活用して勤務時間の把握に努めている。これまでは、部活動や学校行事などの担当によって教職員一人ひとりの忙しい時期が異なるため、目視で勤務時間を管理していたが、フリーソフトの導入によって、容易に把握できるようになった。

 遠藤孝一校長は、「教職員一人ひとりの早く帰ろうという意識が高まってきている」とフリーソフトを導入した効果を挙げる。

 両校の取組は方法が異なるものの、全教職員で勤務時間に関する情報の「可視化」と「共有化」を重視することは共通している。

 上川教育局で働き方改革に関する業務を担当する川島政吉主幹は、「課題解決に向けて、教職員間でのコミュニケーションを重視してほしい」と求める。

 可視化と共有化を通し、両校では通常の勤務時間内で業務を遂行しようとする教職員一人ひとりの意識の高まりが、効果として着実に表れてきている。

◆質の高い教育提供

 働き方改革は、長時間勤務の解消だけが目的ではない。

 上川教育局の河野秀平局長は、校長会や教頭会などを通し、「これまでの働き方を見直し、日々の生活や教職人生を豊かにすることで、その専門性や人間性を高め、子どもたちに対する質の高い教育をしてほしい」と呼びかけている。

 働き方改革を通して生み出した時間を、子どもたちへの質の高い教育の提供に結び付けることが肝要との考えだ。

 よかれと思って長時間勤務をしても、教員が疲弊してしまっては、質の高い教育の提供は不可能となりかねない。

 働き方改革は、教職員が万全の状態で子どもたちと向き合うためのもの。文部科学大臣が「教育活動に全力投球…」としたメッセージは重い。

(学校 2019-12-20付)

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