【Pick Up2019】 地域全体で在り方協議を 渡島 小規模道立高校の存続
(学校 2019-12-25付)

 少子化が進行し、各地域で学校の統廃合が進んでいる。渡島管内においても平成以降、ほぼ毎年のように小・中学校の閉校、統廃合が進む。令和2年度には、小学校と中学校を統合した義務教育学校が、管内で初めて七飯町大沼地区に開校。さらに翌3年度には函館市戸井地区で2校目の開校が予定されている。

 なじみ深い学校名が消え、真新しい学校名が誕生する動きは、小・中学校のみにとどまらない。

 道立高校も例外ではない。道立高校に関しては、道教委は、中卒者数や地域の意見などを考慮し、配置計画を策定。渡島管内においては、2年度に2校、3年度に1校で1学級減となる計画を示した。

◆地域の危機感強く

 高齢化も急速に進む小さな地域では、地域を挙げて地元高校の存続に力を入れている。地域の労働力、まちづくりを担う若者の流出に強い危機感があるためだ。

 函館市内の南茅部高校(片桐清実校長)は、本年度の入学者が9人。道教委は、これからの高校づくりに関する指針で、「第1学年の入学者が2年連続して10人未満だった場合には、再編整備を進める」と示す。

 南茅部高校は渡島半島東側の旧南茅部町地区にある。海と山に挟まれ、南北に細長い地域は高級コンブの産地。漁業に就く若手後継者は少なくない。地域の高等教育を担ってきた同校が今、再編整備の対象になる瀬戸際にある。

 4月に開かれた配置計画案の地域別検討協議会では、PTA会長が「高校生は、朝早くからの漁業やコンブ漁を支える力になっている。高校がなくなり、生徒が函館中心部の高校に進学するとなると、地域としては非常に苦しくなる」と存続を訴えている。

 7月には、教職員や関係者によるワークショップで意見を交わしたほか、10月には地域住民による南茅部高校を守る会を発足させるなど、存続に向けて積極的に取り組んでいる。

 片桐校長は、本年度着任してから学校のホームページを毎日更新。学校行事や生徒の様子などを発信することで、地域とのつながりをさらに強めようとしている。「学校周辺の地域では、漁業を支える人材が80代というのも珍しくはない。学校の存続は地域全体の願いであり、求められていること」と語る。

◆町が最大限の支援

 渡島半島西南部にある福島町内の福島商業高校(天野慎也校長)。地元の高校を存続させようと福島町は、生徒が受検する各種資格検定費用や通学費の全額補助、自動車免許取得費用の一部補助などを行い、家庭負担の大幅な軽減に努めている。

 工藤英太郎教諭は「町からの支援は、学校の存続と生徒の確保に向けたもの。指導する上でも、町の支援を受けて行っているので強い責任を感じる」と表情を引き締める。

◆再編基準に迫る

 道教委は、1学級のみで地元からの進学率が高い小規模校を地域連携特例校として位置付け、協力校から講師を招いて出張授業や遠隔授業を行い、教育機会の確保に努めている。

 現在の地域連携特例校の半数は、今後数年以内に再編基準を下回ることが予想されている。

 一方、2年度に小学校、3年度に中学校で全面実施、4年度から高校で学年進行による実施となる新学習指導要領では「社会に開かれた教育課程の実現」が求められている。

 ある教育関係者は、「地域が道立高校の在り方を協議することは難しいと感じている人が多い。小・中学校のようにコミュニティ・スクールの設置が進んでいるとはいえず、授業や行事でのかかわり以外は薄い地域が多いのでは」と指摘する。

 就職や進学、社会人生活へとつながる高校の在り方とは。「存続」を願う地域の悩みは深い。

(学校 2019-12-25付)

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