文科省 今後の遠隔教育方針 ICTで新しい教育実践 新型コロナ収束前・後に分類(コロナウイルス関連 2020-06-15付)
11日に文部科学省内で開かれた中央教育審議会初等中等教育分科会「新しい時代の初等中等教育の在り方特別部会」第9回会議では、今後の遠隔・オンライン教育の方針を示した。基本的方針と取組事項の概要はつぎのとおり。
【新型コロナウイルス感染症が収束しておらず、必要に応じて臨時休業等が行われる段階(WITHコロナの段階)】
▼基本的な方針
児童生徒の学びを保障するため、ICTを活用しつつ、教師による対面指導と遠隔・オンライン教育との組み合わせによる新しい教育様式を実践する。
▼取組事項
▽児童生徒の学習指導
緊急事態宣言解除後も、新型コロナウイルス感染症による臨時休業等が行われた場合には、一定の要件のもと、オンラインを含む家庭学習を授業と同様に評価することを明確化する。
児童生徒全員の学びの保障、特に分散登校が続くなどしている地域や最終学年に対するICT機器の優先配備、特に配慮を要する児童生徒について優先的に登校してもらうなど重点的に対応する。
学校の授業において対面で学習する活動を重点化し、ICTの活用を含む授業以外の場での学習活動を指導計画に位置付ける。
▽GIGAスクール構想の加速によるICT環境の早期整備
1人1台端末の早期実現や、家庭でもつながる通信環境の整備など、GIGAスクール構想におけるハード・ソフト・人材を一体とした整備を加速し、災害や感染症の発生等による学校の臨時休業時等においても、ICTを活用し、児童生徒の学びを保障できる環境を早急に実現する。
▽学習支援コンテンツに関する情報提供の充実
臨時休業等に伴い学校に登校できない場合においても児童生徒が多様な学習ができるよう、教師や児童生徒の利便性にも配慮しつつ、デジタル教材や動画などの学習支援コンテンツの情報提供を充実する。
▽教師のICT活用能力の向上等
教師が遠隔・オンライン教育を含めICTを活用した効果的な指導ができるよう、オンライン等を活用した教師向け研修を提供するとともに、教師の端末操作の補助等を行うICT支援員を活用し、全国の学校現場をサポートする。
▽ICT活用の先進事例の情報発信・横展開
端末やネットワーク環境等が整備されたあと、遠隔・オンライン教育を含めICTを活用した効果的な指導が進むよう、教育委員会や学校の取組を集約し、発信する。その際、他の教育委員会や学校が参考としやすいよう取組の効果や課題など情報の充実を図る。
▽臨時休業時等における学習状況の把握
臨時休業時等における児童生徒の学習実態について、学習指導の状況、学校や家庭におけるICT環境の整備状況などを把握し、今後、必要に応じて臨時休業等が行われる場合に備え、上記の取組の改善を行う。
▽臨時休業等の影響の検証
臨時休業等の影響について、既存調査の結果も活用し、臨時休業前から学校再開後の児童生徒の状況変化を分析することで、学校における指導改善につながる検証を行う。
【新型コロナウイルス感染症が収束した段階(ポストコロナの段階)】
▼基本的な方針
対面指導の重要性、遠隔・オンライン教育等の実践で明らかになる成果や課題を踏まえ、発達段階に応じて、ICTを活用しつつ、教師が対面指導と家庭や地域社会と連携した遠隔・オンライン教育等とを使いこなす(ハイブリッド化)ことで、協働的な学びを展開する。
その際、憲法や教育基本法に基づき、すべての児童生徒に対し、社会において自立的に生きる基礎や、国家や社会の形成者としての基本的な資質を養うことを目的とする義務教育と、義務教育の基礎の上に高度な普通教育および専門教育を施すことを目的とする高校における教育の違いにも留意する必要がある。
知・徳・体を一体的に育む日本型学校教育のよさを継承するとともに、履修主義と修得主義等の考え方を柔軟に併用していくことで、多様な子どもたちが誰一人取り残されることなく社会とつながる個別最適化された協働的・探究的な学びの観点から取組を進める。
▼取組事項
〈すべての児童生徒への取組〉
▽学習履歴(スタディ・ログ)を活用した個別最適化された学び
教育データ利活用の基盤となるデータ標準化等の取組を加速しつつ、学習履歴を活用した実証的取組を進めることによって、個々の状況に応じたきめ細かい指導の充実を図る。
▽教師の対面指導と遠隔授業等を融合した授業づくり
児童生徒の学習活動の質を高めるため、授業時間内において、教師による対面指導に加え、目的に応じ遠隔授業やオンデマンドの動画教材等を取り入れた授業モデルを展開する。
〈遠隔授業の実施例〉
児童生徒の習熟度に差が出やすい単元を指導する場面において、習熟度別の遠隔授業やオンデマンドの動画教材等の活用の時間や、教師や学習指導員が個別対応する時間を設けるなど、個別最適化された授業を展開。
遠隔授業において、海外の児童生徒と交流することで、多様な国や地域の文化にふれる機会を設ける。
▽高校における遠隔授業の活用
高校における同時双方向型の遠隔授業の実施について、単位数の算定、対面で行う授業の実施などの要件の見直しを行い、教師による対面指導と遠隔授業を融合させた柔軟な授業方法を可能とし、多様かつ高度な学習機会の充実を図る。
▽デジタル教科書・教材の普及促進
ICTを活用した取組の促進を踏まえ、学習者用デジタル教科書・教材についても、普及促進を図る。また、学習者用デジタル教科書の今後の在り方等について、有識者会議において、その効果・影響等について検証しつつ、使用の基準や教材との連携の在り方も含め、学びの充実の観点から検討を行う。
▽臨時休業時等に学校と児童生徒等の関係を継続し学びを保障するための取組
新型コロナウイルス感染症を含む様々な感染症や自然災害等によって、臨時休業等が行われた場合においても、学校と児童生徒等の関係を継続し、心のケアや虐待の防止を図るとともに、学校の教育活動を継続し、児童生徒等の学びの保障を着実に実施するために、制度的な措置等について検討・整理する。
〈取組例〉
各設置者において、臨時休業時等においても学校と児童生徒等の関係を継続し、学校の教育活動を継続するための計画を作成するよう要請する。
〈多様な児童生徒への取組について〉
▽多様な児童生徒に対応した個に応じたきめ細かな指導
障がいのある児童生徒、日本語指導が必要な児童生徒へのICTを活用した学習支援、デジタル教材等を活用した児童生徒の理解度や特性に応じた学習活動を進める。
不登校児童生徒も含め、関係機関と児童生徒の状況を共有し、支援しやすい環境を構築するため、個別の支援計画等の作成および電子化を進める。さらに、音声読み上げやルビ振り等の特別な配慮を必要とする児童生徒の学習に資する機能をもつ学習者用デジタル教科書の活用を促す。
▽学校で学びたくても学べない児童生徒への遠隔・オンライン教育の活用
遠隔・オンライン教育を活用し、学校で学びたくても学べない児童生徒(病気療養、不登校など)に対する学びの保障、教師やスクールカウンセラー等による電話、メールだけでなく、遠隔技術等を用いた相談・指導の実施について、出席扱い等に関する制度の活用促進や好事例の周知を図る。
▽個々の才能を存分に伸ばせる高度な学びの機会など新たな学びへの対応
臨時休業中における遠隔・オンライン教育の実践を踏まえつつ、個別最適化された学びの効果的な実現に向けて、教育課程の特例を認める制度を活用し、実証的取組を進める。
〈実証的取組の例〉
▽義務教育段階
遠隔・オンライン教育によって、日本や外国の大学や研究機関、企業等をはじめとした社会の多様な人材・リソースなどを活用することで、普段ふれることが難しい最先端のアカデミックな知見を用いて特異な才能をもつ児童生徒等に対する指導を行う。
ICTの活用等による効果的・効率的な学習と、探究的な学習の充実を組み合わせるなどのカリキュラム・マネジメントによる授業時数の弾力化に向けて検討する。
特別な配慮を必要とする児童生徒に関して特別な教育課程を編成し、多様なメディアを効果的に活用し遠隔教育を行うこと(やむを得ず学校に登校することができない児童生徒については、学校外における受講も認めること)について、特例的な措置を講じ、対面指導と遠隔教育とをベストミックスさせた指導方法の研究開発に向けた実証研究を実施する。
▽高校段階
多様なメディアを効果的に活用し、家庭における同時双方向型オンデマンド型の学習を授業の一部として特例的に認めることによって、対面指導と遠隔・オンライン教育とをベストミックスさせた指導方法の研究開発に向けた実証研究を実施。
▼中山間地域等の地方の学校における遠隔授業の活用
▽義務教育段階
山間・へき地や、小規模校などの学校において、児童生徒間の多様な交流や専門家による対面での指導が困難な場合に、遠隔授業を積極的に活用することによって、児童生徒が多様な意見や考えにふれ、協働して学習に取り組む機会の充実を図り、また、児童生徒の学習活動の質を高めるとともに、教師の資質向上を図る。
▽高校段階
生徒の希望する進路を幅広く実現するため、地域圏の複数の高校をネットワーク化し、同時双方向型の遠隔授業を実施し、科目の相互履修を可能とする新たな仕組みを構築する。その際、遠隔授業配信センター方式による遠隔授業の配信を推進するための必要な方策も併せて検討する。
(コロナウイルス関連 2020-06-15付)
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