4種校長会長インタビュー第1回 未来見据えチームで前進 北海道小学校長会 神谷敦会長 
(関係団体 2020-07-02付)

道小学校長会神谷敦会長
道小学校長会・神谷敦会長

 新型コロナウイルス感染リスク低減に向けた「新しい学校生活様式」の実践をはじめ、働き方改革や後継者育成など、例年以上に教育界を取り巻く状況は目まぐるしい動きをみせている。本紙は、本道教育の発展と充実に大きな役割を果たす道小学校長会、道中学校長会、道高校長協会、道特別支援学校長会の各会長に、当面する課題や今後の展望などを聞いた。

―会長としての抱負

 道小学校長会は、昭和32年の発足から63年目を迎えた伝統ある組織である。これまで、北海道の教育が幾多の困難に直面する中、「正論を以って正道を歩む」という理念のもと、校長の職能向上と北海道教育の振興・発展を図ることを目的として、長きにわたって活動を行ってきた。

 この組織の先頭に立ち、活動を推進してきた歴代の会長の意思を引き継ぎ、全道991人の会員と力を合わせながらその職責を果たしていきたい。

 施策提言や要望活動への積極的な取組を通じ、この道小学校長会の組織を活性化させるとともに、道教委、道中学校長会、道PTA連合会、民間教育団体等の教育関係諸団体などとも連携を図りながら、「未来を見据え、チーム北海道として進む道小学校長会」として北海道教育の充実に努めていきたい。

―抱える課題と対策

 現在、学校現場が抱える課題は複雑化・多様化しており、いじめ・不登校などの生徒指導上の問題、貧困・児童虐待などの課題を抱えた家庭への対応、特別な教育的支援を必要とする児童への対応、様々な保護者へのきめ細かな対応など山積している。特に、ことしは、全面実施となった新学習指導要領への対応、そして働き方改革への対応についても強く求められている。

 新学習指導要領への対応について。

 小学校は新学習指導要領全面実施の年を迎えた。しかし、新型コロナウイルスの影響によって、授業時数をどのように確保するかだけでなく、3密を避けた中で、いかに主体的・対話的で深い学びを実現するかも大きな課題となっている。

 学校行事の見直しや削減、長期休業日の短縮や土曜日授業の実施によって、標準授業時数の確保はどの学校もかなり見通しが立ってきていると言えるが、主体的・対話的で深い学びの実現にかかわっては、学習活動が限定されていることもあり、移行期に準備していた内容をすべて行うことができない状態である。したがって、当面は活動可能など内容を工夫しながら、状況に応じて柔軟に対応していく必要がある。

 こうした状況だからこそ、校長として広い視野からのカリキュラム・マネジメントに努め、教育課程の編成に努めていくことが重要となる。

 働き方改革の推進と業務改善について。

 本年度、改正給特法の施行の年となり、勤務時間の客観的把握が求められている。積み上げてきた日本の教育のよさを継続しつつ業務の精選に努め、長時間労働の解消に向けて一層取り組まなければならない。業務軽減につながるICT機器および環境の整備、専科の導入、スクール・サポート・スタッフ等の外部の人材活用、さらには教職員定数の改善といった制度そのものの改正に向けた働きかけなど、働き方改革に向けた多方面からの取組が必要である。この改革が進むことによって、教員の時間的ゆとりが生まれ、日々の授業の充実にもつながっていくことになる。

―本年度の重点

 1点目は、授業改善の日常化である。

 予測が難しく、急激に変化するこれからの社会を生きる子どもたちには、社会の変化を前向きに受け止め、豊かな創造性を備え、社会を自立的に生き、社会の形成に参画するための資質・能力が必要であり、その力を育成することが私たちに求められている。こうした資質・能力をもった子どもたちを育成するためには、主体的・対話的で深い学びが生まれる授業を、日々の授業からより一層意識し進めていかなくてはならない。

 現在、様々な制約がある中で主体的・対話的で深い学びを具体的にどのように進めるのかを、私たち校長がしっかりと見極め、リーダーシップを発揮し、それぞれの学校での授業改善の日常化に向けた取組を推進していくことが必要となる。私たち校長自身もネットワークを広げて互いに学び、自らが学び続け研鑚に励む職能団体を目指していくことが大切である。

 2点目は、研修体制の充実である。

 本年度は、新型コロナウイルスの感染予防という観点から、第63回道小学校長会教育研究オホーツク・北見大会の会同を中止し、書面開催とした。教育研究大会は、全道各地から多くの会員が一堂に会して、研究テーマに沿った分科会での討議や、膝を交えて各地区の実情を交流する中で、互いに学校経営における視野を広めながら、校長の職能向上と本道教育の質の向上を目指すための重要な活動である。

 道小学校長会の根幹とも言える貴重な研究大会の会同は中止となったが、研修部を中心に、大会要項の作成と各分科会の実践報告を形あるものにまとめ、書面開催に向けて準備を進めている。私たち校長会が積み上げてきた学びを次年度以降につなげていくためにも、書面開催の内容の充実に努めていきたい。

 3点目は、要望活動の推進について。

 本年度、道教委へは『北海道教育の質の一層の向上をめざす教育条件の整備に関する提言~“チーム北海道”として』という提言書をすでに送っている。内容は「新学習指導要領の趣旨を生かした授業改善に向けた教育条件に関する提言」「“チームとしての学校”の実現に向けた教育条件整備に関する提言」の2つである。

 また、各地区の要望をまとめた『北海道文教施策・予算策定に関する要望書』も併せて提出している。特に、教職員定数の改善に関しては、授業改善や働き方改革に大きく関係することであり、大きな問題であることを本年度も伝えていく。

 こうした要望事項は、道教委、市町村教委だけではなく、文部科学省、関係行政機関、国会議員や地方議員等への意見表明や要望活動に結び付けていきたい。

―新型コロナウイルスへの対応

 各学校では、学校行事の見直しや削減、夏季・冬季の長期休業の短縮や土曜日授業の設定などによって、授業時数の確保に取り組んでいる。また、感染症のリスクの低減に向けて、新しい学校生活様式に基づく教育活動を進めている。

 今、私たち校長が考えるべきことは、子どもたちや教職員の生命と人権を守り、安全で安心な生活を過ごしていくための取組を、それぞれの限られた条件の中でいかに進めていくかである。ようやく、第2波が落ち着いたようにも感じられるが、今後、第3波や4波、さらにはインフルエンザ等による再度の休業等も十分に予想されることから、こうした状況を想定した対応策の策定が急務である。

 どんな状況においても、子どもたちの学びを止めないこと、一人ひとりの学びを保障することが重要である。この2ヵ月間の休業によってみえてきたのは、学校そして各家庭のICT環境の脆弱さである。とりわけ、各家庭のICT環境には大きな差があり、オンライン授業などがまだまだ難しい家庭も多い。

 GIGAスクール構想の前倒しによって、本年度末までには1人1台の端末が準備されることは朗報であるが、さらに双方向のオンライン授業がすべての家庭で実現可能な状態まで進める必要があると感じる。

 コロナ対応に関する国の補正予算が成立し、様々な補助金が各自治体に入ってくることとなる。学びを止めないための学校教育の充実に、優先的に充てていただけるような働きかけも、組織として取り組んでいきたい。

 かみや・あつし

 昭和59年道教育大札幌分校卒業後、札幌市立澄川西小に赴任。平成22年札幌市立東光小教頭、25年札幌市立新川中央小教頭、27年同校長、29年札幌市立篠路小校長。

 昭和35年8月11日生まれ、59歳。札幌市出身。

(関係団体 2020-07-02付)

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