4種校長会長インタビュー 第4回 センター的機能充実に注力 北海道特別支援学校長会 木村浩紀会長(関係団体 2020-07-07付)
道特別支援学校長会・木村浩紀会長
―会長としての抱負
中央教育審議会有識者会議で、インクルーシブ教育システム構築に向けての議論が進む中、本道の特別支援教育や特別支援学校の役割はますます重要になっている。
本会としては、広域な北海道の特別支援教育をより良くするため、障がいの重度化・多様化や学習環境、就労環境、小・中学校等に在籍する障がいのある児童生徒への対応等の課題に、道教委や市町村教委と連携して取り組むとともに、地域の人材育成を積極的にサポートするなど、専門性の向上とセンター的機能の充実に力を注いでいきたい。
―抱える課題と対策
各障がい種が抱える課題をICTの活用等を通して解決し、特別支援学校の教育を充実するとともに、各障がい種の専門性を生かして、本会の各支部が地域や専門性で役割を分担しながら、各地域の人材を育成するための支援を行い、就学にかかわる教育相談や各学校の指導・支援の充実が図られるように協力していきたい。
各障がい教育について。
視覚障がい教育では、道内4校の盲学校の連携はもとより、小・中学校の弱視特別支援学級や眼科医会等の関係機関と連携し、見え方に不安や心配を感じている保護者、学校関係者等に対する教育相談や研修支援を随時行っている。
本年度は、今まで活用してきたテレビ会議システムに加え、Zoom等のオンライン授業などにも力を入れ、コロナ渦でも道内4つの盲学校や道立特別支援教育センターと連携した取組が継続してできるように進めている。また、道外の盲学校等との関係を大切にするため、今まで以上にICTを活用した連携を強化していく。
聴覚障がい教育では、釧路鶴野支援学校を含む道内の聾学校7校がそれぞれの地区において教育相談等を行い聴覚障がい教育のセンター的機能を担っている。また、北海道では聴覚障がい乳幼児療育事業として、聾学校の乳幼児相談室が聴覚に障がいのあるゼロ歳児から2歳児の療育を行っている。
聾学校に在籍する幼児児童生徒の障がいの状態や実態が多様化していることを踏まえ、医療機関や保健機関、行政機関などの関係機関と連携を密にし、多面的に子どもをとらえながら、効果的・効率的な言語指導、学力向上に取り組んでいる。聴覚障がいの状態等に応じて、音声、文字、手話、指文字などを適切に活用して、的確な意思の相互伝達が行われるよう指導方法を工夫するなどの聴覚障がい教育の専門性の向上を図りながら、増加する人工内耳装用者や重複障がい幼児児童生徒への指導など、多様な教育的ニーズへの対応に努めていく。
知的障がい教育では、自立と社会参加を目指す教育を進めているが、年々増加する児童生徒、障がいの多様化に対応するため、教育環境の整備と教育課程の改善・充実に取り組んでいる。
今後も感染症対策が継続することが予想され、遅れがちであったICTを活用した教育への取組や、集団性を主体とした学習活動、社会資源を活用した活動等にも新たな視点で取り組む必要が出てきた。従来の知的障がい教育の良さを確認しながら、地域社会で働き、生活できる人を育てるために、制約があっても教育効果を上げる教育課程の在り方について研究協議を深めていきたい。
障がい種別としては最も学校数が多く、地域の状況、各学校の抱える課題も様々であるが、課題の集約、情報提供を迅速に行い、知的障がい教育校同士の連携強化を図っていきたい。
肢体不自由教育では、幼児児童生徒の障がいが重度・重複化、多様化の傾向にあり、個々のニーズに応じたより質の高い教育の実現と、社会環境の変化に対応した後期中等教育の在り方等が課題となっている。
本年度、道立の肢体不自由教育校・病弱教育校9校にテレビ会議システムが導入され、児童生徒の交流の促進や教職員の授業力の向上、研修機会の拡充などに期待が寄せられている。また、他の通信手段を組み合わせることで札幌市立校との連動した取組も可能となり、すでに医療的ケアの基本研修が5月にリモートで実施され、今後の教職員の専門性の向上に大いに役立つものとなることが期待される。
病弱教育では、医療技術の進歩に伴う入院期間の短縮化等によって、特別支援学校で学ぶ児童生徒数は減少傾向にあるが、学びの連続性を担保するための前籍校との確実な引き継ぎや長期入院の高校生への教育の在り方が課題となっている。また、この8月、国立病院機構八雲病院が札幌の道医療センターへ移転することに伴い、八雲養護学校も手稲養護学校の三角山分校として札幌に機能移転し、校舎を新たに開校することとなる。
これまでに例がない、道立の手稲養護三角山分校と札幌市立の山の手支援学校の2校が同一の校舎の中で教育活動をスタートさせる。生ずる課題を整理しつつ、2校間において新しい教育実践を積み上げていくとともに、今後の北海道の病弱教育の在り方全体について再検討を図っていく必要がある。
―新型コロナウイルス感染症への対応
本会では、特別支援学校の幼児児童生徒の生命や健康の安全性の確保と安心な教育環境の整備、授業時数の確保等にかかわる、より具体的な手立てを講ずることで、学校の危機管理機能と安全な教育機能の充実を図ることができると考え、4月に緊急調査を行い、道教委の担当部署と協議してきた。
具体的には、「幼児児童生徒の生命および健康のための、感染防止対策にかかる不足物品等の整備・購入等に関すること」「学習や学校運営のための、遠隔授業や会議にかかる設備の整備」「クラスター防止のための、特別支援学校用ガイドラインの作成」など、スクールバスや寄宿舎等を抱える特別支援学校の事情を反映した対応について協議し、学校再開後も本会を中心に各学校が連携しながら、様々な対応を行っている。
―本年度の重点
1 幼児児童生徒の生命と健康を守る取組を
コロナ渦における幼児児童生徒の生命や健康を守るために緊急調査等を行い、スクールバスや寄宿舎等での課題、オンライン授業など、特別支援学校が抱える課題等について整理するとともに、3密を避けるための工夫や消毒を丁寧に行いながら、教育の質を落とさない取組を道教委の関係部署と連携して展開する。
2 ICT等を活用した効果的・効率的な取組を
テレビ会議システムの活用等、ICTを積極的に活用して、幼児児童生徒の学習環境を整えるとともに、専門性の向上、人材育成、経費削減、負担軽減のすべてが成り立つような取組を引き続き展開する。
テレビ会議システムやZoom等を活用したオンライン授業の展開(交流および共同学習を含む)や教職員の研究会や研修会、会議等(校長会を含む)にICTを積極的に活用することで、集まって取り組むことが難しい状況でも、工夫して開催できるようにするとともに、効果的・効率的な運営に努める。
3 地域の人材育成を
センター的機能の充実を図り、各市町村と連携しながら、各地域の専門性の向上や人材育成をより推進できるようにしていきたい。 平成30年度から、高校における通級指導が制度化され、これまでの適切な学びの場の選択から適切な学習内容の選択へと変わりつつある。
幼・小・中・高・特すべての校種が、自校において特別支援教育を考え、そのつながりをより重視していく必要がある。
障がいの多様化やより一人ひとりのニーズに合った教育を保障していくために、本会としては、センター的機能の発揮に努めるとともに、各校種の校長会とも連携して、専門性の向上や人材育成をより推進できるように、地域、圏域の特別支援教育の推進に寄与していきたいと考えている。
きむら・ひろき
昭和60年道教育大旭川分校卒。平成24年函館盲校長、26年旭川盲校長、28年道立特別支援教育センター所長を経て、30年札幌視覚支援校長。
昭和36年2月21日生まれ、59歳。小樽市出身。
(連載終わり)
(関係団体 2020-07-07付)
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