寄稿 GIGAスクールの普及に向けた私の失敗日記 (下) 児童生徒の側に立つ授業を 北海道文教大学人間科学部子ども発達学科教授 石垣則昭氏(学校 2020-10-20付)
北海道通信社のご理解を得て、特別寄稿として、4月に、新型コロナウイルス感染拡大下における主体的・対話的で深い学びの進め方を書かせていただきました。
理由は新型コロナウイルス感染拡大下では主体的・対話的で深い学びを進めることができないとの否定的な意見を聞かされたことにあります。
あらためてご説明いたしますが、主体的・対話的で深い学びとは教育方法です。教育方法ですので、当然、目的があります。それは思考力の育成です。必要な知識を身に付けさせながら、創造的、発展的に考える力の育成が主題となっています。
ソーシャルディスタンスを保つためには、対話はできないと聞きますが、対話とは自己対話と他の人との対話とがあります。つまり、授業中、個々でじっくり問題に取り組む場面や、ワークシートを作成し、それを児童生徒が交換するなど対話は十分可能です。さらに、一定の距離を置き対話的活動をすることも可能です。
対話はなぜ必要か。分からないことを聞き合ったり、自分の考えを深めたりしながら、思考力などを身に付ける機会です。
Google Classroomの活用は、グループを編成し児童生徒と教師ばかりではなく、児童生徒同士の対話が可能であることが分かりました。機会をみて試してみようと思っていますが、児童生徒相互の対話は深い学びにつながらないと聞くことがあります。GIGAスクール構想の導入で説明的な授業に終始しては、児童生徒に求められる力が身に付きづらくなります。
私の大きな反省点でもありますが、操作技能の向上に気を取られ、教材研究が真に学生の側に立った内容であったかどうかです。
GIGAスクールの導入で求められるのは、操作技能とともに、対面授業で求められている児童生徒の側に立つ授業づくりだと思います。特に、対話の場面では、児童生徒への問いを教材研究の段階で検討しているかどうかです。日常の授業では、教材の内容を研究しても、児童生徒への問いかけはその場その場で対応するという先生の声をよく聞きます。
「〇〇について話し合ってください」「〇〇についてグループで考えてください」では、児童生徒は「〇〇について話し合ってどうするのですか?」「グループで話し合ってどうするのですか?」となります。
また、グループのメンバー全員が自分の意見を述べるのではなく、得意な児童生徒だけが意見を述べ、他がその意見に追従するようであれば、対話をする意味は見出せません。
「グループで1人1分、順番に説明してください」「グループで話し合ったあとは全体交流をしますが、グループ〇番目の人が発表します」など、児童生徒の活動中ではなく、前もって問いの内容を検討し告げるようにしなければなりません。
さらに、創造性や応用力を高めるため、答えを求める学習から、考え方を求める学習が大切であると言われています。特に、対話的な学習では「〇〇の答えについて、グループで話し合ってください」では、特定の児童生徒の答えがグループの答えになりやすく、グループで話し合う目的から遠ざかります。「〇〇の答えは〇〇ですが、なぜ、このような答えになるのでしょうか。自分なりに考え、途中でもいいので、グループで全員発表し交流してください」などとしてはどうでしょうか。
こう書く私は、今も操作技能と授業力の向上のため試行錯誤の毎日を過ごしています。
(学校 2020-10-20付)
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