教育大釧路 特別支援保護者対象に調査 コロナの悩み 運動不足 家族以外とかかわる機会減(コロナウイルス関連 2020-12-11付)
【釧路発】道教育大学釧路校の特別支援教育研究室は、特別支援学校に在籍する児童生徒の保護者を対象に実施した新型コロナウイルス感染症にかかわるアンケートの結果をまとめた。全国一斉休業中の子どもの生活についての悩み・困り事では、回答者の8割超が「運動不足」と回答。「テレビ・ネットに使う時間が増えた」「自宅から出たがらなくなった」との回答も多かった。家族の悩みでは「感染しても隔離生活ができない」「家族以外とかかわる機会が減った」といった回答が多く、親子共に心身の負担が大きかったことが明らかになった。
新型コロナウイルス感染症による全国一斉休業や外出自粛に加え、学校再開後の生活制限等が、障がい児の生活と発達にどのような影響を及ぼしているかを明らかにすることで、今後の課題を考察することが主な目的。
調査は9~10月に実施。対象は東京都や埼玉県の一部と、全道の特別支援学校73校に在籍する児童生徒の保護者で、有効回答数は549件となっている。
アンケートでは、休校中の子どもの生活についての悩み・困り事、家族の悩みなどについて質問。福祉サービスでの困り事や学校再開後の学校生活への不安などのほか、学校・行政に対する要望なども尋ねた。
子どもの生活についての悩み・困り事(複数回答)では、「運動不足」との回答が全体の8割を超えた。また、テレビ・ネットの使用時間増は7割弱と高い回答率となった。「自宅から出たがらなくなった」とする回答も5割を超えた。
自由記述では、運動不足による体重増、筋力低下のほか、イライラ、情緒不安定などのメンタル面での影響を挙げる声があった。研究室では「パニック、自傷行為など発達面での影響も多く、てんかん、音や光への過敏の進行など病気や障がいの進行もみられ、深刻な状況がうかがわれる」と分析した。
家族の悩みでは、母親の多くが子どもの介助を含め、養育全般を担っていることから、「感染しても隔離生活ができない」「自分が倒れられない」などの回答が上位を占めた。研究室は「精神的に張り詰めた状態で、ストレスが大きかったことがうかがえる」と分析した。
自由記述には、預け先がなく就労困難となり仕事を辞めたという声や、留守番ができずマスクも付けることができない子どもとやむを得ず外出した際、周囲からの冷たい視線や心ない言葉を浴びせられたなど、障がい児への理解不足を痛感させられる意見もあった。
福祉サービスに関しては、放課後デイサービスの利用回数が減ったという保護者が3割以上にのぼりり、自ら感染に対する不安から利用を控えた家庭も少なくなかった。身近に養育・介助を頼める人がいなく、障がい児と保護者が孤立していく状態がみられた。
一方で、施設等への感謝の意見も多く寄せられており、放課後等デイサービスは子どもや保護者にとって大きな支えになっていることもうかがえた。
国・行政に対しての要望で一番多かったのは「障がい児専用の相談窓口や支援の充実」で、半数以上の保護者がコロナ禍での相談・支援体制の充実を望んでいた。
また、障がい児やその家族への理解についての意見も多く、障がい児に対する教育・福祉の課題がさらに浮き彫りとなった。
研究代表を務める小野川文子准教授は「いろいろな負担や不安があることが分かった。てんかんやチックなどの発作の症状が多く出るなど、心身への影響も大きい。障がい児への理解を深めるとともに、サポートする仕組みの確立が必要。個の努力だけではなく、国や行政などの公的サービスのさらなる充実もお願いしたい」と話した。
調査結果は、道教育大特別支援教育プロジェクト「ほくとくネット」ホームページで閲覧できる。
(コロナウイルス関連 2020-12-11付)
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