【4種校長会長に聞く】 第1回 北海道小学校長会 神谷敦氏 “チーム北海道”重点に
(関係団体 2021-01-07付)

4種校長会インタビュー神谷会長
道小・神谷敦会長

―校長会としての新年の展望をお聞かせください。

 昨年12月17日、全国の公立小学校全学年で令和3年度から5年間かけて、段階的に35人学級に移行することが大臣折衝で決定しました。複数の学年で人数が見直されるのは約40年ぶりという大きな動きでした。

 30人学級という声も上がっていましたが、最終的には財務省と文部科学省との妥協によって、35人学級で落ち着いた形となりました。30人学級を期待していた現場としては残念ではありましたが、今回は中学校の措置がなかったことを考えると、小学校にとって大きな前進であったといえます。

 萩生田光一文部科学大臣が「35人学級を充実したものにして、さらなる改善を進めたい」と述べているように、35人学級を一つのステップとしてつぎにつなげていくことが大切であると考えます。そして、小学校での35人学級の効果が検証されることによって、中学校の少人数学級化にもつながることを踏まえると、全小学校での4月からの35人学級の充実に責任をもって取り組んでいかなくてはなりません。

 この35人学級の実現は、学校現場が直面している「教職員定数の見直し」や「人材確保」「働き方改革」「子どもと向き合う時間の確保」などの様々な課題とつながっていると考えます。

―校長会の抱える課題と対策をお願いします。

 北海道小学校長会として、つぎの5つに関して考えを述べます。

▼授業改善とICTの活用

 小学校では学習指導要領が昨年から全面実施となりましたが、新しい生活様式という多くの制約の中で、教育活動を進めていくことが求められました。特に、今回の改訂の柱である主体的・対話的で深い学びの授業改善に取り組む際、密を避けなくてはならない状況で、気を付けなくてはならないことはどのようなことなのか、そして、主体的・対話的で深い学びの実現で具体的にどのようなことが可能であるのかなど、多くの学校がこの課題に直面したと思います。

 直面して積み上げてきた昨年の実践を踏まえ、学習指導要領で目指すこの授業改善をさらに進めていくことが重要と考えます。

 この授業改善に向けて、ICTの活用が考えられています。他の先進国に遅れを取っているといわれていたICT環境の整備が、GIGAスクール構想の前倒しによって一気に進み、1人1台端末と通信環境が整ってきています。北海道では、ことし3月までにはすべての小学校に全員分の端末がそろい、4月からは活用できる予定です。

 新しい生活様式の中で、1人1台の端末を各学校でどのように活用し、一人ひとりの個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実につなげていくかが強く求められることになります。

▼働き方改革の推進と業務改善

 北海道では、昨年12月11日に全国で初めて1年単位の変形労働時間制の条例が可決され、4月から札幌市を除く道内の公立学校で導入が可能になりました。最終的に導入するか否かの最終判断は学校現場ではありますが、教員の長時間労働がまだ十分に解消されておらず、長時間労働の原因となっている業務改善も十分に進んでいない状況があります。

 この条例の基本条件である月45時間という勤務の上限が守られていない教員もまだ多数いる実態もあり、校長会としては慎重な対応をしていく必要があると考えています。

 業務改善に向けては、各学校が事務作業の効率化のためのICT機器の活用や専科教員の導入、外部人材活用などの創意工夫をしながら取り組んでいるところでありますが、まだ十分な成果を上げているとはいえません。教員1人が受けもつ授業時間数が減らなければ、子どもと向き合う時間を確保したり、きめ細かな指導を行ったりすることも難しいと言えます。

 こうした中にあっても、昨年のコロナ禍における休業の際、各学校では授業時数の確保という視点から、学校行事を含めた教育課程の見直しが進んだことは前進でした。ビルド&ビルドを続けてきた学校において、限られた時間の中で、今までどおりに時間をかけて行う意義のある教育活動と、前例踏襲で慣例的に継続し行うものの精選が進んだといえます。

 こうした教育課程全般の見直しは、私たちの働き方改革につながっていくものと考えられます。限られた時間の中で必要な教育活動を吟味することによって、地域を巻き込んだ各学校の特色ある教育活動推進に向けた働き方改革は前進すると考えています。

 働き方改革を進めるに当たっては、人材不足解消も大きな課題といえます。期限付教員の不足、採用試験における小学校教員希望者の低倍率といった現状では、私たち校長が魅力ある学校づくりを発信するだけでは、根本的な解決には至りません。

 道教委と一層の連携を図り、人的配置の問題が解消されるようにエビデンスに基づいた提案や要望を行っていく必要があります。

 全国連合小学校長会では、教員の確保に向けて教員免許法の抜本的見直しが重要であるとの立場を示しており、道小としても支持する方向で臨みたいと考えています。

▼組織の健全化について

 令和2年度の道内の小学校数は、初めて1000校を切り991校となりました。今後2年間は10校程度減少が続き、その後は若干の減少にとどまるのではないかと予想しています。

 道小の企画研修委員会では、こうした学校数および会員数の減少による課題への対応と今後の道小の組織力の充実・向上を目指すための組織改革について、時間をかけて検討してきました。

 具体的には、会同が必須ではない会議をウェブ会議にすることによって会議費の支出を抑えたり、印刷物のデジタル化などによっても支出を抑えたりするなどの取組を進めることになります。

 必要に応じて、今後も現状を把握し、道小の大会、理事研修会や地区研など、道小の根幹となっている活動を維持しつつ、組織の健全化について検討し改善を図っていきます。

▼研修体制の充実

 教育研究大会は、全道各地から多くの会員が一堂に会して、研究テーマに沿った分科会での討議や、膝を交えて各地区の実情を交流する中で、互いに学校経営における視野を広めながら、校長の職能向上と本道教育の質の向上を目指すことができる重要な活動であり、道小の根幹をなすものとして位置付けています。毎年、開催地区校長会の皆さんの精力的な取組によって運営されています。

 昨年は残念ながら誌上交流となったオホーツク・北見大会でしたが、たくさんの方々の意見や感想をいただき、充実した誌上交流となりました。全国の各地区校長会においても、誌上交流まで掘り下げて取り組んだ校長会は北海道だけです。

 本年度の第64回教育研究石狩・千歳大会は、9月9~10日に開催されます。コロナ対策として例年よりも少ない参加人数での開催や分科会数を11にするなど、例年とは異なる運営となりますが、実り多い大会となるよう、石狩管内小中学校長会を中心に、道小の会員全員の力を結集していきたいと思います。

▼要望活動の推進

 道小では、毎年春、要望書および提言書を道教委に提出しています。

 『北海道文教施策・予算策定に関する要望書』については、各地区からいただいた要望をまとめ、次年度に向け、北海道中学校長会、北海道公立学校教頭会とともに道教委に要望しています。例年は7月末に行われる道教委との文教施策懇談会・各課懇談会にも活用されるものであり、すでに各地区への働きかけを行っているところです。

 また、提言書は、「北海道教育の質の一層の向上をめざす教育条件の整備に関する提言~チーム北海道」として提出しています。内容については、大きく「授業改善に向けた教育条件に関する提言」「教育条件整備に関する提言」の2つにまとめてあります。新年度に向けて、内容の精査に入っているところです。このような要望事項は、道教委、市町村教委だけではなく、全連小とも連携し、文科省・関係行政機関・国会議員や地方議員等への意見表明や要望活動に結び付けていきたいと考えています。

―新年度の重点的取組を伺います。

 道小学校長会では、ここ数年、「チーム北海道」を掲げ、活動を進めてきました。

 新年度も道中学校長会、道公立学校教頭会はもちろん、道教委や各市町村教委等の教育関係諸機関と連携を図りながら、コロナ対応も含めた学校現場が直面する様々な教育課題の解決に向けて取り組んでいきたいと考えています。

 かみや・あつし

 昭和59年道教育大札幌分校卒。同年、札幌市立澄川西小を振り出しに、平成2年札幌市立手稲宮丘小、6年札幌市立新琴似小、12年札幌市立あいの里西小、18年札幌市立東苗穂小、22年札幌市立東光小教頭、25年札幌市立新川中央小教頭、27年同校にて校長、29年から現職の札幌市立篠路小校長。

 昭和35年8月11日生まれ、60歳。札幌市出身。

(関係団体 2021-01-07付)

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