授業改善など資質向上 帯広市教育研究所 オンライン4講座
(市町村 2021-01-19付)

帯広市教育研究所研修講座
参加者はオンラインを通じて各研修に参加した

 【帯広発】帯広市教育研究所(髙橋譲所長)は1月の4日間、令和2年度冬季教員研修講座を開いた。新型コロナウイルス感染症対策として、従来の集合型の研修からリモートでメーン会場と各学校をつないだオンライン型の研修に変更。延べ955人が授業改善に資する内容や特別支援教育の視点を生かした学級経営、帯広市指導要録ソフトの使い方など4講座を受講し、教員としての資質向上を図った。

◆深い学びの実現へ可視化や操作化を 國學院大の田村教授

 7日、國學院大學の田村学教授を講師に迎え、「“主体的・対話的で深い学び”の実現に向けて今、学校でやること」と題してオンライン講演会を開いた。

 新学習指導要領において主体的・対話的で深い学びが求められる中、学習指導要領改訂の中心を担った田村教授を講師に授業改善の具体や評価について理解を深めるもの。各学校等から70人が参加した。

 田村教授はOECD(経済協力開発機構)の調査結果を示し、人材育成面で企業が期待することと大学・大学院の取組、保護者の意識調査などを挙げ、「学びに向かう力・人間性」「生きて働く知識・技能」「思考力・判断力・表現力」といった小・中学校、高校で育成を目指す資質・能力の3要素の重要性を強調した。

 主体的・対話的で深い学びの“深い学び”について、〝事実的で個別的な知識〟をネットワーク化し、概念的で構造的な知識へと発展させ、「知識・技能をつなぐことと関連付けることが大切」とした。

 深い学びを実現する授業のイノベーションについて、平成28年度の全国学力・学習状況調査の結果をひもときながら、異なる多様な関係者とのコミュニケーションを通して自ら学ぶ、共に学ぶ状況を設定して分かるようにする可視化と、かかわることができる操作化を行うことを示した。

◆特別支援の視点で崩れない学級経営 桃山学院教育大松久教授が指摘

 8日、桃山学院教育大学の松久眞実教授を講師に迎え、「崩れない学級づくり~特別支援教育の視点を生かして」と題してオンライン講演会を開いた。

 通常の学級において配慮を必要とする子どもが増加する中、特別支援教育の視点を生かした学級づくりや授業づくりが期待されていることを受け、特別支援教育の視点から崩れない学級づくりや授業づくり、通常学級における配慮を必要とする子どもへの支援について理解を深めるもの。各学校等から45人が参加した。

 松久教授は、特別支援教育におけるハード面とソフト面の支援がそれぞれあることを示した。

 ハード面に当たるものとして、視覚支援、スケジュールの提示、教室の構造化を紹介。ソフト面に当たるものは、褒め方・叱り方、分かりやすい指示の出し方、教師との関係性とした。

 障がいのある子とない子ができるだけ同じ場で共に学ぶユニバーサルデザインの授業づくりのためには、集団へのハード面の支援をベースにソフト面の支援を行い、個別の支援につなげる重要性を指摘した。

 様々な子どものいる学級における学級経営には秩序、育成、成長の3つの状況があることを伝え、秩序の段階では、①叱る基準を明確にする②教室の刺激を減らし、静寂の時間をつくる③中間層を味方につけて、支援の必要な子どもを巻き込んでいく―の3点を解説した。

 静寂の時間をつくるためには、掲示の工夫や教室の音の管理、教師の発話などの具体的な手法を使って、アイコンタクトなど非言語による授業づくりを行うことを紹介した。

 このあと、育成段階や成長段階における学級経営の手法について解説した。

◆自己有用感育む視点を教育活動に 日大の藤平教授

 12日、日本大学の藤平敦教授を招き、「学校の主役は一人一人の子どもたち~不登校・いじめ等の未然防止のため今、学校でやること」と題してオンライン講演会を開いた。

 各学校の教員やPTAなど800人が参加。市内でも不登校やいじめが増加している中、日本における生徒指導のトップランナーである藤平教授から、自己有用感を切り口とした不登校やいじめの未然防止、早期対応に向けた具体的な方策などについて学んだ。

 藤平教授は講演の目的として「子どもの学びに向かう力を育むため、子どもの自己有用感を育む視点を入れることの必要性を共有する」ことを示した。

 非認知能力(社会情緒的能力)を「自ら調べようとする力」とし、自分に関する意欲・自制心・誠実さなどと、人とかかわる協調性や思いやりなどの2つに分けて説明。こうした力は、IQや学力テストでは測定できないと強調した。

 また、非認知能力は学習指導の土台となっているとし、「子どもの学びに向かう力を育むために、日々の教育活動に子どもの自己有用感を育む視点を入れる」ことを呼びかけた。

 子どもの自己有用感が高まると、いじめの追跡調査の結果から他者を攻撃する可能性が低くなり、意欲的な活動につながり、結果的に落ち着いた学習環境を維持することに結び付くと説明。

 さらに、自己有用感は子どもが主体的に活動する中で自ら獲得するものであることを説き、教師や大人にできることはそのための場や機会を提供し、子どもたちを“つなぐ”ことが重要と呼びかけた。

◆指導要録ソフトの適切な使い方説く 花園小の須貝教諭

 13日、教育研究所情報教育グループ所員で花園小学校の須貝昌美教諭を講師に、「指導要録の電子化に向けて~帯広市指導要録ソフトの使い方」と題してオンライン講演会を開いた。

 各学校の教員など40人が参加。学習指導要領の改訂に伴って導入した市指導要録ソフトが本年度から使用されている。須貝教諭は出欠簿ソフトの作成者で、ソフトの使い方やデータの移行方法などについての演習を指導した。

 指導要録の使い方について、通常学級では学籍に関する記録はアナログで記入し、指導に関する記録は卒業するまで電子データで保存することを示した。

 ソフトの使い方として、クラスごとのフォルダの管理、入力データの転記、PDFや紙での一括印刷、データの回収、要録枠の出力が可能であることを紹介。

 よくある質問として、「指導要録はソフト上だけで作成し、印刷しなくてもよいのか」「指導要録のデータはどこに保存すればよいのか」を挙げ回答。印刷については、年度初めの4月と年度末の3月のデータ作成と同時に必ず印刷し、公文書として適切に保管することを推奨した。

(市町村 2021-01-19付)

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