3年度文科省文部科学関係予算案③
(国 2021-02-04付)

 文部科学省の令和3年度文部科学関係予算案主要事項はつぎのとおり(カッコ内%は前年度比)。

《大臣官房文教施設企画・防災部》

【公立学校施設の整備】=688億3700万円(99・1%)

 学校施設はわが国の将来を担う児童生徒の学習・生活の場であり、より良い教育活動を行うためには、その安全性・機能性の確保は不可欠。ポストコロナの新たな日常の実現に向けて、学校においても感染症対策と児童生徒の健やかな学びの保障を両立していくことが必要。

▼令和時代の学校施設のスタンダード

▽新しい生活様式も踏まえ、健やかに学習・生活できる環境の整備=空調設置(教室、給食施設)、トイレの洋式化・乾式化、給食施設のドライシステム化

▽個別最適な学びを実現する施設環境の整備=バリアフリー化、特別支援学校の整備、1人1台端末環境への対応

▽多様な学習活動に対応する施設環境の整備=施設の複合化・共有化と有効活用、オープンスペースや少人数学習に対応するための内部改修

▼防災・減災、国土強靱化

▽子どもたちの生命を守り、地域の避難所となる安全・安心な教育環境の実現=体育館の空調設置、防災機能強化等

▽計画的・効率的な長寿命化を図る老朽化対策=長寿命化改修へのシフト、公的ストックの最適化

▼制度改正

▽バリアフリー化工事の補助率引き上げ(3分の1↓2分の1)

▽給食施設の空調設置工事補助対象化

▼建築単価

▽単価改定=対前年度比4・6%増

▼実践研究

▽「新しい時代の学び」対応型学校の先導的モデルの開発支援

▼好事例の横展開

▽先進事例の発掘、表彰制度の創設等

【公立学校施設の災害復旧】=12億7400万円(64・6%)

 豪雨、台風等の一般災害からの復旧や、東日本大震災によって被害を受けた公立学校の復旧にかかる経費を国が財政的に支援することによって、公立学校施設の復旧を推進し、学校教育の円滑な実施を確保する。

【国立大学・高専等施設の整備】=363億2000万円(100・6%)

 国立大学等の施設は、将来を担う人材の育成の場であるとともに、地方創生やイノベーション創出等教育研究活動を支える重要なインフラである。一方、著しい老朽化の進行によって安全面・機能面などで大きな課題が生じている。

 このため、キャンパスにおける〝共創〟を推進するため、老朽化した大学等の教育研究施設や国立高等専門学校の校舎・学生寮などのインフラを戦略的リノベーション等によって計画的・重点的に整備する。

▼安全対策・機能強化等

▽施設の安全対策・機能強化

▽ライフライン再生

▽高度化・多様化する教育研究活動への対応

▽長寿命化促進事業

▽大学附属病院の再生整備

▼防災・減災、国土強靱化▽非構造部材を含む耐震対策・老朽改善

▽ライフライン再生

▽感染症研究拠点の整備

▽多用途型トリアージスペースの整備

▽換気空調設備等の環境改善整備

【文教施設に関する整備指針等の策定】=8471万円(123・0%)

▼多様化する学習内容・方法等の変化に対応した学校施設等の整備推進

▽学校施設の在り方に関する調査研究

・学習指導要領の改訂を踏まえた学校施設の在り方について検討

▽学校施設のバリアフリー化推進にかかる調査研究

・計画策定に盛り込むべき事項、記載事例などを整理した手引き等を作成

▽学校施設整備指針等の普及啓発

・新時代の学びに対応した学校施設整備の事業計画段階を支援し、その成果を発信・普及

・優良な学校施設整備の事例を表彰する制度を創設し、横展開を図る

▼文教施設におけるPPP/PFI推進

▽文教施設における多様なPPP/PFIの先導的開発事業の実施

・地域や施設の特性等に応じた手法の開発や課題整理等を行う地方公共団体を支援するとともに、先導的な事業の収集・分析を行い、その成果を全国に発信・普及

▽キャッシュフローを生み出しにくい文教施設へのPPP/PFI導入ガイドラインの作成

・包括的民間委託や維持管理に特化したPFI方式等、新たな手法を導入する際の留意事項等をまとめたガイドラインを作成

【文教施設の防災対策の強化・推進】=745万円(28・9%)

▼学校施設の耐震化等防災機能の強化等

▽学校施設の安全性の確保および防災機能強化

・学校施設における安全性確保のための点検項目、対策例や留意点の取りまとめ

・浸水想定区域等に立地する学校施設の浸水対策等の検討

▽学校施設の耐震化推進にかかる普及啓発

・非構造部材の耐震対策等を含めた学校施設の防災機能強化に関する講習会の開催

・耐震化推進に関する技術的な相談窓口の設置

【文教施設の環境対策の推進】=1114万円(86・2%)

▼環境を考慮した学校施設の整備推進

▽環境を考慮した学校づくりの普及啓発

・エコスクールの整備推進等の普及啓発

▽学校施設整備における木材活用の推進

・木造校舎の計画立案から維持管理等まで手引書をより分かりやすく解説した事例集の作成

・木材を活用した教育環境の整備事例の紹介、地球環境問題に対する意識向上を図るための講習会の開催

▽省エネルギー対策の推進

・省エネ法に基づく指導助言として現地調査の実施および講習会の開催

▽健全な学校環境の確保

・学校施設の維持管理の推進に関する調査研究

【公立文教施設事務経費等】=2億132万円(101・9%)

▼公立文教施設事務費等

▽老朽化対策の促進

・学校施設の長寿命化改良等にかかる講習会の開催

▽廃校活用の促進

・優良事例の横展開、民間事業者と地方公共団体のマッチング

▽都道府県事務費交付金

・義務教育諸学校等の施設費の国庫負担等に関する法律等に基づき、各都道府県教育委員会に必要な経費を交付

【国立大学法人等施設事務経費等】=2987万円(79・7%)

▼国立大学法人等事務費等

▽国立大学法人等施設の中長期的な整備方針の策定等

・今後の国立大学法人等施設の在り方に関する有識者会議の実施

・国立大学法人等の共創拠点形成を支援し、その成果を発信・普及

▽施設マネジメントの推進

・国立大学法人等施設の長寿命化に向けた施設マネジメントに関する調査研究の実施

▽大学等施設の整備にかかる基準等の策定

・技術的基準等の策定、普及啓発

《大臣官房国際課・国際統括官付》

【国際協働によるSDGs(持続可能な開発目標)達成への貢献】

 諸外国および国際機関(ユネスコ・G20・国連大学・OECD等)との協働を通じて、SDGs目標達成のための施策を推進するとともに、わが国の教育の国際化、国際社会や地域社会で活躍するグローバル人材の育成を図る。

▼国内外におけるユネスコ活動の推進=3億5500万円(97・8%)

 ユネスコへの信託基金の拠出を通じ、わが国の知見とユネスコの専門性を活かした事業を展開し、SDGs達成への貢献およびわが国のプレゼンスの向上を図る。国内においても持続可能な開発のための教育(ESD)の優れた取組を一層促進するほか、多様なステークホルダーの知見を結集するプラットフォームを通じたユネスコ活動の活性化、ユネスコ加盟70周年を契機とした若者の新たな日常における学び、交流の場の提供など、国内外のユネスコ活動を戦略的かつ効果的に推進する。

▽コロナ禍後の社会におけるユネスコ活動を通じた持続可能な社会づくり(新規)=1200万円

 2021年は日本のユネスコ加盟70周年となる記念すべき年である。

 一方、コロナの感染拡大によって学びの在り方を含めた社会の在り方が大きく変わる中、新たな日常に向けた社会変革の推進力となる人材や、地球規模の課題を自分事としてとらえ、何ができるかを主体的に考える力を発揮できる人材の必要性が増大している。

 未来を担う若者が、予測不可能な禍の中で社会・地域が直面する課題に対するユネスコ活動を通じた取組を共有するとともに、新たな学びの在り方やポストコロナにおけるユネスコの役割について世界に発信することで、新たな日常における学び、交流の場を提供するとともに、持続可能な社会の実現に貢献する。

▽ユネスコ事業への協力=2億円(100%)

 日本の強みとユネスコの専門性のシナジーを期待することのできる事業を中心とした協力を戦略的・重点的に実施することで、わが国がユネスコにおいてより重要な地位の確保を図りつつ、SDGs達成に向けた国際貢献・協力を進めるため、ユネスコに対し信託基金を拠出する。

・教育・科学分野=日本の知見を生かしたコンテンツ支援や能力開発、ネットワーク形成支援、SDG4(教育)推進支援、ESD for 2030の効果的な推進

・ユネスコ「世界の記憶」事業=記録物の保全・保護等に関する能力開発およびアジア太平洋地域各国の実情に応じた記録物の保護・保全等のための支援

▽ユネスコ未来共創プラットフォーム=9200万円(82・1%)

 世界や地域の課題解決に資するユネスコ活動の活性化に向けて、SDGsの達成に向けた取組等を進める多様なステークホルダーの知見を得て、国内のユネスコネットワーク拠点の戦略的整備と先進的なユネスコ活動の海外展開を一体的に推進する体制を構築する。

・ユネスコ未来共創プラットフォーム構築・運営業務

・国内ユネスコネットワーク拠点の戦略的整備(ユネスコスクールネットワーク、ユネスコ世界ジオパーク、ユネスコエコパーク等)

・先進的なユネスコ活動の海外展開

▽SDGs達成の担い手育成(ESD)推進事業―5000万円(100%)

 新学習指導要領(本年度以降、本格実施)に「持続可能な社会の創り手育成」が掲げられ、また、2019年国連総会およびユネスコ総会において、ESDがすべての達成に貢献することが掲げられたESD for 2030が採択されたことによって、より一層のESD推進が求められる。

 こうした国内外のニーズを踏まえ、SDGs達成の担い手を育むつぎのような多様な教育活動を実施・支援し、担い手に必要な資質・能力の向上を図る。

・SDGs達成の視点を組み込んだカリキュラム、教材、地域プロジェクト等の開発および教育実践

・SDGs達成の中核な担い手となる教師の資質・能力の向上

・ESDによる教育(学習)効果や学習者の変容を測る評価手法の開発、実践、普及

・SDGs達成に向けた、ユース世代によるESDの取組の支援等

▼コロナ禍を踏まえた新たな日本型教育の戦略的海外展開に関する調査研究事業(EDU―Portニッポン2・0)=7500万円(104・2%)

 近年、諸外国の首脳や教育大臣等からわが国の教育への高い関心が示されている中、より層の厚い日本型教育の海外展開を推進するため、関係省庁、政府系機関、民間企業を含む教育関連機関等から構成する日本型教育の海外展開官民協働プラットフォームを平成28年から設立・運営。

 令和2年に発生した新型コロナウイルス感染症によって世界の教育ニーズは一変し、公衆衛生教育等の充実に各国の関心が高まっているところ、本プラットフォームの機能を最大限に活用しつつ、With・Postコロナにおけるわが国の公衆衛生教育等の戦略的海外展開に向け、調査研究等を実施する。

▽公衆衛生教育等の海外展開に関する調査研究

 コロナ禍を踏まえたわが国の公衆衛生教育など、より各国のニーズに応える具体的なテーマ設定や手法の在り方等に関する調査研究を実施。

▽官民協働プラットフォームの運営

 官民協働プラットフォームのもと、シンポジウムやセミナー等を通じた関係者間での議論・情報共有を図るとともに、海外向けの広報機能の強化等を通じ、日本の教育の国際化に資する、より戦略的な海外展開の推進を図る。

▼国連大学との協働=1億4400万円(100%)

 SDGsの達成等の地球規模課題解決に貢献するグローバル人材育成のため、国連システムのシンクタンクであり、わが国に本部を置く唯一の国連機関である国連大学との協働を実施する。

▽国連大学を活用したSDGsを推進するグローバル人材育成=1億4400万円(100%)

 わが国に本部を置く唯一の国連機関である国連大学を最大限に活用して、グローバル人材の育成を推進するため、つぎの事業を実施する。

・大学院プログラムの充実

 大学院修士課程・博士課程プログラム(サステイナビリティ学)を実施する。また、SDGsの領域をカバーした集中講義を実施する。

・SDGs推進グローバル人材育成のためのプラットフォーム構築

 国連大学がハブとなり、国内の大学におけるSDGs推進を担う大学プラットフォーラムを構築する。また、国際機関への就職支援および戦略的な対外連携・広報を行う。

 グローバルセミナー、日本のリーディング大学院との連携によるグローバル人材育成、国際協力プロジェクトを行う。

▼国際バカロレアの推進=1億900万円(99・1%)

 国際バカロレア(IB)は、探究型の特色的なカリキュラム、双方向・協働型授業によって、グローバル化に対応した素養・能力を育成する国際的な教育プログラム。高校レベルのディプロマ・プログラム(DP)では、国際的に通用する大学入学資格(IB資格)が取得可能であり、世界の大学入学者選抜で広く活用されている。

 幼稚園、小学校、中学校レベルのプログラムを含め、わが国のグローバル人材育成等に資するものである。

 成長戦略2020(令和2年7月閣議決定)においてIB認定校等を200校以上にする目標(2年11月現在161校)を掲げており、各地域で関心が高まっている中、その導入・運営のノウハウ等の支援に関するさらなるニーズがある。

▽国内推進体制の整備

 日本国内におけるIBの普及促進およびIBの教育ノウハウの展開等を主導する組織として、国内関係者を糾合した文科省IB教育推進コンソーシアムを運営し、IB認定校等の増加に向けてのIB普及促進活動を促進する。

▽国際バカロレア機構との協力

 国際バカロレア機構と協力して、高校レベル(DP)の一部科目を日本語でも実施可能とすることによって、わが国の学校におけるIB導入を促進する。

▼新時代の教育のための国際協働=4億5900万円(99・8%)

 G7教育大臣会合やG20教育大臣会合等の枠組みにおいて、SDGsの達成やSociety5・0時代の到来に対応するための国際社会に共通の教育課題への対応が求められていることを踏まえ、諸外国との教育交流や国際機関との連携を通じて、新時代に対応した教授法や授業設計の改善、教育モデルの開発等の取組を進め、新たな時代に求められる人材を育成する。

▽教職員交流を通じた教育実践の改善

 テーマとなる教育課題について、大学等が中心となり事前調査のあと、直接・オンラインを通じた授業実践等の協働作業や交流を通して、教授法や授業設計などわが国の教育との相違点等について現場体験に基づく比較研究を行い、改善点を見い出すとともに、国内外へ成果の普及を図る。

▽日米教育交流の推進

 教育交流計画に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府の間の協定に基づき、日米教育委員会に資金を拠出し、日本と米国2国間の教育交流事業であるフルブライト奨学金事業および教員交流事業を実施する。

▽国際機関との連携

 時代の変化に対応した新たな教育モデルを開発するOECD事業Education2030に協力する。

▼OECDとの協働=1億3000万円(98・5%)

 世界最大のシンクタンクであるOECDと協働し、教育政策上重要な課題の調査・研究を実施する。

▽生徒の学習到達度調査(PISA)等

 教育に関する国際的な調査である生徒の学習到達度調査(PISA)および世界の教育統計データに関する調査・分析・指標開発を行う教育インディケータ事業(INES)を実施。

▽教育研究革新センター(CERI)

 OECDの教育研究革新センターにおいて、教育分野のイノベーションを推進するための教育研究事業を実施する(例・「AIとロボットが教育に与える影響の理解」など)。

(国 2021-02-04付)

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