オホーツク管内3年度教育推進の重点 地域課題探究型の教育を 野上局長 高・特校長へ要請
(道・道教委 2021-04-27付)

管内教育推進の重点、全景
5つの重点を説明した

 【網走発】オホーツク教育局の野上義秀局長は20日、網走市内の北コミュニティセンターで開かれた管内高校・特別支援学校長会議で令和3年度管内教育推進の重点を説明した。「社会の変化に対応する教育の推進」「豊かな心と人間性を育む教育の推進」など5つの重点を示し、これからの時代に求められる資質・能力の育成に向けて、新学習指導要領の実施に向けた学習・指導方法の充実などを要請した。重点の概要はつぎのとおり。

 これまで同様、道教育推進計画に示された北海道の基本理念である「自立」と「共生」、そして、6つの目標である「社会で活きる力の育成」「豊かな人間性の育成」「健やかな体の育成」「学びを支える家庭・地域との連携・協働の推進」「学びをつなぐ学校づくりの実現」「学びを活かす地域社会の実現」を位置付け、目標1から目標5の内容との関連を重視するとともに、令和2年度管内教育推進の重点の年度末評価において課題がみられた取組や、今後も重点的に取り組む必要がある取組を焦点化し、重点を5点定めた。

【重点1 社会の変化に対応する教育の推進】

 主体的・対話的で深い学びを実現し、子どもたちが未来を切り拓くために必要な資質・能力を身に付けさせるとともに、科学技術の進展、高度情報化社会など社会の変化に対応する情報教育の推進やキャリア教育、特別支援教育を推進し、社会的・職業的に自立するための力を育むことが重要。

 こうしたことから、これからの時代に求められる資質・能力の育成についてお願いしたいことは、各種調査等の結果の分析をもとに、学校の課題を明確にし、改善を図る具体策を立てて実行するなど、学校が学力向上に向けて組織的に取り組むこと。

 そのため、各学校においては、新学習指導要領の実施に向けた学習・指導方法の充実を図るようお願いする。

 特別支援教育の充実についてお願いしたいことは、幼児期から学校卒業後までの切れ目のない一貫した指導や支援の充実に向けて、学校種間の連携を図った支援体制を確立するとともに、校内研修の充実を図り、教職員の専門性を向上させること。

 管内においては、個別の指導計画や教育支援計画を作成し、学校種間での引き継ぎや関係機関との連携に活用されてはいるものの、十分な状況ではないことから、幼児期から就労に至るまでの各段階において、保護者等の理解のもと、各計画を効果的に活用していくことが必要。

 そのため、各学校においては、すべての教員等が特別支援教育に関する指導や支援についての知識や技能を身に付けることができるよう、教育と福祉が連携を図り、校内研修プログラムや実践事例集等を活用したり、外部専門家を招へいしたりするなど、校内研修および教育相談等の充実に向けた取組を推進するようお願いする。

 情報教育の充実についてお願いしたいことは、GIGAスクール元年を迎え、ICT機器を効果的に活用するなど、指導方法の工夫改善を図ること。

 道立高校においては、4年度からBYODによる1人1台端末が整備・実施される。このことを踏まえ、教師が積極的にICT機器を活用するとともに、指導にかかる校内研修を行うなどして、授業改善を図っていくことが必要。

 そのため、各学校においては、すべての児童生徒の可能性を引き出す、個別最適な学びと、協働的な学びを実現するため、各教科等の指導における生徒1人1台端末の効果的な活用など、ICT活用の内容を取り扱う校内研修や遠隔研修を実施し、教職員のICT活用指導力の向上を図るようお願いする。

 キャリア教育の充実についてお願いしたいことは、児童生徒一人ひとりの社会的・職業的自立に向けて必要となる資質・能力を育成すること。

 管内においては、本年度からすべての学校で作成しているキャリア・パスポートを効果的に活用するなどして、生徒が将来を前向きにとらえられるようにしていくことが必要。

 そのため、各学校においては、児童生徒の発達の段階を踏まえ、キャリア・パスポートを活用するなどして、学ぶことと働くことの意義を意識して学習や学校生活等の見通しを立てたり、振り返ったりすることができる指導の充実に向けた取組を推進するようお願いする。

【重点2 豊かな心と人間性を育む教育の推進】

 道徳教育、ふるさと教育、読書活動などを通じて基本的な倫理観や規範意識を身に付けさせ、ふるさとへの誇りと愛着、思いやりの心や美しいものに感動する心など、豊かな心の育成を図るとともに、各種の体験活動を通じて、自然の大切さや自分の価値を認識させ、他者と協働することの重要性などへの理解を促したり、いじめや不登校などの未然防止と早期発見・早期対応に取り組んだりすることが重要。

 こうしたことから、道徳教育の充実についてお願いしたいことは、新学習指導要領に示された道徳教育の目標を踏まえ、道徳教育の全体計画を作成し、校長の方針のもとに、道徳教育の推進を主に担当する教員を中心に、全教師が協力して道徳教育を展開すること。

 そのため、各学校においては、生徒や学校の実態に応じ、指導の方針や重点を明らかにして、各教科・科目等との関係を明らかにすること、その際、新学習指導要領の公民科で新設される公共および倫理ならびに特別活動が、人間としての在り方・生き方に関する中核的な指導の場面であることを見据えて、道徳的価値観の形成や自己の生き方についての指導の充実を図るようお願いする。

 ふるさと教育の充実についてお願いしたいことは、生徒が自分の住む地域についての理解を深め、郷土への誇りや愛着をもつことができるよう取組を進めること。

 高校においては道教委の新規事業として、北海道CLASSプロジェクト(地学協働活動推進実証事業)が本年度から始まる。

 本事業は、地域と学校との連携・協働体制を整備し、活動を通じて「まち・ひと・しごと」と「学び」とのつながりづくりに貢献できるような取組を実施するものであり、地域創生の取組と言える。

 道内を4圏域に分け、圏域ごとに研究指定校(推進校1校、連携校1校)を指定し、当該指定校に地域コーディネーターを配置することで高校と自治体や産業界をつなぎ、キャリア教育にもつながる地域課題探究型の教育を推進する。

 本事業を推進するに当たり、研究指定校ごとに、地域コーディネーターをはじめ、研究指定校校長、自治体の担当者、総合振興局職員、企業・経済団体関係者、NPO、大学などの研究機関、保護者、道教委職員で構成するコンソーシアムを構築することとしている。

 なお、コミュニティ・スクールや地域学校協働活動など、学びと地域づくりが一体となったプロジェクトを支援するため、道教委の社会教育主事が本事業の研究指定校以外の高校にも巡回訪問することとしているので、よろしくお願いする。

 体験活動の推進についてお願いしたいことは、学校が教育活動の一環として位置付けている体験活動を一層充実させること。

 管内においては、各学校が特別活動や総合的な探究の時間などを教育課程に位置付けて取り組んでいるが、一部の学校において、各領域のねらいを踏まえた活動となっていない実態がみられることから、体験活動が各領域の目標を達成するための学習活動となるよう、取組の充実を図ることが必要。

 そのため、各学校においては、総合的な探究の時間や特別活動などで、体験活動を適切に位置付けるとともに、各教科等の関連を図りながら、学校の教育活動全体を通した取組を推進するようお願いする。

 いじめの防止や不登校児童生徒への支援の取組の充実についてお願いしたいことは、校内体制を確立するとともに、関係機関と連携して対応するなど組織的な取組を進めること。

 管内においては、いじめの積極的な認知による早期解決に向けた迅速な対応をしているが、いじめが原因で不登校になる重大事態が校種問わずどこの学校でも起こり得ることを教職員全員で認識することや、不登校の対応が時間の経過とともに学級担任任せになってしまわないようにすることなど、関係機関との連携を含めた組織的な取組を進めることが必要。

 そのため、各学校においては、いじめ・不登校の未然防止に向けて、子ども会議を開催するなど、学校内外において児童生徒の主体的な活動を推進し、児童生徒のコミュニケーション能力を育成するとともに、いじめ・不登校に対する支援として、学校外での学習活動等の適切な把握も含めたICT等を活用した学習支援や相談支援に関する取組の充実を図るようお願いする。

【重点3 心身の健やかな成長を促す教育の推進】

 生涯にわたって健康を保持増進し、豊かなスポーツライフを実現させ、体力・運動能力の向上を図るとともに、健康教育の充実に取り組んだり、食に関する正しい知識と望ましい食習慣を身に付ける食育を推進したりすることが重要。

 こうしたことから、体力・運動能力の向上についてお願いしたいことは、学校における体育、保健体育の授業の一層の充実を図るとともに、授業以外における運動機会の確保などによって、子どもの運動習慣の定着を図ること。

 そのため、各学校においては、新体力テスト等の結果の分析を踏まえた、体育、保健体育の授業の改善に組織的に取り組むとともに、課題のある種目を複数回実施するなど、学校全体で体力・運動能力の向上に向けた検証改善サイクルを確立することについて取り組むようお願いする。

 健康教育の充実についてお願いしたいことは、学校保健委員会を中心として児童生徒等の健康に関する指導を組織的に進めること。

 そのため、各学校においては、学校保健委員会を学校組織図に位置付けるとともに、学校医の助言のもと、アレルギー疾患やメンタルヘルスおよび感染症の対策など、学校の新しい生活様式を踏まえ、地域や児童生徒等の実態に応じた効果的な取組を推進するようお願いする。

【重点4 学びを支える家庭や地域との連携・協働の推進】

 基本的な生活習慣や豊かな情操など、すべての教育の出発点である家庭と、次代の郷土をつくる人材や地方創生など、社会総がかりで教育の実現の中核となる地域との連携・協働を推進することが重要。

 こうしたことから、家庭との連携促進についてお願いしたいことは、学校と家庭、地域が協働して、児童生徒等の望ましい生活習慣や学習習慣の確立に向けた取組を進めること。

 そのため、各学校においては、家庭学習・宿題の内容や分量について、学校全体で共通理解を図り、発達の段階を踏まえて系統的な指導を行い、家庭と共に取組状況を評価するとともに、児童生徒の発達の段階に応じた家庭学習習慣の確立に向け、家庭と連携した取組を推進するようお願いする。

 地域の特色を生かした子どもの活動拠点づくりの推進についてお願いしたいことは、学校が放課後や長期休業等における学習活動を一層充実させること。

 管内においては、各学校が地域の教育資源や時間を効果的に活用し、放課後や長期休業中の活動に取り組んでいることから、今後も意義のある取組を継続するなど一層の充実を図ることが必要。

 そのため、各学校においては教員の働き方に配慮しつつ、放課後や長期休業、土曜日における充実した学習や多様な体験活動機会の提供など、豊かな教育環境を整備するようお願いする。

 地域の教育力を生かした学校づくりの推進についてお願いしたいことは、新学習指導要領の理念である社会に開かれた教育課程の実現に向けて、学校が地域と一体となって取り組む体制を構築すること。

 そのため、各学校においては、どの地域においても質の高い教育を受けることができるよう、学校におけるICT環境を整備し、義務教育における遠隔教育の実践研究に取り組むとともに、高校教育における遠隔授業の体制整備を推進するようお願いする。

【重点5 学びをつなぐ学校づくりの実現】

 変化の激しい社会において、幼児児童生徒を取り巻く状況の変化や、新たな教育課題に対応するため、教員の資質・能力の向上、学校段階間の連携や学校運営の改善を進めることが重要。

 管内においては、皆さんのリーダーシップのもと、学校における働き方改革が着実に進められているが、改革をさらに一歩先に進めるためには、複雑化・多様化する学校課題を解決するための組織や業務の在り方を検討する必要がある。

 そのため、各学校においては、メンターチームの編成による若手教員や将来のスクールリーダーを継続的に育成する仕組みを構築するよう特にお願いする。

【おわりに】

 現在、世界で猛威を振るっている新型コロナウイルス感染症は、我々人類が直面している大きな課題である。未来を生きる子どもたちには、こうした先のみえない様々な課題を乗り越え、予測困難な社会を生き抜くための力を身に付けさせる必要がある。

 各学校においても、日々刻々と移り変わる状況の中で、適宜判断し、対応しているが、今般の新型コロナウイルス感染症への対応のみならず、学校教育は、様々な今日的な教育課題に対して、時代の潮流を的確にとらえ、柔軟かつ創造的に対処することが求められている。

 皆さんには、子どもたちの健康と安全、輝く未来を守る学校としての役割を果たすべく、学校組織のトップとして、経営手腕を大いに発揮することを期待している。

 教育局としても、皆さん一人ひとり、さらには、管内教育委員会協議会教育長部会や管内校長会と、これまで以上に連携を密にしながら、オホーツク教育全体の質の向上に努めていく。一層の協力をお願いする。

(道・道教委 2021-04-27付)

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