道議会質疑 予算特別委員会(令和2年12月8日)
(道議会 2021-05-20付)

【Q 質問Question A 答弁Answer P 指摘Point out O 意見Opinion D 要望Demand】

【質問者】

▼植村真美委員(自民党・道民会議)

▼白川祥二委員(北海道結志会)

▼道見泰憲委員(自民党・道民会議)

【答弁者】

▼小玉俊宏教育長

▼志田篤俊教育部長

▼赤間幸人学校教育監

▼池野敦総務政策局長

▼小松智子学校教育局長

▼山本純史指導担当局長兼ICT教育推進局長

▼宇田賢治特別支援教育担当局長

▼阿部正幸総務課長

▼相川芳久文化財・博物館課長

▼唐川智幸高校教育課長兼ICT教育推進課長

▼川端香代子義務教育課長

▼金田敦史特別支援教育課長

▼高木順一教育環境支援課長

▼伊藤伸一生徒指導・学校安全課長

=役職等は当時=

◆豊かな心を育む教育

Q植村委員 豊かな心を育むためには、例えば、困っている人には優しく声をかける、自分の成長を感じ、生きていることを素直に喜ぶ、美しいものを美しいと感じるなどの経験を重ねることが大切であると考えるが、道教委としては、これまでどのような取組を進めてきたのか伺う。

A川端義務教育課長 豊かな心を育む教育について。本道の未来を担う子どもたちが互いに尊重し、共に支え合い、健やかに成長していくためには、地域の方々など、様々な人とのかかわり合いや体験を通して、思いやりの心、社会への貢献や命を大切にする心、美しいものに感動する心などを育むことが重要と認識している。

 このため、道教委ではこれまで、道内外の著名人を講師として学校に派遣し、講師の経験談や講話等を通して、子どもたちが様々な生き方や考え方にふれ、夢や目標をもって生きることの大切さなどを学ぶ、子どもの心に響く道徳教育推進事業に取り組んできた。

Q植村委員 道教委の事業として、どのような講師を派遣し、どのような内容の講話が行われているのか、また、講話を通して、子どもたちからどのような感想が寄せられているのか伺う。

A川端義務教育課長 事業の内容などについて。事業では、幅広い経験や優れた知識、技術を有し、全国的に活躍しているスポーツ選手や芸術家などを道内の希望する学校に派遣し、スポーツや音楽などの実技指導も交えながら、あきらめずにやり遂げることの大切さや、自然や美しいものにふれることの喜びなど、講師の実体験に基づく経験談や、子どもたちへの期待を語っていただいている。

 子どもたちからは、「夢や希望をもち続け、前へ進んでいくことが大切だと思った」「自分の将来について考えるきっかけとなった」「美しい演奏の迫力に圧倒され、感動した」などの声が寄せられた。

Q植村委員 子どもたちが豊かな感性を磨いていくためには、身近な地域の美術館や博物館などの施設や人材などを積極的に活用するなど、優れた芸術作品などとのかかわりを通して、感動したり、尊敬したり、畏敬の念を深めたりする機会を設けることが大切だと考える。

 こうした施設や人材などの活用について、道教委の考えを伺う。

A小松学校教育局長 多様な人材等の活用について。本道の子どもたちに、感性を豊かに働かせながら、新たな価値を生み出していく創造性や豊かな心を養うためには、様々な分野で活躍する方々の協力を得ながら、美術や音楽等の芸術作品などにふれる機会を多様に設定することが重要と考えている。

 道教委としては、地域の芸術文化や人々の暮らしを伝える美術館、博物館などの学芸員や収蔵作品を活用するなどして、事業の一層の充実を図りながら、豊かな心と創造性を育む教育の推進に努めていく。

Q植村委員 今、道内においては、世界遺産登録を目指すもの、日本遺産、北海道遺産をはじめ、函館や小樽に代表されるように、貴重な歴史的建造物も見られる中、文化財の継承のために、道としての現状の課題をどうとらえているのか伺う。

A相川文化財・博物館課長 文化財の継承のための課題について。文化財は、本道の長い歴史の中で生まれ、育まれ、今日まで守り伝えられてきた貴重な財産であり、本道の文化の礎となっている。

 しかし、文化財は、一度失われてしまえば再現することが難しいものであり、近年の過疎化や少子・高齢化などを背景に、伝統や技術を引き継いでくれる後継者の不足や、自治体による維持管理体制のぜい弱化、文化財に対する積極的な情報発信や文化財継承の担い手として様々な活動に参画する機会の確保などの課題があると認識している。

Q植村委員 地域の日ごろからの取組や社会教育で、さらに子どもと大人も一緒になって理解を深めていく必要があると感じている。また、遺産建造物の技術的な継承においても問題視されている。道教委としての考えを伺う。

A相川文化財・博物館課長 歴史的建造物の技術継承について。木工、屋根ふき、左官、装飾、畳などの日本古来の伝統建築技術は、自然素材を用いることで地震や台風に耐える構造と、日本独特の豊かな建築空間を生み出す歴史的建造物の保存修理には欠かせない高度な技術であり、伝統を受け継ぎながら時代とともに磨かれてきたものと認識している。

 道教委としては、道民の貴重な財産であり、歴史的建造物を将来にわたって引き継いでいくためには、適宜適切な保存修理が不可欠なものであることから、こうした伝統技術の継承は極めて重要であると考えている。

Q植村委員 文化財の継承の体制をさらに強化することが必要であると考える。道教委の考えを伺う。

A志田教育部長 文化財継承のための体制整備などについて。地域に所在する歴史的建造物は、地域住民の郷土愛の醸成を図る上で拠点となり得るものであり、これらを末永く活用するには、その維持、保存にしっかりと取り組むことが大変重要であると考える。

 道教委ではこれまで、こうした歴史的建造物の維持保存について、専門的知見をもつ文化財調査員による建造物の巡視を行い、その保存状態や異常の有無を把握するなど、適宜適切な維持、保全に努めてきた。

 道教委としては、今後も引き続き、道内各地に点在する歴史的建造物の保全に関する特定非営利活動法人や、歴史・文化遺産を活用して地域づくりを行うヘリテージマネジャーの資格を有する建築士、さらには、建造物を担当する道文化財保護審議会委員などの専門家と連携協力しながら、後継者育成の取組事例に関して情報提供するなど、各地域で行う維持、保存の取組の一層の支援に努めていく。

◆学校におけるコロナ対策

Q白川委員 児童生徒が感染した場合、いつから登校が許可されるようになるのか伺う。

A阿部総務課長 児童生徒等が感染した場合について。学校においては、学校保健安全法などの法令に基づき、出席停止の措置を講じており、感染症が治癒したあとに登校が可能となる。

Q白川委員 児童生徒が濃厚接触者となり、PCR検査で陰性と確認された場合、自宅待機の期間はどうなるのか伺う。

A阿部総務課長 出席停止の期間等について。衛生管理マニュアルにおいては、児童生徒等が濃厚接触者に特定された場合、検査結果が陰性であっても、感染者と最後に濃厚接種をした日の翌日から起算して2週間の出席停止となる。

Q白川委員 児童生徒が感染した場合、学級・学年閉鎖や休校などは誰がどのように決めるのか、また、どのくらいの期間、学校が休みになるのか伺う。

A阿部総務課長 臨時休業について、衛生管理マニュアルにおいては、児童生徒等や教職員の感染が確認された場合、学校設置者は、保健所が行う濃厚接触者の範囲の特定や検査に必要な日数、範囲、さらには、出席停止となる児童生徒数の状況等によって判断し、感染拡大の恐れが低いと判断されるまでの間、学校内の感染拡大の可能性が高い範囲に応じ、学級・学年単位または学校全体の臨時休業を実施する。

Q白川委員 家族に熱や鼻水などの症状がある場合、どうすればよいのか伺う。

A阿部総務課長 家族に風邪症状がある場合について。衛生管理マニュアルによる学校の行動基準においては、感染者が漸増し、重症者が徐々に増加する段階であるレベル2以上に感染がまん延している地域では、同居の家族に発熱などの風邪症状がある場合でも、保護者の理解と協力のもと、児童生徒等も自宅で休養することとしている。

Q白川委員 感染した児童生徒や学校への誹謗中傷、いじめが心配。どうすれば不安をなくすことができるのか、また、実際に被害に遭った場合はどうすればよいのか伺う。

A小玉教育長 誹謗中傷等への対応について。道教委では、各学校に対し、感染者等に対する差別や偏見は断じて許されるものではないことはもとより、これまで以上に児童生徒をきめ細かく見守るよう指導するとともに、児童生徒の心のケアのため、スクールカウンセラーの派遣や24時間対応の電話相談をはじめとする相談窓口の積極的な周知に努めている。

 また、先般、教育長メッセージを発信し、児童生徒向けには周りの大人や相談窓口に相談するよう伝えるとともに、教職員、保護者、地域の方々に向けては、差別や偏見、誹謗中傷につながる言葉や行動を知ったときには、決して同調せず、そのようなことが起きないよう、力を貸していただきたいと強く呼びかけた。

 道教委としては、感染症の終息が見通せない中、児童生徒、学校関係者、保護者、地域の方々の温かい心をつないで、この難局を乗り越えていけるよう、心のケアに力を尽くしていく。

◆特別支援教育

Q白川委員 コロナ感染が広がりをみせる中、過密化への懸念は一段と強まっている。特別支援学校は、基礎疾患のある子どもが少なくなく、普通学校以上に目配りが欠かせない。今後の策定作業に当たっては、過密化の防止をはじめ、視覚、聴覚、知的など、多様な障がいに対するきめ細かな配慮が必要と考えるが、所見を伺う。

A金田特別支援教育課長 多様な障がいへのきめ細かな配慮について。現在、障がいのある子どもやその保護者の特別支援教育に対する理解の深まりやニーズの高まりによって、特別支援学校の在籍者数は増加し、本道も含め、全国的に特別支援学校の教室が不足するなどの課題が生じている。

 こうした中、文部科学省が設置した、新しい時代の特別支援教育の在り方に関する有識者会議の報告素案において、特別支援学校に備えるべき施設等を定めた設置基準の策定について示された。

 特別支援学校は、対象となる障がいの種類や程度、在籍する子どもの年齢に大きな幅があることから、道としても、設置基準は多様な障がいに対応が可能なものとなる必要があると考えており、今後とも国の動向を注視していく。

Q白川委員 国は、基準をつくるだけではなく、設置自治体への財政支援を強化し、学校用地の取得や廃校舎の改修による活用などをあと押しする必要があると考えるが、所見を伺う。

A池野総務政策局長 特別支援学校の整備について。在籍者数の増加に伴う特別支援学校の狭あい化の解消は、安全・安心な教育活動を進める上で極めて重要な問題であると認識している。

 国では、こうした特別支援学校における教室不足の解消を図るため、廃校や余裕教室等の既存施設を利用した改修事業について、令和2年度から6年度までの5年間に限り、交付金の算定割合を3分の1から、新増築事業と同様に2分の1へ引き上げすることとしているが、狭あい化の状況はその後も続くことが見込まれるため、道教委としては、特例措置の期間延長や必要な財源の確保など、地方財政措置の充実について、国に対し、様々な機会を通じて要望していく。

Q白川委員 国は、障がいの有無にかかわらず、すべての子どもが共に学ぶインクルーシブ教育の推進を掲げている。

 一方、小・中学校などでは、専門的な知識を備えた教員が足りないなど、受け入れ体制に課題もみられる。

 子どもと保護者が就学先を決める際、気兼ねや不安が先に立つようでは、選択の自由が保障されているとは言えない。

 受入体制をしっかりと整備し、インクルーシブ教育の推進に積極的に取り組むべきと考える。所見を伺う。

A宇田特別支援教育担当局長 インクルーシブ教育の推進について。障がい者等が積極的に参加、貢献していくことができる共生社会の形成に向けて、一人ひとりの児童生徒の教育的ニーズに的確に応えられるよう、多様で柔軟な仕組みの整備が重要と認識している。

 このため、特別支援学校をはじめ、市町村教委や小・中学校、高校等における教員の指導力の向上はもとより、障がいの重度・重複化、多様化に応じた就学先の決定や、施設設備を含む適切な教育環境の整備、生徒の資質・能力に適した進学、就労の指導など、特別支援教育の一層の推進が必要であると考えている。

 今後とも、道教委としては、教職員や市町村教委に対して、児童生徒一人ひとりの教育的ニーズに応えられるよう、具体的な指導助言や研修などを通じ、インクルーシブ教育の推進に努めていく。

◆ヤングケアラー

Q白川委員 病気や障がいのある親や祖父母、幼いきょうだいの世話や介護をする、いわゆるヤングケアラーと呼ばれる子どもたちがいる。負担が大きいと、学校を休んだり、進学を諦めたりと、子どもに与える影響は大きく、その背景には貧困問題があると指摘されている。

 国は、3年3月ころを目途に調査結果をまとめるという。その調査の概要を伺う。

A伊藤生徒指導・学校安全課長 ヤングケアラーに関する調査について。国では、ヤングケアラーを、年齢や成長の度合いに見合わない重い責任や負担を負って、本来、大人が担うような家族の介護することで、自らの育ちや教育に影響を及ぼしている18歳未満の子どもと定義。平成30年度、厚生労働省が市町村の設置する要保護児童対策地域協議会を対象に実態を調査したところによると、ヤングケアラーの約3割以上が、学校を休みがちであるなどの状況が明らかになった。

 こうした状況を踏まえ、国では、ヤングケアラーの実態をより正確に把握するため、2年12月に市町村教委を対象に調査を実施する予定と承知している。

Q白川委員 国は、逆境下にある子どもたちの実態をしっかりと分析、評価し、相談しやすい環境を整備するとともに、負担軽減を図るための支援策を早急に検討すべきと考える。所見を伺う。

A赤間学校教育監 今後の対応について。ヤングケアラーの子どもは、自分自身がヤングケアラーであると認識していないことが多く、学校からの情報を契機として要保護児童対策地域協議会にケース登録される割合が高くなっているため、各学校においてヤングケアラーの実情などについて理解を深めることが必要であると考えている。

 今後、道教委においては、国が作成したヤングケアラーに関するガイドラインを活用して、市町村教委や学校での理解促進を図るとともに、子どもが自分の家庭環境などについて学校に相談しやすいよう、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーを派遣し、学校の教育相談体制の充実を図るなど、知事部局と連携し、子どもたちの負担の軽減と健やかな成長を支えていく。

(道議会 2021-05-20付)

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