日高管内3年度教育推進の重点 未来切り拓く人づくりを 高・特校長らに小原局長要請(道・道教委 2021-05-25付)
日高教育局・小原直哉局長
【浦河発】日高教育局は4月下旬、日高合同庁舎で令和3年度管内公立高校・特別支援学校長・事務長会議を開催した。小原直哉局長が「全ての子どものよさや可能性を引き出し、持続可能で豊かな地域社会の創り手を育む日高教育の創造」を主題とする管内教育推進の重点について説明。「“個別最適な学び”と“協働的な学び”の一体的な充実」「学校マネジメントの強化による“働き方改革”の推進」「新しい時代の日高教育を創り出す教職員の育成」の3つを重点に掲げた。小原局長は「未来を切り拓く人づくりに取り組んでいただきたい」と、リーダーシップを発揮するよう求めた。教育推進の重点はつぎのとおり。
【はじめに】
これまで、日高管内においては「社会に開かれた教育課程を実現し、持続可能で豊かな地域社会を支える日高教育の創造」をテーマに、管内のすべての子どもたちに、地域を愛し、夢と志をもって、未来社会を生き抜くために必要な力を確実に身に付けさせる教育を推進してきた。
校長の皆さんには、子ども一人ひとりのよさや可能性を引き出す特色ある教育活動を推進するとともに、Society5・0時代の到来も見据えた学校改善を着実に進めるなど、管内教育の充実・発展に多大な貢献をしていただいた。
前年度は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う臨時休業等によって、学校の教育活動が大きな影響を受ける中、学校ならではの学びを大切にしながら教育活動を進めるとともに、特別支援学校においては、感染防止対策を徹底し安全・安心に過ごせる居場所とすることで、障がいのある子どもにとってのセーフティネットとしての役割を果たすなど、感染症対策と学びの保障を両立してきたことは、すべての子どもたちにとって新しい学びとなった。根底には、日ごろから強い情熱と使命感をもって教育指導を進めていただいている皆さんの尽力があり、深く敬意を表する。
【教育推進の重点】
本年度の管内教育推進の重点のテーマは「全ての子どものよさや可能性を引き出し、持続可能で豊かな地域社会の創り手を育む日高教育の創造」である。
現在の社会は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大によって経済だけでなく、地域の文化、生活、人々の価値観に至るまで多方面に大きな影響を受けており、感染収束後のポストコロナも見据え、新たな世界、いわゆるニューノーマルへの移行を踏まえた新しい時代への対応が求められている。また、AI、IoT、ロボティクスなどの先端技術が高度化し、あらゆる産業や社会生活に取り入れられ、社会の在り方そのものが劇的に変わるSociety5・0時代が到来しつつあり、社会全体が答えのない問いにどう立ち向かうのかが問われている。
そのため、すべての子どもたちに目の前の事象から解決すべき課題を見いだし、主体的に考え、多様な立場の人と協働的に議論し、納得解を生み出すことなど、新学習指導要領で育成を目指す資質・能力を確実に身に付けさせることが重要となっている。
本年1月に中央教育審議会は、「令和の日本型学校教育」の構築について答申を取りまとめ、目指すべき学びの在り方を「全ての子どもたちの可能性を引き出す、個別最適な学びと、協働的な学びの実現」とすることが示された。
日高管内教育推進の重点のテーマを「全ての子どものよさや可能性を引き出し、持続可能で豊かな地域社会の創り手を育む日高教育の創造」とし、感染症や災害等を乗り越え、グローバル化や高度情報化の進展などの社会の変化に的確に対応しながら、すべての子どもたちに持続可能な社会の創り手となるために必要な資質・能力を確実に身に付けさせる日高教育を創造することを期待する。
各学校においては、前年度、新型コロナウイルス感染症の感染予防に向けた新しい生活様式を踏まえた学習環境づくりに全教職員一丸となって取り組むなど、学校の大きな力である組織力を基盤とし、校長自らが社会の変化に的確に対応する姿勢を率先して示しながら、自校の教職員と積極的にかかわり、個々の長所や強みを把握した上で、強いリーダーシップを発揮し、効果的で質の高い教育活動を持続的に行う学校づくりに向け、つぎの3点を進めていただきたい。
【重点1 「個別最適な学び」と「協働的な学び」の一体的な充実】
社会の変化が加速度を増し、複雑で予測困難な時代であるとともに、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響によって一層先行きが見えない中、子ども一人ひとりが、自分のよさや可能性を認識するとともに、あらゆる他者を価値ある存在として尊重し、多様な人々と協働しながら様々な社会的変化を乗り越え、豊かな人生を切り拓き、持続可能な社会の創り手となることができるよう、その資質・能力を育成することが求められている。
管内においては、言語能力、情報活用能力、問題発見・解決能力などの学習の基盤となる資質・能力等を土台として、現代的な諸課題に対応し、20年後・30年後の社会像を見据えて必要となる資質・能力を育成するために、総合的な探究の時間などにおいて教科等横断的な視点から教育課程を編成するなど、全教職員による組織的なカリキュラム・マネジメントが進められている。
今後は、子ども一人ひとりの状況に応じた指導方法や教材等の柔軟な対応、子ども自身が学習が最適となるように調整するなどの「個別最適な学び」と、学校ならではの子ども同士の学び合いや、多様な他者と協働して主体的に課題を解決しようとする探究的な学びなどの「協働的な学び」を一体的に充実する必要がある。
こうしたことから、各学校においては、個別最適な学びの成果を協働的な学びに生かし、さらにその成果を個別最適な学びに還元するなど、個別最適な学びと協働的な学びを一体的に充実することで、主体的・対話的で深い学びの一層の充実に向けた授業改善につなげるようお願いする。
そのため、校長の皆さんにはつぎの3点に意を用いていただきたい。
▼子どもの特性や学習状況等に応じた「個別最適な学び」の充実
すべての子どもたちに基礎的・基本的な知識・技能等を確実に習得させ、思考力・判断力・表現力等や、粘り強く学習に取り組む態度などを育成するため、子ども一人ひとりの特性や学習進度、学習到達度などに応じた指導方法、学習時間等を柔軟に提供・設定するとともに、子どもが自らの学習を調整しながら取り組む態度を育成するなどの「指導の個別化」が求められている。
併せて、興味・関心等に応じ、障がいのある子どもを含め、その子どもならではの課題を設定するなど、子ども自身が主体的に自らの学習を最適化することを教師が促す「学習の個性化」も必要である。
これらの指導の個別化と学習の個性化を教師の視点から整理した概念が「個に応じた指導」であり、この子に応じた指導を学習者の視点から整理した概念が個別最適な学びであるとされている。
管内においては、指導の個別化については、子ども一人ひとりの特性や学習進度、学習到達度などに応じた課題を設定したり、学校卒業の進路や将来像を見据えつつ、個々の学習ニーズに応じた指導を行うなど、積極的に取り組まれている。
一方で、学習の個性化については、教師からの指示がないと何をしてよいか分からず、学びを止めてしまうなど、子どもが自らの学習を調整しながら学んでいくことには課題が残されている。
こうしたことから、子ども一人ひとりの心身の発達および希望する進路に応じて指導の個別化と学習の個性化を教科等の特質に応じて効果的に組み合わせ、個別最適な学びの充実を通して、多様な能力・適性や興味・関心をもつ子どもたちを誰一人取り残さず、すべての子どもたちに必要な資質・能力を育成していただくようお願いする。
▼子ども一人ひとりの考えを広げ、深める「協働的な学び」の充実
子ども一人ひとりの多様性と向き合いながら集団としての学びに高めていくなどのこれまでの日本型学校教育の強みを生かし、学校ならではの子ども同士による学び合いや、異学年間の学びや他の学校の子どもたちとの学び合いなどの「協働的な学び」の充実が求められている。
管内においては、一方的な教え込みの授業から、単元など数コマ程度の授業のまとまりの中で、習得・活用・探究のバランスを工夫するなど、主体的・対話的で深い学びの視点からの授業改善が進められており、子どもの学習に対する目的意識や将来への自覚を高めることにつながっている。
こうしたことから、異なる考え方が組み合わさり、よりよい学びを生み出すことの大切さや、同じ空間や時間をともにすることでお互いの感性や考え方などにふれ刺激し合うことの重要性を実感することのできる協働的な学びの充実を通して、子ども一人ひとりのよさや可能性を一層引き出すようお願いする。
▼これまでの実践とICTとの最適な組み合わせの実現
多様な子どもたちを誰一人取り残すことのない個別最適化された学びを実現するため、将来的な1人1台端末の整備も見据え、教師が対面指導と遠隔・オンライン教育とをハイブリッドで使いこなすなど、これまでの実践とICTとを最適に組み合わせることで学びの質を向上させることが求められている。
特別支援学校では、ICTが学習指導という側面にとどまらず、必要または有用な情報を入手する基本的な手段を身に付け、社会によりよくアクセスしていくために必要不可欠な存在となっており、早い段階から学校において、ICTを適切に活用した学習活動の充実を図ることが求められている。
一方で、ICTはあくまでツールであり、その活用自体が目的ではなく、Society5・0時代にこそ、教師による対面指導や子ども同士の学び合い、地域社会での多様な体験活動の重要性が一層高まっていくことに留意しつつ、ICTを活用することで空間的・時間的制約を緩和するなどして協働的な学びを実現し、多様な他者と共に問題の発見や解決に挑む資質・能力を育成することも重要である。
管内においては、前年度の新型コロナウイルス感染症対策のための臨時休業期間において、ビデオ会議システムを活用した子どもとの双方向コミュニケーションによるホームルームの実施や、動画投稿サイトを活用した授業動画の配信など、緊急時にあっても子どもたちの学びを保障するICTを活用した先進的な取組がみられた。
こうしたことから、学習履歴(スタディ・ログ)をはじめとし教育データの蓄積・分析・利活用によって、子ども一人ひとりの状況に応じたきめ細かい指導および学習評価を充実するとともに、学習活動の質の向上に向け、教師による対面指導に加え、目的に応じ遠隔授業やオンデマンドの動画教材を取り入れた指導など、これまでの実践とICTの活用を効果的に組み合わせるようお願いする。
また、ICTの活用によって、知識の習得に関して今までの教育では適応できなかった一部の子どもに対して特に効果を発揮することや、特別な支援を要する子どもにとってはICTの活用が将来の社会参画を促進し、生涯にわたって生活の質を大きく向上させることにも留意いただきたい。
【重点2 学校マネジメントの強化による「働き方改革」の推進】
教職員一人ひとりがこれまでの働き方を見直し、これまでの日本型学校教育のよさを受け継ぎながらさらに発展させ、学校における働き方改革を着実に推進するためには、教職員が心身共に健康を保ち、誇りとやりがいをもって働くことができる環境の整備を図り、子どもたちに対して効果的で質の高い教育活動を持続的に行うことが求められている。
管内においては、客観的な勤務状況の把握や定時退勤日の設定、部活動にかかる活動方針の策定などが進められているが、こうした取組が教育活動の充実にどうつながるのかという意識が十分ではない学校がみられるなど、全校体制での働き方改革の推進に課題がみられる。
今後は、限られた時間の中で、日々の生活の質や教職人生を豊かにすることで、自らの人間性や創造性を高め、子どもたちに対して効果的な教育活動を行うことができる状況をつくり出すという学校における働き方改革の目的をすべての教職員で共通理解する必要がある。
さらに、各校長が自校の状況や他校、地域の実態を的確に見極めながら強いリーダーシップを様々な場面で発揮し、業務の平準化・効率化を進めるとともに、学校がこれまで以上に組織として対応していくための組織体制の在り方を見直すことが重要である。
こうしたことから、各学校においては、全教職員が参画意識を有する学校運営体制の整備を進めるとともに、学校と地域がお互いの役割を認識しつつ、共有した目標に向かって、パートナーとして相互に連携・協働を深めるなど、学校マネジメントの強化による「働き方改革」を推進するようお願いする。
そのため、校長の皆さんには、特につぎの3点について意を用いていただきたい。
▼全員参画による「働き方改革」に向けた体制整備の推進
長時間勤務を是正し、すべての教職員が子どもたちとしっかりと向き合い、本来の業務に専門性を発揮し、やりがいをもって働き続けられる環境を整えるため、校長のリーダーシップのもと、組織として教育活動に取り組む体制を整備することが求められている。
管内においては、ICTの活用やタイムカードによって、教職員の在校等時間の客観的な勤務状況を把握し、北海道における働き方改革の手引き『Road』を参考に業務の平準化・効率化を図るなど、積極的な取組を進めている学校がみられる。
一方で、取組の目的が単なる在校等時間の縮減等にとどまり、教職員一人ひとりの学校における働き方改革の意義や目的の理解が十分でないために、学校全体の取組になっていない学校もみられる。
こうしたことから、学校評価の重点的な評価項目として業務改善や教職員の働き方に関する項目を明確に位置付けるとともに、働き方改革手引『Road』を活用した校内研修を積極的に実施し、教職員間で業務の在り方、見直しについて話し合う機会を設け、自分たちの働き方を自分たち自身で考える教務自律性を高め、対話による全員参画の体制整備を進めるようお願いする。
▼連携と分担による学校マネジメントの実現
学校が様々な課題に対処し、学校における働き方改革を推進するには、教師とは異なる知見をもつ外部人材やスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー等の専門スタッフなどの多様な人材を活用するとともに、学級担任、教科担任、養護教諭、実習助手、寄宿舎指導員等の役割を適切に分担するなどして、学校内外で連携と分担による学校マネジメントを実現することが求められている。
管内においては、教育局のキャリアプランニングスーパーバイザーとともに、ハローワークや地域の商工会議所などと連携して進路指導の充実を図ったり、教科担任と実習助手がそれぞれの役割を発揮し、効率的に教材準備を進めたりするなど、関係機関などとの連携や校務の分担の見直しを積極的に進めている学校がある。
こうしたことから、ハローワークなどの外部人材・関係機関との連携・協働を推進するとともに、教職員が担う業務の適正化などの学校における働き方改革を進めるためのコアチームを立ち上げるなど、連携と分担による学校マネジメントを実現するようお願いする。
▼地域とともにある学校への転換
学校における働き方改革を進めるには、学校の有するリソースだけで対処するには限界があるため、学校と地域の連携・協働の取組をさらに広げ、地域でどのような子どもを育てるのかといった目標を共有し、地域と一体となって子どもたちを育む地域とともにある学校へと転換することが求められている。
また、地域創生という観点からも、学校と地域がお互いの役割を認識しつつ、共有した目標に向かって、パートナーとして相互に連携・協働していくことを通じて、社会総がかりで新しい時代に求められる教育の実現を図っていくことが求められている。
管内においては、地域と学校が抱える課題を共有し、互いに連携して授業への外部講師の招へいやボランティア活動への協力など、学校と地域の連携・協働を推進することで成果を上げている地域がある。
こうしたことから、コミュニティ・スクールの導入を見据えながら学校の課題の一つとして、保護者や地域住民などに自校の教職員の勤務の実態等を伝えるなどし、働き方改革への理解を求めるとともに、これらの方々の学校運営への参加・参画を得ながら学校運営を行う体制の構築を図り、地域全体で子どもたちの成長を支えていく環境を整えるなど、学校における働き方改革を地域とともに進めるようお願いする。
【重点3 新しい時代の日高教育を創り出す教職員の育成】
社会構造の変化や感染症・災害等をも乗り越え、子どもたちに新学習指導要領で育成を目指す資質・能力を確実に身に付けさせるために、教育活動の直接の担い手である教員には、不断に専門的な知識や指導技術等を身に付けていくことが求められている。
また、特別支援学校では、障がいの状態や特性および心身の発達の段階等を十分に把握し、これを各教科等や自立活動の指導などに反映することができる幅広い知識・技能の習得や、学校内外の専門家などとも連携しながら専門的な知見を活用して指導に当たる能力も求められている。
管内においては、国や道の指定事業の成果を自らの指導に取り入れたり、校外での研修等で得た情報を教職員間で共有したりするなど、多くの教職員が自らの資質・能力の向上に積極的に取り組んでいる。
今後は、教職員一人ひとりが日ごろから自律的に学ぶ姿勢をもち、時代の変化や自らのキャリアステージに応じて求められる資質・能力を生涯にわたって高めていくことのできる力や、主体的・対話的で深い学びの視点からの授業改善など、新たな課題に対応できる力量・多様な専門性をもつ人材と効果的に連携・分担し、組織的・協働的に課題解決に取り組む力などを身に付けることが必要である。
こうしたことから、各学校においては、教職員一人ひとりのキャリアステージに応じた研修機会等を確保するとともに、それぞれの教職員がもつ実践知や暗黙知を可視化・定式化し、学校間や地域間のネットワークの中で共有するなど、組織的・計画的な教職員の育成に取り組むようお願いする。
そのため、校長の皆さんには、特につぎの3点について意を用いていただきたい。
▼キャリアステージに応じた資質・能力の育成
グローバル化や高度情報化等の加速度的な進展などの社会の変化や、教職員の大量退職、大量採用などの学校を取り巻く環境の大きな変化に対応するため、それぞれのキャリアステージに応じて求められる資質・能力を着実に身に付けることが必要である。
管内においては、新型コロナウイルス感染症の感染拡大によって、直接対面して研修を行う機会が減少する中、ウェブ会議システムを活用した研修に積極的に参加したり、教科に関する専門的知識や指導技術の向上に向け、管内の教育研究団体に所属して研修を深めたりするなど、多忙な日々の中でも自己研鑚に取り組み、学び続ける教職員がいる。
一方、近年の教職員の大量退職、大量採用の影響によって、若年層の教職員が増加し、経験豊富な中堅・ベテランから経験の少ない若手への知識・技能の伝承に課題があることが指摘されており、特に、学校組織の中核を担うミドルリーダーの育成は急務である。
特別支援学校では、経験豊富な教職員の人事異動や退職によって、学校としての専門性が蓄積されにくく、個々の教職員の専門性の向上だけにとどまらず、学校全体として高い専門性を担保・共有していくための仕組みづくりの必要性も指摘されている。
こうしたことから、コロナ禍においてその利活用が広がり、オンデマンドや遠隔などの運用の工夫が一層進んだ研修等を、それぞれの課題を踏まえて、より計画的に活用するとともに、個々の教職員に自らのキャリアステージに応じた役割を自覚させ、来校者への教育課程や自校の特色ある取組についての説明を経験させるなど、個々の教職員に応じた活躍する場面や機会を設定し、教職員一人ひとりがキャリアステージに応じて求められる資質・能力を高め続けるようお願いする。
▼新たな課題に対応する力の向上
新学習指導要領の全面実施、GIGAスクール構想、学校における働き方改革などの新しい時代の教育に対応するため、教員には各教科等の指導に関する専門知識をもつ「教えの専門家」としての資質・能力を備えるとともに、主体的・対話的で深い学びの視点から学習・指導方法を改善していくために必要な力、学習評価の改善に必要な力などをもつ「学びの専門家」としての資質・能力も備えることが求められている。
管内においては、子どもの多様な学習ニーズに対応するためICTを活用した遠隔授業を継続的に実施したり、教科横断的な視点で各科目の指導内容のつながりがみえるよう、工夫した単元配列表を作成したりするなど、新しい課題に積極的に取り組む教職員や学校の姿がある。
一方、管内の各学校は小・中規模校が多く、限られた学校の教育資源で進路希望に応じた科目開設や習熟度別指導の実施など、すべての障がいのある子どもを含めた多様なニーズに対応しつつ、個々の教職員の専門的な知識・技能を高めることが困難な状況もみられる。
こうしたことから、ICTを活用して複数の学校が教育課程の共通化・相互互換を図るなどの取組を通して、個々の教職員が自らの教科・科目等の専門的な知識・技能を向上させるなど、新たな課題に対応する力量を高めていくようお願いする。
また、特別支援学校では、ICTの活用については、子ども一人ひとりの障がいの程度等に応じて効果的な活用方法が異なったり、子どもによっては一人で機器を活用することが難しかったりすることから、指導する教職員のICT活用スキルを一層高めていくようお願いする。
▼多様な人材等と連携・分担して課題解決に取り組む力の向上
子どもたちの資質・能力は学校だけで育まれるものではないことから、一つの学校ですべてを完結させるという自前主義から脱却し、地域社会や高等教育機関、企業等と連携・協働して、関係機関にも開かれた教育活動を行い、社会とつながる多様な学びを実現することが求められている。
また、特別支援学校では、切れ目のない支援の充実に向けて、特別支援学校のセンター的機能などによる幼・小・中・高校等との連携、保健・医療・福祉・雇用との連携など、学校の枠を超えて連携する力も求められている。
管内においては、地元企業等と連携し、子どもたちの学習ニーズに応じて総合的な探究の時間の学習コースを複数設定したり、将来の地域医療を支える人材の育成に向け、医療機関や医療系大学と連携した講座やキャンプ・セミナーに参加させるなどして、多様な人材や関係機関と連携した課題解決を進めている学校がある。
こうしたことから、ICT支援員や大学教授などの校外の専門家や有識者と連携して課題解決を進めるなど、多様な専門性をもつ人材等と連携・分担して教職員一人ひとりの課題解決に取り組む力を高めるようお願いする。
特別支援学校では、子どもたちの社会的・職業的自立に向けて必要となる資質・能力の育成や、学校卒業後の生活に向けた福祉制度のさらなる理解に向けた労働・福祉機関等との連携などを通して、関係機関などとのネットワークの中で課題に対応する力を高めるようお願いする。
【終わりに】
新型コロナウイルス感染症の感染拡大によって、期せずして、我々はそれまでの行動基準ではなく、国や道が示す新しい行動基準で生活することを求められている。
その行動基準も、日々蓄積される知見によってすぐに陳腐化し、さらに新しい行動基準が示されるということが続いている。
こうした急激に変化する社会の中で生き抜かなければならない時代だからこそ、教育に携わる私たちは時代や社会、環境の変化を的確に把握し、その時々の状況に応じて、必要となる想像力を最大限に発揮し、豊かな社会の創り手を育むための適切な学びを提供していかなければならない。
これまで日本の教育は「みんなで同じことを、同じようにできる」ことを求め、画一的・同調主義的な部分があったと指摘されている。
また、一方では、特別支援教育の完全実施以降、多様性が受け入れられ、さらに本年度からは個別最適な学びへと発展していくことを目指している。
本年度から道教委においては、高校を中心として地学協働活動推進事業にも取り組み始めたところであり、地域と学校の連携共同体制を整備し、未来を切り拓く人づくりも新たなテーマとして取り組んでいただきたい。
校長の皆さんには、今後も様々な改革を地域と一体となって進めるなどの強いリーダーシップをもって、それぞれの学校を令和の時代にふさわしい新しい学校へと導いていただきたい。
変動の時代に正解は一つとは限らない。
校長の皆さん一人ひとりが思い描く未来の学校の姿に、自信と確信をもって、新しい日高教育を創造していただきたいと考えている。皆さんの理解と協力をお願いする。
(道・道教委 2021-05-25付)
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