札幌市社会教育委員会議 地域課題に対応する社会教育の在り方 第4回 ボランティア学習推進を リーダー育成やICT活用も(札幌市 2021-06-30付)
◆課題に対峙する 明日の地域のため
前章では、課題解決に必要な視点と方向性を示した。
ここでは、その方向性から、今後の具体的な取組について提案する。
▼地域におけるリーダーの発掘・養成
地域において、災害等の解決が容易でない課題に取り組むためには、多様な人材の連携・協働が必要。地域には、自分が住むまちのことを熟知し、様々な分野で活躍している人材がすでに存在している。課題を解決するためには、それらの地域に根差したリーダーを発掘し、連携・協働して取組を進めることが大切。また、地域をまとめ、主体的に活動できるリーダーを増やしていくことも重要。
▽リーダーの発掘
年代にとらわれず、様々な能力のある多様な人材の把握に努め、リーダーとなり得る人材を発掘するとともに、それらの人材の知識や経験が地域の財産として共有されるよう、地域活動に参加する契機となる場を提供することが必要。また、こうした人材を発掘するためには、地域で活躍している人材の様子が住民に見えるように、町内会やNPO、地元企業等での情報交換や情報交流の促進が必要。
▽リーダーの養成
生涯学習センターが中心となって、各区の地区センターやまちづくりセンター等との連携を図り、リーダー養成のための研修を定期的に開催することが必要。また、社会教育士の称号取得を奨励し、地域の中で社会教育の専門的な知識・技術を有する人材を増やしていくことも期待している。
▽多様なリーダーのネットワークの構築
様々な活動分野のリーダーが相互に交流することによって、多様な視点から地域を考えることができる。地域で活躍するリーダー等の多様な人材が交流することのできる機会に期待している。
▼ICT活用の推進
インターネットの進展に伴い、パソコンやスマートフォンなどが身近な存在になる中、災害等の緊急時においても重要なツールとなっている。これからの社会においては、スマートフォンなどのICTツールを扱うスキルを獲得することが重要になる。
また、ICTを活用することで、地縁に限らない、新たなつながりを構築することもできる。様々なつながりの中においては、多様な意見や暮らしを知ることで自分たちの住んでいる地域を見直すきっかけとなり、自分たちの暮らしを豊かにする学びを進めていくことが大切。
▽ICTにかかる学習機会の充実
ICTの活用能力を身に付ける機会が少なかった住民に対し、生涯学習センター等が中心となり、身近な施設を活用して学習できる環境を提供することを求める。
また、ICTの利用促進は、高齢化する町内会活動の業務の軽減にもつながる。町内会におけるICTの推進をサポートするため、生涯学習センターにヘルプデスクや相談窓口機能をもたせることが必要。
さらに、ICTの推進を通して、オンラインによる学習機会の提供を充実させることによって、これまで地域活動に参加する機会が少なかった若い世代や要配慮者等に対して、学習参加を促進することが期待できる。
▽ICTを活用した新たなネットワークの構築
ICTを活用し、地域を超えたネットワークを構築することで、様々な活動を行っている多様な人材や団体(NPOや民間企業等)とつながることができる。こうしたネットワークは、新たな情報の入手やパートナーとしての協働活動など、地域課題を解決するための大きな力となることが期待できる。
▼情報の格差や情報による世代間分断の解消
ICTの有効性については、とりわけ災害時において数多くの報告がある。北海道胆振東部地震においても、情報伝達において有効に機能した。
一方では、情報の価値が高まる社会において、正しい情報を入手できる人とできない人との格差や、さらには情報によって世代間の分断が広がっていることも懸念される。こうした情報格差の解消は、世代間の距離を縮め、住民の相互理解を促進し、ひいては災害時の住民の命を守ることにもつながっていく。
▽情報格差を踏まえたネットワークづくり
ICT活用の推進と並行して、一方では高齢者や障がい者等の情報弱者となりえる層を対象に、対面を主としたアナログ的な情報伝達手段の強化を図るなど、孤立を生み出さない地域づくりが必要。
▽ICTに関する学習を通した世代を超えた相互理解
SNS等のICTに関する知識やスキルは、世代間で差があることも否めない。特に、子どもたちの中には、大人を超えるスキルを有していることも少なくない。従前の大人から子どもへの指導から、子どもたちの発信力や行動力を生かし、子どもが主体的に大人へ発信できる新たな学習の形として、ICTの学習機会は格好のテーマといえる。
そうしたことから、例えば、スマートフォンの使い方等、子どもたちの得意な分野について、子どもから大人が学ぶような、子どもの力が主体となる新しい形によるサタデースクール事業の実施を求める。
このような子どもを主役とした地域活動の推進は、世代間の距離を縮め、相互理解の促進にもつながる。
▼多様なボランティアの在り方の推進
昨今の災害等において、ボランティアによる支援活動が大きく取り上げられ、あらためてボランティアの意義や必要性が認識されている。ボランティア活動は、個人の自由意思に基づき行われるものであり、ボランティア活動を推進することは、住民が当事者意識をもって地域の課題に主体的にかかわり、取り組む意識を育むきっかけとなる。
また、多様化する現代社会において、ボランティアの在り方を広範にとらえることによって、社会の要望を取り入れた活動へとさらなる発展が期待できる。
▽ボランティアにかかる学習機会の提供
ボランティア活動は、誰もが主体的に取り組むことのできる活動。しかし、活動のためには、ボランティアについて学ぶボランティア学習が必要。ボランティア学習は、地域の課題を自分事としてとらえる意識の醸成や、地域活動への機運を高めることが可能と考える。
一人でも多くの住民が、地域課題を自分事としてとらえることができるように生涯学習センター等が中心となり、地域や民間が連携したボランティア学習の推進を求める。
また、生涯学習センターには、学習成果の活用としてのボランティアの支援や研修の充実にも期待する。
▽多様なボランティア活動の推進
情報通信技術が著しく進展する現代社会において、匿名性と可視性のバランスを十分に検討し、誰もが気軽に参加できるボランティア活動の仕組みづくりが必要。また、仕事や家事等で忙しく時間的な制約のある住民も、積極的にボランティア活動へ参加できるよう、参加者の生活スタイルに応じた多様なボランティア活動の提案と取組の推進を期待する。
(札幌市 2021-06-30付)
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