札幌市教育長 就任インタビュー 課題探究学習 一層充実 1人1台端末などICT活用し(札幌市 2021-07-09付)
札幌市教委・檜田英樹教育長
札幌市教委は、新型コロナウイルス感染症の影響による学びの保障への対応や国のGIGAスクール構想における1人1台端末の取組など、児童生徒一人ひとりの健やかな成長を願って各教育施策を展開している。本紙では、5月25日付で就任した檜田英樹教育長にコロナ禍における教育課題や今後の展望などを聞いた。檜田教育長は、1人1台端末などICTを日常的に活用することで、児童生徒が自ら疑問や課題をもち、主体的に解決する課題探究的な学習を一層充実させる考えを示した。
―教育長就任に当たっての抱負
現在、少子化に伴う人口減少や就業構造の急激な変化など大きな社会の転換期を迎える中、昨年からの新型コロナウイルス感染症の影響によって、先行きが不透明な難しい時代にある。
このような時代だからこそこれまで以上に札幌の子どもたちがしなやかに、たくましく生きていけるよう、より良い教育を常に考えながら、札幌の教育が目指す人間像「自立した札幌人」の実現に向け、一つ一つの教育施策にしっかりと取り組んでいく。
また、様々な困りを抱える子どもたちに対して、相談や支援体制の充実に努め、どの子も「自分が大切にされていること」を感じ、安心して学校生活等を送ることができるよう取り組んでいく。
一方、複雑化・多様化している学校が抱える今日的課題は、教職員のみで解決することは難しく、地域や保護者、関係機関とより一層連携しながら、多くの方々の力で学校を見守り、支えていただく体制を構築する必要がある。今後も、教職員が情熱や深い愛情をもって子どもたちに向き合い、自信と誇りを胸に札幌市の教育を実践していけるよう、また、本市の教育行政のさらなる発展のため、自分自身の学校現場での経験を生かしつつ、全力を尽くしていきたい。
―市の教育が目指す人間像である「自立した札幌人」について、各学校(園)に呼びかけたいことは
市教育振興基本計画において掲げた目指す人間像「自立した札幌人」を実現するため、「自ら学び、共に生きる力を培う学びの推進」「多様な学びを支える環境の充実」「市民ぐるみで支え合う仕組みづくり」の3つの基本的方向性に沿って教育施策を展開していく。
社会全体が不安に包まれている中、教育を取り巻く環境は目まぐるしく変化しているが、子どもたちが未来に希望を抱けるよう、各園・学校と教育委員会が一丸となって、子どもたちの健やかな成長を支えていく必要がある。
各園・学校においては、この目標をしっかり理解した上で、情熱や深い愛情をもって子どもたちに向き合っていただきたい。
―新学習指導要領に関する考え
▼英語教育
主体的に外国語を用いてコミュニケーションを図る資質・能力の育成を目指すとともに、「英語教育改善プラン」を策定して、外国語教育の充実を推進している。
具体的には、校種間の学びを円滑に接続するため、札幌モデルのCAN―DO形式による学習到達目標「札幌CAN―DOスタンダード」を作成し、それをもとに各学校が学習到達目標を設定して、子どもの到達状況を把握できるようにしている。
本年度は、言語活動やパフォーマンステスト等による評価や1人1台端末の活用等にかかる研究拠点校の実践成果を通して、各学校の実践に資するよう取り組んでいく。
併せて、外部専門機関による全校種教員対象の授業力パワーアップオンライン研修を実施し、児童生徒が自分の考えや気持ちなどを生き生きと英語で伝え合う言語活動の一層の充実を図っていきたい。
▼道徳教育
道徳教育は、自立した人間として他者とよりよく生きるための基盤となる道徳性を養うことをねらいとしており、「特別の教科 道徳」を要として学校の教育活動全体を通じて行っている。
道徳科の実施に当たっては「考え、議論する道徳」の実現を目指すとともに、学習の状況および道徳性にかかる成長の様子を見取り、そのよさを子どもに伝え一人ひとりの成長を促すことも大切にすることで、札幌市の重点である「豊かな心」の育成を図っていきたい。
▼特別支援教育
「共生社会」の形成に向け、障がいのある子どもとない子どもが可能な限り共に学ぶことができるよう取組を推進するとともに、障がいの状態や個別の教育的ニーズ等に応じた柔軟かつ専門的な教育的支援を受けることができるよう、関係機関との連携をより一層重視し、個別の教育支援計画等を活用しながら切れ目ない支援体制の充実を図る。
具体的には、通級による指導の整備・拡充によって遠距離通級の解消を図るほか、看護師の配置等による医療的ケア児の支援の充実、ICTの活用による障がいのある子どもの困難さに応じた支援など指導体制や指導方法の工夫改善をさらに図っていきたい。
また、豊明高等支援学校とみなみの杜高等支援学校においては、卒業後の社会参加を促進するため、就労支援コーディネーターを配置するなどしながら、就労支援の取組をさらに進めている。
―市において教育課題と感じていること
▼GIGAスクール構想について
市では、1人1台端末を学習ツールとして活用することによって、課題探究的な学習を一層充実させるとともに、情報活用能力を育むことや、興味・関心、習熟度、理解度に応じた効果的・効率的な個別最適な学びを実現することを目指している。
また、コロナ禍での学びだけでなく、やむを得ず登校できない児童生徒に対する学びを保障するため、オンライン、オフラインを柔軟に組み合わせて支援していきたいと考えている。
▼公立夜間中学について
市が設置する公立夜間中学は、教育活動の充実と独立性を重視し、政令市初の単独校として設置することとした。現在は、令和4年4月の開校に向けて、生徒が自分たちの学校に誇りをもち、安心して学ぶことができる学校となるよう準備を進めている。過日、校名が市立星友館中学校と決まった。
今後は、詳しいことを伝えるため、説明会を8月に予定している。
▼働き方改革について
教員の働き方改革は、委員会としても最も力を入れて取り組まなくてはならない喫緊の課題の一つである。新型コロナウイルス感染症対策のため教員の負担が増している一方で、行事や業務等の見直しによって、教員の働き方を見直すきっかけにもなったと考えており、新しい生活様式に対応した学校運営の確立とともに、働き方改革を着実に進めていく。
前年度は働き方改革に関する指針を策定するとともに、教育委員会内にワーキンググループを設置し長時間労働解消に向けた取組について検討を行った。
本年度はワーキンググループでの検討等を踏まえ、スピード感をもって取組を推進するとともに、学校給食費の公会計化などについても検討を進めていきたい。
▼コロナ禍における教育について
どのような状況下にあっても、学びを止めないことが重要。感染が拡大しないために保健所と連携した感染症対策を迅速に行うことで学校での感染拡大は押さえられていると認識している。各学校では、場所を分けたり、時差を付けたりして、活動を少人数にするなど感染症対策を講じつつ、子どもの豊かな成長を支えていく観点で学習する内容や方法等を工夫し、教育活動を進めている。
今後は、1人1台端末などICTを日常的に活用することで、ディスタンスを確保しつつも協働的な学びを充実させ、子どもが自ら疑問や課題をもち、主体的に解決する課題探究的な学習を一層充実していくことで、一人ひとりの学ぶ力の育成に努めたい。
―今後、取り組みたいことや子どもたちに期待すること、伝えたいこと
現在、コロナ禍の中、様々な制約の中での生活を強いられ、学校生活も通常とは違ったものとなり、子どもたちには本当にかわいそうな思いをさせていると思っている。しかし、これまでどおりの楽しい日常が戻る日が必ずやってくる。そのときまで、我慢する心などをしっかりと育てていってほしい。そうした逆境のときにも頑張った経験は、必ずこれから生きていく上でプラスに働くと確信している。
あとは、どんなときにもチャレンジする心や失敗を恐れない心をもち続けてほしい。そのために、子どもを取り巻く大人が常に愛情をもって子どもに接し、ときに厳しく、でも温かい気持ちをしっかりともった中で子どもを育てていってほしい。子どもは「未来を築く私たちの宝」、どんな子もその可能性を信じ、伸ばしてほしい。
―モットーや仕事をする上で大切にしていること
「和と輪と笑い」を大切にした、人とのかかわり、学級づくり、学年づくり、学校づくり、地域づくりを進めていきたい。互いが日ごろのコミュニケーションを育み、信頼関係を築いた中で、チームワークとネットワークを構築できれば、多少の困難もみんなで乗り越えていけると思う。教育委員会も学校も多忙で、どうしても余裕がなくなりそうになることがあるが、だからこそ、いつでも互いの絆を大切にし、和やかで笑いのある関係づくりをしっかりと進めていきたい。みんなが健康で、お互いにいつでも気持ちよく仕事ができる雰囲気づくりを大切にしていきたい。
檜田 英樹 氏
ひのきだ・ひでき
昭和59年3月道教育大学旭川分校卒。平成24年教委学校教育部教育推進課指導担当課長、26年屯田北中校長、27年教委学校教育部教職員担当部長、30年同学校教育部長、31年同教育次長を歴任した。
昭和36年10月10日生まれ、59歳。札幌市出身。
(札幌市 2021-07-09付)
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