特設授業動画 10日から配信 北数教 第76回研究釧路大会(関係団体 2021-11-09付)
盛山教諭が発問などの実践例を紹介
【釧路発】北海道算数数学教育会(=北数教、相馬一彦会長)は10月28日から3日間、第76回北海道算数数学教育会研究大会・釧路大会を開催した。大会初のオンライン開催で、小学校部会(29・30日)と高校部会(28・29日)をそれぞれ実施。道内外の教職員、大学生など約300人が部会ごとの講習会、分科会に参加し、未来社会を切り拓く力を育むための算数数学の在り方を探求した。
前年度の札幌大会は、新型コロナウイルス感染拡大に伴い中止となったが、本年度はオンラインで開催。釧路での大会開催は平成13年以来20年振り6回目。研究主題「未来社会を切り拓く力を育む算数・数学教育の探究~主体的・対話的で深い学びの実践を通して」。
高校部会は、28日に講習会、29日に領域別分科会を実施。講習会では、道教育大学釧路校の早勢裕明教授が「〝主体的・対話的で深い学び〟に向けた日常の授業改善」と題して講演した。あす10日から14日に特設授業動画をYouTubeで配信する。
小学校部会は、29日に講習会を開催し、筑波大学附属小学校の盛山隆雄教諭が「主体的・対話的に学び、数学的な見方・考え方を高める問題解決学習の創造」と題して講話。30日は、領域別分科会、午後から特設授業分科会を開催した。
なお、中学校部会は今月19・20日に開催する。
釧路大会小学校部会の種市文彦部会長(釧路町立富原小学校長)は、初の試みとなったオンラインでの開催に向け、準備・運営等に協力した多くの関係者に謝意を示した上で、「本研究大会での成果が、日々の授業改善・授業力向上に生かされ、算数が楽しいと感じる子どもたちの声が教室に響くことを願っている」と算数の楽しさが感じられる授業展開に期待を寄せた。
各部会の特設授業動画における授業者はつぎのとおり。
▼小学校部会
▽山崎夏実教諭(釧路市芦野)=2年「さんかくやしかくの形をしらべよう」
▽尾形加奈子教諭(釧路市芦野)=3年「数の表し方やしくみをしらべよう」
▽藤田美奈子教諭(釧路市芦野)=5年A「比べ方を考えよう(1)」
▽澤田康介教諭(釧路市清明)=5年B①「比べ方を考えよう(1)」
▽遠藤誠教諭(釧路市昭和)=5年B②「比べ方を考えよう(1)」
▽杉山智彰教諭(白糠町庶路学園)=6年「データの特ちょうを調べて判断しよう」
▼高校部会
▽秋保奨教諭(釧路湖陵)=1年数学=「場合の数と確率」
▽牧井太宏教諭(釧路湖陵)=2年理科数学=「積分」
▽小林高洋教諭(釧路北陽)=2年数学=「図形と方程式」
▽今野嵩弘教諭(釧路江南)=3年数学=「積分」
◆問い返しで視点明確に 小学校部会講習会 盛山教諭講話
29日の小学校部会の講習会では、筑波大学附属小の盛山隆雄教諭が講話した。「主体的・対話的に学び、数学的な見方・考え方を高める問題解決学習の創造」と題して、自ら考え課題を解決していくための教師のかかわりなどを説いた。
盛山教諭は、①数学的な見方・考え方を引き出す発問~子どもの表現を培う問い返し発問②主体的な子どもの姿を引き出す問題解決の授業の具体~問題にかかわらせるしかけが子どもを主体的にする―の2点を中心に説明。生きて働くための知識・技能の習得や、未知の状況にも対応できる思考力・判断力・表現力の育成は、学びに向かう力となり、人間性のかん養につながることを強調した。
発問は学習の本質に根差すものであるとし、その実践例を紹介。1年生の「赤い折り紙は7枚、黄色い折り紙は赤い折り紙より5枚多い。黄色い折り紙は何枚?」の問題では「赤は7枚、黄色は5枚だから…」と答える子が多い中、「赤色と黄色ではどっちが多い?」という大小関係の問い返しの発問が考える視点を明確にし、数学的な見方につながるとした。
また、割合の問題では「250円のペンを30%引きで買うといくら?」を基本とした、子どもとの問題づくりに挑戦した事例を紹介。「250円のペンを30■で買ったらいくら?」を示して、マスキングされた■の中に入る記号・言葉(30円高・30%増・30%引など)を考えさせたことを説明した。解きたくなる問題へと変化させることで、意欲的に問題解決に取り組む姿がみられたと解説した。
最後に、問題解決そのものの充実こそが重要であるとした上で、数学的な見方・考え方を働かせて解決する面白さや楽しさを味わわせ、数学のよさに気づかせることや、結果や解決の過程を振り返り、問題を見いだしたりする場面が自然に出てくることが、問題解決の本来の姿であることを強調した。
◆思い引き出す問題提示を 小学校分科会 5部会で協議
30日は、小学校部会の領域別分科会、特設授業分科会を開いた。うち、特設授業分科会は、2・3・5・6年生の5部会(5年生は2部会)に分かれて協議。各部会の参加者は事前にインターネットで限定公開した授業動画を視聴しており、当日は授業者・助言者などを交えて、オンライン形式で研究協議を行った。
協議では、①問いをもち、既習を活用しながら、主体的に学び進めるようにする②教室の仲間と対話し、数学的な見方・考え方を創造できるようにする―を中心に意見交換した。
このうち、特設授業部会=の尾形加奈子教諭(釧路市立芦野小学校)が指導した3年「数の表し方やしくみを調べよう」では、問題解決に向けた数学的な考え方をどのように身につけるかなどについて意見が交わされた。
公開した授業は、12時間扱いの8時間目。本時の目標を「小数の表し方と仕組みに着目し、減法計算の仕方について、0・1をもとにして考えたり説明したりすることができる」と設定した。
「1・6㍑のジュースのうち、1㍑飲みました。残りは何㍑ですか?」という本時の問題の式を「1・6―1=1・5」と提示。誤答であることを確認した上で、「まちがいのわけを説明してみよう」という課題を確認した。
位ごとの数の違いから、整数と小数に分けて考えることや、1㍑マスの図から0・1㍑をもとにする考え方などを「なぜ?」「どうして?」という問い返しの発問を交えながら、課題解決に迫った。
位をそろえて計算することや、0・1㍑をもとにした「16―10=6」の式から、答えが0・6㍑になることを確認した。
研究協議では「誤答からの問題提示が子どもの必要感にどれくらい迫ったか」という意見をきっかけに、疑問を喚起し、考えたい・やりたいという思いを引き出す問題提示の大切さをあらためて確認した。また、参加者からは「子ども同士の関係がとてもよく、どんな考えや間違いでも受け入れる学級の風土を感じた」という声が多く上がった。
助言した釧路市立湖畔小学校の秦直人校長は、授業者の問い返しが子どもの考えを刺激し、思考を深めさせたとし、「一人ひとりが見通しをもつことで、ほかの意見に耳を傾け、自分の考えとすり合わせる姿が見えていた」と評価。今後も、考えることが楽しくなる授業を展開していくよう期待を寄せた。
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(関係団体 2021-11-09付)
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