子の力つく授業へ試行錯誤 学習指導要領 観点別学習評価
(関係団体 2021-12-15付)

 「評価のための授業ではない」「日々の見取りを毎日取り組むと膨大な量になってしまい、評価に追われてしまう」―。都市部のある中学校の放課後に行われた校内研修会。教諭らは次年度の教育課程において、評定で全教科2期制の継続を申し合わせた上で、評価・評定に関する意見を交わした。

 研修会では「定期試験は4回も実施する必要があるのか」「学期に1、2回程度、パフォーマンス評価を取り入れてはどうか」など、日々の指導や評価で抱いている悩みや疑問をぶつけ合った。

◆学習態度の評価各校で試行錯誤

 新学習指導要領では、観点別学習評価の観点が整理され、「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の3点に改められた。観点が整理されたことで、「学習指導要領のねらいが分かりやすく整理された」という声が上がる一方で、「主体的に学習に取り組む態度の評価をどうするか」という課題が浮かぶ。

主体的に学習に取り組む態度では、①自らの学習を調整しようとする②粘り強い取組を行おうとする―の2つの側面から評価する。道中学校長会がまとめた調査研究報告書によると、主体的に学習に取り組む態度における評価の工夫については、「ノートやレポート等による記述」や「自己評価・相互評価」を挙げる校長がそれぞれ7割前後となっている。

 ある中学校では、主体的に学習に取り組む態度を、ノートの記述や工夫、ワークシートから見取っているという。毎回の記述の内容が高まっているか、自らの力を把握し改善につなげているか、文章表記の工夫などを到達度として数値化。その上で、3観点の比率を1:1:1に設定し、「評価の重みが偏ることなく」(管理職)評定に結びつけている。

◆3観点密接な関係

別の中学校の管理職は「主体的に学習に取り組む態度の評価は、達成率による数値化になじみにくいのでは」と話す。「3観点すべてが密接な関係にある」という考え方が基本にあるからだ。

 この中学校では、主体的に学習に取り組む態度の観点別評価に当たって、「教科にもよるが、“知識・技能”の2割、“思考・判断・表現”の2割を、主体的に学習に臨む態度の評価に結びつけている」と話す。実技教科では、「“知識・技能”と、“思考・判断・表現”の点数のみで判断している教科もある」と明かす。そのため、3観点の比率は1:1:1を基本としているが、実情は教科の性質に合わせて大きく異なっていると言える。

◆定期テスト在り方見直す動きも

 定期テストの在り方を見直す動きも表れ始めている。この中学校では、中間や期末の定期テストを見直し、学年単位、教科単位で一斉テストを実施する方針に変えた。実技教科ではペーパーテストを課さないものもあったが、5教科の中でも定期テストを廃し、単元テストやワークシート、パフォーマンス評価、探究活動や振り返りなどで評価する方式に改めたものもあるという。

 一方で、高校受験が迫った3年生の保護者からは、定期テストの方式見直しを不安視する声が上がったという。管理職は、一斉テストや単元テスト、民間の学力テストの活用などで学力の定着を担保した上で、「指導計画を吟味して評定に結びつけることで、教員の働き方改革にもつながれば」と期待する。

◆よりよい授業へ議論深まり期待

 長引くコロナ禍が終息をみせぬまま迎えた本年度、中学校における新学習指導要領が全面実施を迎え、学校現場では評価・評定の在り方に関する試行錯誤が続く。道教育評価研究会の小松田靖会長(札幌市立北陽中学校長)は「この2年、コロナ禍によって他校との情報交換の機会が少な過ぎた」と振り返る。今後、各地区や教科単位での議論の深まりを期待しつつ、「3観点のねらいを把握し、児童生徒にとって最も力がつく授業の在り方を考えていくことが大切」と訴える。

(関係団体 2021-12-15付)

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