国立感染症研究所 札幌市立小・中新型コロナ流行状況解析 下 関係機関連携し予防対策を 感染可能期間中の登校等控えて
(札幌市 2022-01-17付)

 新型コロナウイルス(SARS―CoV―2)感染者が2例以上発生した割合は、感染可能期間の登校・通勤日数を、1日、2日、3日、4日以上に分けて解析すると、16%、23%、27%、36%と徐々に高くなった。最終登校日(最終接触日)から2例目以降の発症または検体採取までの期間は、133例(全体の1・1%)で確認でき、平均4・6日(標準偏差2・5日)となった。また、133例のうち、検査までに時間を要し、結果として最終登校日から学校への調査・接触者の検査までに長期間(7日以上)を要した事例を除くと、平均3・9日(標準偏差1・5日)だった。

 解析では、感染拡大傾向に関しては、小学校では株による差を認めず、中学校ではデルタ株の期間のほうが感染拡大しにくい傾向にあり、デルタ株は従来株やアルファ株と比べ感染力が強いとされる報告とは異なる結果となった。要因として夏休みの影響、緊急事態宣言(令和3年5月16日~6月20日、8月27日~9月30日)による校内の感染防止対策強化の影響が考えられた。

 従来株期間は、休校期間はあったものの「部活動の原則休止」は行われていなかった。アルファ株期間では、5月16日~7月11日まで部活動の原則休止等の対策がされていた。デルタ株期間では、小学校は8月17日、中学校は8月22日まで夏休みで、かつ8月27日以降は部活動の原則休止が実施されており、同年代との交流機会が限られていたことが感染拡大しにくい傾向につながった可能性がある。

 調査から、感染者が感染可能期間中に登校・通勤した日数が増えるほど、二次感染事例が増加する傾向が認められた。5例以上のクラスター事例すべてで、感染可能期間に感染していた人物が2日以上登校・通勤していた。

 『ネイチャー・メディシン2020』では、SARS―CoV―2の感染性は、発症前日もしくは当日が最大と報告されている。感染可能期間における登校・通勤日数を可能な限り減らし、感染の拡大を抑制するために、発熱等の症状を呈した場合、あるいは家族のSARS―CoV―2感染が判明した場合には、登校・通勤を控えることが重要となる。また、感染者の同一学級内だけでなく、その他の学級へ感染が拡大した事例では、小学校では、教員が感染し、担任学級と職員室で感染が広がり、職員室で感染した他の教員から他の学級へも感染が連鎖したと考えられる事例などがあった。

 市立小・中学校では、これまで、児童生徒がSARS―CoV―2に感染し、感染可能期間に登校していた場合、学級全員を濃厚接触者とみなして、感染者の最終登校日から14日間学級閉鎖とすることを原則としてきた。一方で、今回の調査では、学校内での二次感染が疑われた人の90%が、最終登校日から7日以内に発症または検体採取に至っていた。

 『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン2020』によると、COVID―19の潜伏期間は、1~14日間で平均5・2日間といわれている。また、文部科学省のガイドラインでは、感染者が発生した場合の学級の閉鎖期間は5~7日間程度を目安にすると示されている。以上のことから、札幌市では、3年10月1日から、SARS―CoV―2感染者が確認された際には学級全員の検査をするものの、一律に濃厚接触者とはみなさず、学級閉鎖期間を感染者の最終登校日から7日間とすることを原則としている。

 調査の制限として個々の症例の新型コロナワクチン接種状況が不明であったこと(3年9月の段階で市内小中学生にはほとんど実施されていない)、学校ごとに行われた対策の詳細が不明であることが挙げられる。

 今後、学級閉鎖期間変更の影響を評価するとともに、12歳以上におけるワクチン接種状況や新たな変異株の動向などを注視し、各学校、教育委員会と保健所が連携して流行拡大防止対策の最適化を図ることが求められる。

(札幌市 2022-01-17付)

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