道教委 全国体力調査報告書 T得点 3年で減少傾向 愛好的態度は体育授業要因
(道・道教委 2022-02-28付)

 道教委は『令和3年度全国体力・運動能力運動習慣等調査北海道版報告書』で、本道の小中学生の体力・運動能力の状況や質問紙調査結果のクロス集計による分析を掲載している。平成30年度と令和3年度との比較では、中学校男子の実技調査のT得点が0・9ポイント、女子は2・0ポイント低下。運動やスポーツへの愛好的態度は体育授業で「うまくできる」ことが大きな要因と分析する。

 分析した観点は「体力・運動能力等の状況」など11観点。主な比較対象は全国平均や体力合計点が上位の自治体(大分県、福井県、石川県、埼玉県、茨城県)。

 道教委は分析結果について、市町村教委では地域の児童生徒の実態把握や分析を行う資料として活用するよう期待。小・中学校では授業改善や体力向上の取組、体育的行事を含む教科等横断的な教育活動の一層の充実に向け活用するよう求めている。

 分析結果の概要はつぎのとおり。

【体力・運動能力等の状況】

▽全国および上位5都府県と比較し、小学校男女および中学校男子の握力については、全国平均値および上位5都府県の平均値を上回っている

▽小・中学校男女ともに体力合計点総合評価において、全国および上位5都府県と比較し、A・B群の割合が低く、D・E群の割合が高い

【1週間の運動時間の状況】

▽全国および上位5都府県と比較し、小学校男女においては運動時間が60分未満の児童の割合が全国および上位5都府県並みであるが、中学校男女においては運動時間が60分未満の生徒の割合が高い

▽小学校男女および中学校女子においては、運動時間が増加するとともに、体力合計点総合評価におけるA・B群の割合が増加し、D・E群の割合が減少している

【体格の状況】

▽全国および上位5都府県と比較し、小学校男子、小学校女子および中学校男子においては、肥満傾向児の割合が高く、また小学校女子および中学校男子においては痩身傾向児の割合も高い

▽体格別の体力合計点総合評価においては、「普通」においてA・B群の割合が最も高く、「普通」を基準として「痩身」「肥満」ともにA・B群の割合が低くなり、D・E群の割合が高くなる

【部活動等への所属状況】

▽小・中学校男女ともに「運動部」および「地域のスポーツクラブ」に所属している児童生徒の割合が全国上位5都府県と比較して低い

▽部活動等への所属の有無における体力合計点総合評価においては「運動部」および「地域のスポーツクラブ」に所属している児童生徒の方が、A・B群の割合が高く、D・E群の割合が高い

▽部活動等への所属の有無におけるスクリーンタイムにおいては、「運動部」および「地域のスポーツクラブ」に所属している児童生徒の方が、平日の視聴時間が2時間未満の児童生徒の割合が高い

【平日のスクリーンタイムの状況】

▽全国および上位5都府県と比較し、平日のスクリーンタイムが2時間以上の割合が高い

▽小・中学校男女ともに視聴時間が「1時間未満」の児童生徒は体力合計点のA・B群の割合が高く、スクリーンタイムが増加するほど、D・E群の割合が高くなる

▽小・中学校男女ともに、平日のスクリーンタイムが増加すると運動時間が60分未満の児童生徒の割合が増加する

▽新型コロナウイルス感染症の影響前(2年3月)と現在を比較し、運動やスポーツをする時間が増えたと回答した児童生徒は、平日のスクリーンタイムが「2時間以上」の割合が低い

【新型コロナウイルス感染症の影響】

▽全国および上位5都府県と比較し、小学校男女においては、運動やスポーツの時間が増えたと回答している児童の割合が高い一方、小学校男子では時間が減ったと回答している児童の割合も高い。中学校男女においては、時間が減った児童生徒の割合が高い

▽小・中学校男女ともに、新型コロナウイルス感染症の影響前より運動時間が増えた児童生徒は、体力合計点のA・B群の割合が高く、運動時間が60分未満の割合が低い

▽運動部や地域のスポーツクラブに所属している児童生徒は、運動やスポーツの時間が増えた割合が高い

▽体力合計点が全国平均以上の学校は、児童生徒の体力が低下したと感じている割合が低い

▽小・中学校男女ともに、新型コロナウイルス感染症の影響前より運動時間が増えた児童生徒は運動は大切だと感じている割合が高い

【運動やスポーツに対する愛好的態度の状況】

▽全国と比較し、肯定的回答群は小・中学校男女ともに全国平均並みであるが、上位5都府県との比較においては、中学校女子において肯定的回答の割合が低い

▽運動やスポーツの愛好的態度に対して肯定的な回答をしている児童生徒の回答理由と体力合計点総合評価において、A・B群の割合が高く、D・E群の割合が低い

▽運動やスポーツの愛好的態度に対して肯定的な回答をしている児童生徒の回答理由と体力合計点総合評価との関係においては、小・中学校男女ともに「体育・保健体育の授業でうまくできるから好き」「体育・保健体育授業以外の場でうまくできるから好き」「小・中学校入学前から体を動かすことが好きだから」と回答した児童生徒のA・B群の割合が高い

【児童生徒の内面と体力・運動能力等の状況】

▽全国および上位5都府県と比較し、小・中学校男女において「最後までやり遂げて嬉しかったことがある」と回答した児童生徒の割合が多いもしくは全国平均並みである一方、「失敗を恐れないで挑戦している」「自分には良いところがある」と回答した児童生徒の割合が低い

▽「達成感」「挑戦心」「自己肯定感」の肯定的回答群と否定的回答群を比較し、3項目全てにおいて肯定的回答群の方が児童生徒の体力合計点総合評価のA・B群の割合が高く、特に「挑戦心」との相関が、他の項目に比べ高い傾向がみられる

▽「達成感」「挑戦心」「自己肯定感」の相関においては「挑戦心」と「自己肯定感」の相関が高い傾向がみられる

▽自己肯定感が高い傾向にある児童生徒は、運動やスポーツにおける「友達や仲間との協働的な活動」「運動やスポーツの効果的特性」「過去の運動体験」を通して自己肯定感を高めている傾向がある

▽体育・保健体育授業において、多くの運動量を実感していたり、自分の動きの質の向上をよく実感していたりする児童生徒ほど、自己肯定感が高い傾向にある

▽自己肯定感が高い傾向にある児童生徒は、体育・保健体育授業において「友達に教えてもらった」「先生や友達のまねをしてみた」ことによって、できなかったことができるようになったと回答している割合が高い傾向にある

▽体力テストの結果や体力・運動能力の向上に向けた自己目標を設定している児童生徒ほど、自己肯定感が高い傾向がある

▽自己肯定感が高い傾向にある児童生徒ほど、1週間の運動時間が長い

【体育・保健体育授業にかかる取組の状況】

▽全国および上位5都府県と比較し、小・中学校男女ともに体育・保健体育授業における愛好的態度および運動量は全国平均並みであるが、自分の動きの質の向上を実感している中学校男女の割合が低い

▽体育・保健体育授業の愛好的態度、運動量および質の向上の実感に対する肯定的回答群は、体力合計点総合評価においてA・B群の割合が高い

▽体力合計点が全国平均を上回っている学校においては、努力を要する児童生徒への手立てとして「授業中にコツやポイントを重点的に教える」ことはもとより「児童生徒の実態に応じた場やルール、運動課題の段階的な準備」および「友達同士での教え合い」を設定している

【体育・保健体育授業以外にかかる取組の状況】

▽体力合計点が全国平均を上回っている学校においては、下回っている学校と比較し、体力向上に向けた組織的な取組を推進している割合が高い

▽本道の小学校と中学校を比較し、小学校の方が授業以外に全ての児童生徒に対する体力・運動能力の向上にかかる取組を行った学校の割合が高い

▽全国および上位5都府県と比較し、小・中学校男女ともに体力向上に向けた数値目標を設定したり、自己の成果の記録を活用したりするような取組を実施している割合が低い

▽体力合計点が全国平均を上回っている学校においては、体育・保健体育以外の具体的な取組として、小学校においては「縦割り(異学年)での交流」「記録カードなどに自己の成長を記録」する取組を行っているとともに、中学校においては、生徒の自主的な準備・計画を設定した取組を行っている

▽全国および上位5都府県と比較し、小・中学校ともに体力調査の結果や体力向上・生活習慣改善に向けた資料を家庭に配布している学校の割合が高く、体力合計点が全国平均を上回っている学校においても同様の取組を行っている割合が高い

【平成30年度と令和3年度の中学校男女の経年比較】

▽男女ともに50㍍走においてはT得点が上昇しているが、体力合計点を含めその他の種目については減少している。特に男子においては反復横とびのT得点の減少が大きく、女子においては握力、反復横とびおよび立ち幅とびの減少が大きい

▽「運動やスポーツをすることが好き」「運動やスポーツは大切なもの」と感じている生徒の割合が減少している

▽1週間の授業以外に運動やスポーツをする時間は男女ともに減少しており、特に男子より女子の減少の割合が大きい

▽平日の2時間以上のスクリーンタイムは、男女ともに増加しており、特に男子より女子の増加の割合が大きい

▽「体育・保健体育の授業が楽しい」「体育・保健体育の授業では十分に体を動かしている」と感じている生徒の割合が減少している

▽「挑戦心」「自己肯定感」について「当てはまる」と回答をしている生徒の割合が減少している

(道・道教委 2022-02-28付)

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