道教委 4年度教育行政執行方針 ICTで新たな学びを 高校教育等 在り方検討開始
(道・道教委 2022-03-01付)

道教委・倉本博史教育長
道教委・倉本博史教育長

 倉本教育長は、学校教育と社会教育を両輪として子どもたちに必要な資質・能力を育む教育行政を推進するとし、重点政策として「ウィズコロナ・ポストコロナにおける新たな学び」「生涯を通じ、個性が輝き豊かさを実感できる教育の推進」「北海道への誇りと愛着を持ち、未来を切り拓く人づくり」を挙げた。

 具体的な施策をみると、スクール・サポート・スタッフの配置や児童生徒の心のケアなどの感染症対応と授業づくりやオンライン学習の支援などICT活用に向けた取組を進める。

 幼児教育段階では、小学校との接続における課題解決に向けた施策を充実。義務教育においては個別最適な学びと協働的な学びを実現する授業改善、少人数学級編制の拡大、小学校高学年における教科担任制の推進などに取り組むとした。

 高校関連の施策をみると、各教科の学習を実社会の課題解決に生かす教科等横断的な学習の充実、遠隔授業配信センター(T―base)の配信科目の拡充に取り組むほか、新学科の設置や地域の教育機能を維持する方策など高校教育の在り方を検討するとした。

 特別支援教育においては、経験の浅い教員の専門性向上を図る支援体制充実や重複障がいのある児童生徒の指導への相談支援に取り組むことなどを挙げた。

 教職員による不祥事根絶に向けて、専門的知見に基づき校内で意識共有を図る場を設置するなど新たな方策を導入する。

 生徒指導関連では、いじめの積極的認知と組織的対応の徹底、不登校児童生徒への初期段階からの組織的・計画的な支援に取り組むとした。

 このほか、休日の部活動の地域移行と地域活性化の両立に向けた取組を開始するほか、学校図書館の機能充実を図る学校司書講習を創設。夜間中学や道民カレッジの在り方について検討する。

 4年度教育行政執行方針の概要はつぎのとおり。

【教育行政に臨む基本姿勢】

 人口減少・少子高齢化の進行や産業構造の変化、ICTやグローバル化の進展などによって人々の価値観や生活様式が大きく変わり、従来の知識や経験では解を見いだすことが難しい時代となっている。

 このような変化の激しい時代にあって、子どもたちが未来において様々な困難を乗り越え、豊かな人生を切り拓いていくためには、自らの良さや可能性を認め、地域などの多様な人々と連携・協働しながらそれを生かしていくことが大切である。

 このため、学校教育と社会教育を両輪として必要な資質・能力を育む教育行政を推進していく。

【重点政策の展開】

▼ウィズコロナ・ポストコロナにおける新たな学び~これからの時代に向けた教育環境の創造

 新型コロナウイルス感染症が子どもたちの学びに影響を与える中、感染対策に取り組みつつ新しい時代の学びの実現に向けた環境整備を進めることが重要である。

 このため、国の衛生管理マニュアルに基づく感染対策の徹底や、スクール・サポート・スタッフ、学習指導員の配置による学校運営体制の充実、児童生徒の心のケアなどに取り組むとともに、これからの学校教育を支える基盤的ツールであるICTのさらなる活用に向け、教員の授業づくりやオンライン学習への支援、高校における1人1台端末や道立学校のICT活用サポート体制の整備など、ウィズコロナ・ポストコロナにおける新たな学びの環境を構築する。

▼生涯を通じ、個性が輝き豊かさを実感できる教育の推進~社会で生きる知・徳・体の育成

 予測困難な時代において、これからを生きる子どもたちが社会の変化に主体的に向き合いながら自ら課題を見つけ、解決し、生涯を通じて学び続ける意欲を持つことが必要である。

 このため、知・徳・体の調和のとれた生きる力の育成を図る。

 幼児教育においては、保育者への研修や助言を通じて学びの一層の充実を図るほか、幼児教育施設と小学校との接続における諸課題の解決に向けた施策の充実など、人格形成の基礎を培う学びの基盤づくりを進める。

 義務教育においては、個別最適な学びと協働的な学びを実現するための授業改善や、学校・家庭・地域の連携・協働による望ましい学習・生活習慣の確立、少人数学級編制の拡大、小学校高学年における教科担任制の推進、コミュニケーション能力を重視した英語教育の推進や外国人児童生徒への学習支援に取り組む。

 また、ウポポイの活用も含めたアイヌの人たちの歴史・文化に関する学習をはじめ、北方領土や各地域の歴史・文化等を学ぶふるさと教育を推進するとともに、多様な人材の活用による出前授業や体験活動を通して、規範意識や協調性、思いやりや生命を尊重する心を育む道徳教育の充実を図る。

 さらに、体育専科教員の配置や実践事例の活用など、体力向上の取組を推進するとともに、アレルギー疾患など多様化する健康課題への対応や望ましい食習慣の定着など、健康教育の充実を図る。

 高校教育においては、義務教育において育成された資質・能力をさらに発展させるよう、主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善や、各教科の学習を実社会の課題解決に生かしていくための教科等横断的な学習の充実を図る。

 遠隔授業配信センター(T―base)からの配信科目の拡充を図り、地元の高校に通いながら希望する進路を目指すことができる教育環境の整備を進める。

 併せて、産業界と専門高校が一体となって職業人の育成を図るキャリア教育の充実や、道外高校生の地域留学の受け入れを進めるほか、感染状況を見極めた上でのふるさと納税制度を活用した海外留学をはじめ、オンラインの活用や道内居住留学生との交流によって多様な文化や価値観に触れる機会を創出する。

 さらに、5年度に本道で開催される全国高校総合体育大会に向け、広報活動や企業協賛募集など関係機関と連携して準備を進める。

 特別支援教育においては、障がいのある子どもたちの自立や社会参加に向け、一人ひとりの教育的ニーズに応じた適切な指導・支援に取り組む。

 また、経験の浅い教員の専門性向上を図るための支援体制の充実や、オンラインを活用した重複障がいのある児童生徒の指導に係る相談支援に取り組むなど、身近な地域において高い専門性に基づく教育が提供できるよう体制整備に努める。

 いじめや不登校への対応については、望ましい人間関係を築く力を育むとともに、いじめの積極的な認知と組織的な対応によるいじめ防止や早期対応の徹底、不登校児童生徒への初期段階からの組織的・計画的な支援に取り組む。

 また、児童虐待への対応については、関係機関との連携強化による迅速な対応に努める。

 さらに、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの派遣、子ども相談支援センターの24時間運用やSNSの効果的な活用など、教育相談体制の充実を図る。

 学校における働き方改革については、昨年改訂したアクションプランに基づき、業務改善を図る手引書を活用した教職員の意識改革の推進や、時間外在校等時間の縮減に向けた各学校でのコアチームの設置やチェックリストの活用促進を図るとともに、地域との協働による学校を応援する体制づくりに努める。

 さらに、スクール・サポート・スタッフ、部活動指導員の配置やスクールロイヤーによる法律相談、休日の部活動の地域移行と地域活性化の両立を目指すモデル事業によって教職員の負担軽減を進める。

 教職員による不祥事根絶に向けては、各学校での指導を徹底するとともに、学校における不祥事防止対策会議の専門的知見に基づき、校内で不祥事防止のための意識共有を図る場を設置するなどの新たな方策を導入し、強い決意で取り組む。

▼北海道への誇りと愛着を持ち、未来を切り拓く人づくり~家庭・地域と連携した学校や多様な価値観を認め支え合う社会の実現

 学校や家庭、行政、企業等が地域の課題を共有し、解決に向けて共に考え実践する活動を通じ、子どもたちの地元への愛着や地域の将来を担う意識を醸成するとともに、多様な価値観を認め、互いに支え合う社会を実現していくための教育が重要である。

 このため、地域コーディネーターや社会教育主事など地域に精通した人材が自治体や企業・団体等の様々な主体と学校との連携を図り、地域の課題や可能性を掘り起こし、探究型の学習体験を支援することによって、未来のまちづくりを担う人材育成につながる地学協働体制の構築や、公民館など社会教育機能を生かした子どもと大人による地域課題解決に向けた取組、将来の地域リーダーとなる青少年の育成を進める。

 また、高校へのコミュニティ・スクール導入の加速や、国の普通科改革を踏まえた新学科の設置検討、高校改革に意欲的に取り組む校長の庁内公募のほか、地域における教育機能を維持する方策の検討など、これからの時代に求められる高校教育の在り方検討を進める。

 併せて、子どもたちの将来が経済的な環境に左右されることのないよう、高校授業料などの負担軽減や、地域における学習支援の充実、各種支援情報の提供に取り組むほか、ヤングケアラーと考えられる子どもたちを適切な支援につなげる体制の構築を進める。

 さらに、様々な理由によって義務教育を修了していない人の教育機会を確保するため、夜間中学の在り方を検討する。

 子どもたちの安全確保については、地域全体で地震や津波、台風など自然災害から命を守る防災教育の充実に向け、各地域における1日防災学校や高校生防災サミットに取り組む。

 教員の確保・資質向上については、教員養成大学と連携し、教員を目指す学生が教職のやりがいや魅力を体感する草の根教育実習や、高校生を対象とした教員養成セミナーなどの充実を図る。

 また、複雑化・多様化する教育課題への対応に向けた教員の資質・能力向上のため、教員育成指標に基づく取組の検証を踏まえた効果的な研修を実施する。

 生涯学習活動については、幅広い世代の人に学習機会を提供する道民カレッジの在り方検討や、読書活動の推進、学校図書館の機能充実を図る学校司書講習に取り組む。

 文化の振興については、アイヌ民俗文化財や日本遺産など文化財の保存・活用の支援や、子どもたちの歴史・文化への理解と北海道への愛着の醸成を図るため、縄文遺跡群を活用した出前授業や世界遺産子どもサミットの開催に取り組む。

 また、道立美術館の機能強化を図るため、所蔵作品のデータベース化やデジタル技術を活用した鑑賞機会の提供を充実させるとともに、9年に開館50周年を迎える近代美術館の在り方について有識者による検討を進める。

(道・道教委 2022-03-01付)

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