学びの質高める活動を 札幌市教委 4年度教育方針説明会(札幌市 2022-03-03付)
札幌市教委は、4年度教育方針説明会を開催した。新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から前年度に引き続き書面で開催。市教委ホームページに説明会に関わる資料を掲載したほか、檜田英樹教育長のあいさつ動画を配信した。檜田教育長は、①不祥事の根絶に向けた取組②4月開校の公立夜間中学「星友館中学校」③4年度市学校教育の重点の方針―の3点に関する考えを説明。「人間尊重の教育」を学校教育の重点の基盤に位置づけ、相互承認の感度を高める教育活動をより意識して推進していく考えを示した。=4年度市学校教育の重点の概要は後日掲載=
檜田教育長のあいさつ概要はつぎのとおり。
▼不祥事の根絶に向けた取組
本年度は、教職員によるわいせつ事故や酒気帯び運転など、重大な不祥事が相次ぎ、過去10年をみても、懲戒免職者が最も多くなるなど、札幌市の教育・教職員に対して、非常に厳しい目が向けられている。
多くの教職員が使命感や誇り、愛情等を持って教育活動に当たっているが、ひとたび不祥事が発生すると、日々積み重ねた信頼を瞬時に失うこととなってしまう。
何より、子どもたちの心に与える影響は甚大。大好きだった先生、自分がお世話になり、信頼を寄せていた先生が、世の中で許されない行為をしたことで、マスコミにも大きく取り上げられるなど、その影響は計り知れない。
本人の責とはいえ、不祥事を起こした職員の家族にも同様の影響が及ぶ。
管理職の皆さんには「自分の職場から絶対に不祥事を起こさない」という強い思いを今一度持っていただきたい。
日ごろから自身の言葉で、職員に自身の思いを繰り返し繰り返し伝え、何より職員の態度や表情などの小さな変化を見逃さず、声をかけ、見守っていただくなど、日々の小さな取組を大事にしながら、温かで明るい職場づくりをお願いする。
▼星友館中学校
この4月に、これまで様々な事情で学ぶことがかなわなかった方が集い、学び、成長できる場として、ここ札幌市に北海道初の公立夜間中学、星友館中学校が開校する。
校歌「私(わたし)の物語」の歌詞には、つぎの一節がある。
やっとめぐり逢えた友よ あの喜び 迷いながら見つけた 遙か故郷 いま生きよう 私の物語を さぁ描こう 自分のページを―作詞を手がけた、さっぽろ応援大使でもある歌手の半﨑美子さんは、夜間中学に携わる方たちとの対話を通して「学びの本質には、学校教育の中での多様な人との関わり合い、そこで育まれるものや心といったものが大きく作用している」ということを知り、「自分が主人公の物語を生きる」というメッセージを校歌に込めてくれた。心にしみる素晴らしい校歌である。
主役となる生徒一人ひとりが安心して、多様な人と関わり合う中で、自らの成長を実感しながら、自分が主人公の物語を紡いでいく。
まさに、学校だからこそ実現できる学びである。
子ども一人ひとりを大切に
▼4年度市学校教育の重点の方針
学校教育において、子どもの「学ぶ力」「豊かな心」「健やかな体」の育成を図るには、学校という場が、互いにかけがえのない人間として、個性、多様性を認め合い、支え励まし合う温かくて安心できる場である必要がある。
このことから、学校教育の原点に立ち返り、「人間尊重の教育」を4年度学校教育の重点の基盤と位置づけ、「自分を肯定し受け止めること」「自分と違う他者を肯定し、認めること」といった、相互承認の感度を高める教育活動をより意識して推進していく。
皆さんと大切にしたいキャッチフレーズは、子ども一人ひとりが「自分が大切にされている」と実感できる学校づくり。
子ども一人ひとりを大切にするということは、教職員が愛情を持って子ども一人ひとりと向き合うということ。関わりが届いていない子、漏れている子はいないだろうか、光の当て方はこれで良いのだろうか、この言葉は心に届くだろうかなど、子どもの心に届く温かな関わりを、全教職員で日常的に継続していただきたい。
子どもへの深い愛情は、いつか必ず伝わる。「自分がかわいいと思えるまで、その子をかわいがる」。そんうした気持ちで、子ども、保護者と接してほしいと願っている。
建物に例えるなら、この子どもへの愛情こそ、子ども一人ひとりが「自分が大切にされている」と実感できる学校づくりの礎石となるものであり、まさしく、さっぽろっ子「学び」のススメは、その礎石を頑丈なものへとしていくための指針となるもの。
さっぽろっ子「学び」のススメでは、市の学校教育における子ども観・教育観をこのように示している。
子どもは、どの子も良さや可能性を持っている。
他者との比較ではなく、その子自身の成長を認めていることが大切。子どもに寄り添い、伸びを認め、意欲を高める共感的・肯定的なメッセージを伝え、子どもの成長を促していこう。
この子ども観・教育観に基づき、あらゆる教育活動において、教職員のみならず、家庭・地域と共に、促す、認める、支える関わりを通して、子どもの自尊感情や他人を思いやる心、生命を尊重する心を醸成していただきたい。
子どもだけでなく、その家族も「自分が大切にされている」と実感できるような学校づくりを進めていくことで、良質な学校教育のさらなる充実へとつながるものと確信している。
子ども一人ひとりは、様々な背景や可能性を持った存在であり、多様な教育ニーズを持っている。
しかし、ややもすると学校はこうあるべきという「形」に子どもを入れてしまう傾向があり、多様性が十分に理解されずに、個々の能力や良さが発揮できないということも少なくない。
国においても、中央教育審議会で「令和の日本型学校教育」が言われている。
昨年の研修会でも話したが、決して二項対立の陥穽に陥らないこと、多様性と包摂性を大切にした学校づくりをお願いした。
個別最適な学びや協働的な学びを進める中で、一人ひとりの良さや可能性に目を向けながら、明るく子どもが楽しいと感じる学級、頑張る姿を応援し、子どもと一緒に笑い、涙を流せる、そのような人間性あふれる教職員、保護者の困りにも耳を傾ける学校、教職員、そうした温かな学校づくりをお願いする。
現在、各幼稚園・学校においては、感染症対策を講じた教育活動の工夫に取り組み、日々の運営においては「学びを止めない」という強い意志のもと、創意工夫を重ねるとともに、子どもたちの心身のケアを行うなど、子どもの学びや育ちを支えていただいている。 今後は、これまで積み重ねた感染症対策を講じた教育活動についての知見を生かしながら、小中一貫した教育やICTを活用した教育の推進などを通して、「学びの質を高める」教育活動を皆さんと共に実現していきたいと考えている。
皆さんにおいては、全ての教育活動の中で、子どもたちが挑戦しようとする心や失敗を恐れない心を持てるよう、常に愛情を持って子どもたちに接し、厳しい中にも温かさのある指導によって、子どもたちを育んでいただくことを切に願っている。
「自立した札幌人」の育成に向けて、園長、校長と教育委員会が柔軟かつ強靱なスクラムを組み、新しい時代に向けて、前向きな決意をする場となるよう強く願っている。
(札幌市 2022-03-03付)
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