札幌市教委 4年度教育方針 各所管事項② “三間”大切に運動機会創出 子の自殺防止へSOS出し方教育
(札幌市 2022-03-08付)

【知・徳・体の調和のとれた育ち】

 札幌市としては、学ぶ力、豊かな心、健やかな体をバランス良く育む取組に子ども一人ひとりが主体的に取り組むよう支援していく。

 そのために、各園・学校では、各学校段階間の関連と接続を意識し、一貫した子どもの育ちの観点を重視した取組を進めていく。

▼学ぶ力の育成―学校教育部

 市では、4年度においても、学校での学びの質を高め、家庭と一体となって学ぶ力を育むことを目指して、さっぽろっ子「学ぶ力」の育成プランを推進する。

 4年度は、これまで以上に、学びの主体者である子ども自身が、分かる・できる・楽しいと感じることができるよう、ICTなども活用しながら、子どもが自ら疑問や課題を持ち、主体的に解決する学習である課題探究的な学習を取り入れた授業づくりの充実を図っていく。

 さっぽろっ子「学ぶ力」の育成プランの推進に当たっては、子どもの現状を一層きめ細かに把握し、分析することが重要であることから、4年度から学習などについてのアンケートの内容を一部改訂するとともに、新たにICT活用についてのアンケートも実施するとした。

 これらのアンケートは、家庭と一体となって学ぶ力を育むため、調査対象を小・中学校の全学年に拡大するとともに、自己評価結果を児童生徒へ返却し、自ら振り返りを行う際のエビデンスとして活用できるようにするなど、さらなる見直しを図っていく予定。

▼豊かな心の育成―児童生徒担当部

 コロナ禍による様々な制限が長期化しているが、このような中においても子どもたちの豊かな心を育成し続けるために、より一層の工夫が必要。

 工夫のための視点として、例えば「子どもが自分の良さや可能性を認識するとともに、あらゆる他者を価値のある存在として尊重する気持ちを育むためにどのような取組を進めるべきか?」「本来であれば、豊かな心を育む上で有用な活動である高齢者等との触れ合いやボランティア活動、文化や芸術に親しむ体験活動等が制限される中、どのように豊かな感性や社会性を育むのか?」などの視点も取り入れながら検討を進める必要がある。

 具体的な取組として、道徳教育の要となる特別の教科「道徳」のさらなる充実を図ることが考えられる。充実を図るに当たって考え、議論する道徳の実現やICTの活用による工夫を進めることはもとより、小・中学校間の年間指導計画の共有などの小中一貫した教育を踏まえた系統的な指導の工夫、家庭と子ども観・教育観を共有しながら育んでいく取組の工夫等についても検討が必要と考える。

 また、各学校においては、引き続き『道徳科の教育課程編成の手引き』も積極的に活用しながら、取組を進めるようお願いする。

▽命を大切にする指導

 厚生労働省の自殺者数統計によれば、2年の小中高生の自殺者数は過去最高になっている。

 こうした状況を踏まえると、市においても、全教職員が「いつ自校で自殺関連行動が起きてもおかしくない」との危機意識を強く持って未然防止に努めていくことが必要である。

 全国で起きている自殺関連行動の調査報告書でも、教職員は、子どもたちの小さな変化には気づいていたものの、それが自殺関連行動にまで発展するとまでは思い至っていないケースが多い傾向にある。

 各学校においては、子どもの小さな変化を見逃さず、教職員で共有する取組の工夫を進めることや「いつも休みがちだから…」「元々無口な子だから…」などというバイアスをかけた対応で、遅れを取らない意識の共有「SOSの出し方に関する教育」の計画的な推進等の取組を確実に進めることが重要。

 こうした取組を進めるに当たっては、教育委員会が作成した『自殺関連行動に係る具体的対応のためのガイドブック』を校内研修会等で活用するようお願いする。

 また、各学校において、自殺のほのめかしや自傷行為等が発生した際には、学校担当指導主事に直ちに報告していただくとともに、スクールカウンセラーと連携し、確実な保護者への引き渡しや見守りの依頼など、丁寧な対応を引き続きお願いする。

▽いじめの防止に向けた取組

 いじめの対応は、いじめと捉えられる事案が確実に学校いじめ対策組織で対応について検討されるようなシステムを構築することが重要。加えて学校いじめ基本方針は、定期的な見直しを行うとともに、教職員が保護者から問われても、正確に内容を伝えられるよう共通理解を図っておく必要がある。

 いじめ防止の取組も、小中一貫した教育の視点を取り入れ、パートナー校間で情報交流しながら進める。

 最後に、対応が難しいものとしてSNSにまつわるいじめ事案が多い実態を踏まえ、情報モラル教育を充実するとともに、SNSトラブル等の未然防止に向け、子どもと保護者双方に、繰り返し啓発することが重要と考えるので、各学校において計画的な指導や啓発の方法について工夫するようお願いする。

▼健やかな体の育成―学校教育部

 「3年度全国体力・運動能力、運動習慣等調査」の実技調査の結果では、全国的な傾向と同様に、札幌市の子どもの体力・運動能力は、全般的に低下した。

 4年度は、各学校が自校の子どもの状況を踏まえて健やかな体の育成に向けた課題を明確にし、体育、健康の両面のバランスが取れた指導の充実を図る観点からさっぽろっ子健やかな体の育成プランを改訂する。

 「健やかな体」育成プログラムの改訂・実施に当たっては、つぎの3つを中心に取り組む。

▽体育・保健体育の授業の充実

 1人1台端末をより効果的に活用し、課題探究的な学習の充実を柱として、引き続き感染症対策と、楽しく体を動かす学習の両立を図っていくことに挑戦する。

▽授業以外で子どもの運動機会を創出する取組

 これは、4年度に最も大事にしたい項目であり、キーワードは「仲間・時間・空間」の三間(さんま)。

 各学校の実情に応じて、特に運動機会が少ない子どもを主なターゲットとし、この三間を創出する「授業以外で子どもの運動機会を創出する取組」を必ず位置づけることによって、取組の充実を目指す。

▽健康に関する指導の充実

 各教科等における学習を、意図的・計画的に関連づけて、健康に関する指導を推進していくことが重要。助産師等の外部講師の効果的な活用とも併せて、指導の充実を目指す。

 加えて、引き続き、札幌らしい特色ある学校教育と関連させながらオリンピック・パラリンピック教育を推進する。東京2020オリンピック・パラリンピック大会を契機として、ふるさと札幌への思いをより強くするとともに、オリンピック・パラリンピック精神に基づく、スポーツの意義や価値について実感する学びの機会の充実に努める。

(札幌市 2022-03-08付)

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