札幌市教委　教員長期社会体験研修　自身の成長　生徒に還元　中央中の野呂教諭が編集業務

（札幌市 2022-03-31付）

様々な取材先で多様な経験を積み成長につなげた

　札幌市教委が実施している教員長期社会体験研修。３年度は市立中央中学校の野呂網衛教諭が昨年４月から約１年間、子ども向け情報紙を発行する広告会社（株）アドバコムで、編集業務のほか番組制作やイベントの運営に携わった。野呂教諭は、多岐にわたる業務を通して「多くの人との出会いが自身の成長につながった」といい、経験を子どもたちの学びに生かしていく考えだ。

　野呂教諭は教員生活１５年目。経験を重ねる中で、いったん学校以外の場所に身を置いて視野をさらに広げる経験がしたいと考えるようになった。また、新型コロナウイルスの感染拡大など変化の激しい社会情勢の中で「自身も生徒も柔軟な考えを持って生きていくヒントを得る必要がある」と考え参加を決めた。

　アドバコムは、環境保全に関する取組などを紹介する子ども向けの情報紙「エコチル」を月１回発行。市内の小・中学校、高校を中心に全国約８０万部を無料配布している。

　また、ユーチューブの生配信番組「エコチルライブ」の制作や大規模イベントの企画・運営などを行っている。

　野呂教諭の配属先は編集部。記事の取材・執筆のほかにも、番組制作やイベント運営など多岐にわたって担当した。

　紙面上の企業や団体の環境やＳＤＧｓに関わる取組などを紹介するコーナーなどで、取材対象者の選定や交渉、取材、記事の執筆まで全て行った。「限られた文字数で取材相手の思いを正確に伝えることや、子どもが理解しやすい表現で執筆することに難しさを感じた」という。

　紙面の内容を深掘りする生配信番組の制作では、企画を立てて環境省や札幌市環境局の職員、全国の動物園や水族館に出演の交渉を行った。台本を作成し準備を進める過程で、出演者のほかにも、配信スタジオのスタッフなど多くの人が関わるため「チームワークの大切さをあらためて実感した」と振り返る。

　８月には自由研究のヒントになる情報を発信するイベント「エコチルまつり」をオンライン形式で開催。野呂教諭は企業や団体への協賛依頼に奮闘した。オンライン開催は同社として初の試み。試行錯誤しながらの準備作業だったが、月１回のユーチューブ配信で培ったノウハウが生かせたといい、３０分程度のドキュメンタリー動画の制作やイベントの進行係も担当した。

　野呂教諭は研修を振り返り「多くの人たちと出会えたことが大きい」と話す。取材などの外回りの仕事を通じて、様々な職業に就き、多様な価値観や考えを持つ人たちと出会う機会に恵まれたという。「学校や家庭内だけではなく、これから広い世界で生きていく生徒たちに還元していきたい」。将来的に授業の中で「研修で出会った人たちがロールモデルとして、生徒たちと関わってもらう機会を創出できたら」と展望する。

　研修の報告書は今後、市のホームページで公開する。

(札幌市 2022-03-31付)