札幌市中学校長会 各部の3年度 研究成果 第3回 指導部 主体的発信力育む指導検証 この社会的資質調査し取組充実に 
(札幌市 2022-04-01付)

第3課題「新たな未来を紡ぎ、よりよい社会を創る力を育む生徒指導―社会的資質を高め、主体的発信力を育む指導の深化

【研究の視点】

 社会的資質として、国立教育政策研究所の提案を具現化した埼玉県立総合教育センターの研究から9要因を踏襲した。その9要因(コミュニケーション能力、アサーション能力、共感性、将来展望性、自尊感情、集団参加能力、実践力、規範意識、基本的生活習慣)の中から「主体的発信力」育成のポイントとなるものを具体的に抽出し、検証を進める。

 教員・生徒・校長それぞれを対象にアンケート調査を実施した上で、研究の副主題「社会的資質を高め、主体的発信力を育む指導」についての現状分析、今後の指導の在り方、学校経営上の課題究明を図り、研究主題となる「新たな未来を紡ぎ、よりよい社会を創る力を育む」学校経営の方策および校長としての関与の在り方も明らかにしていく3か年継続研究を設定した。

【研究内容(一部抜粋)】

 3年度は3か年継続研究の最終年として、元年度と2年度の研究実践も踏まえ、研究基本主題と副主題を追究するため、2年度までと異なる調査対象に関する現状把握と課題の検証、過去2年間の調査結果と比較した考察を試みた。

▼「社会的資質」に対する生徒の現状認識と日常の指導に対する生徒の意識

 元年度は「社会的資質」の向上のため、教員に対し、自校生徒の「社会的資質」についての現状認識と「社会的資質」を向上させる教育活動、さらには指導に対する教員自身の意識の度合いについての調査した。

 2年度は生徒を対象に、日常において生徒自身がどのような意識を持って生活しているか、また、教員による「社会的資質」を向上させる指導をどのように感じているかについて調査。3年度は校長に対し、校長の目から見た自校生徒の「社会的資質」についての現状認識と自校教員の「社会的資質」を向上させる指導状況についてどのように感じているかについての調査した。

 なお、過去2年間と同様に「社会的資質」をコミュニケーション能力、アサーション能力、共感性、将来展望性、自尊感情、集団参加能力、実践力、規範意識、基本的生活習慣という9要因で捉え、校長向けに質問の表現を修正して調査した。

▼生徒の主体的発信力を育成する指導

 主体的発信力を育成する指導について、過去2年間と同様に7項目の質問を用いて、3年度は校長の捉え方について調査した。

【まとめと展望】

▼研究のまとめ

 本次研究では、コミュニケーション能力の一つである「人前で話す力」や「他人や相手に自分の気持ちを伝える力」に焦点を当て、「自分自身はもちろんのこと、自分の周囲にいる人たちや相手に様々な配慮を意識した上で、前向きに自分の考えを表現する力」である「主体的発信力」を育む指導に学校が積極的に取り組むことで、生徒の社会的資質を高めることにつながるという研究仮設のもと、指導の在り方、充実、深化に関する3年間の継続研究を進めてきた。

 1年次は教員の視点から社会的資質の充実度とコミュニケーション能力に含まれる「主体的発信力」の関係について考察した。教員(445人)を対象としたアンケートの結果から、生徒の実態として肯定的回答が比較的多い社会的資質項目は「実践力」「基本的生活習慣」「規範意識」であった。一方で比較的少ない質問項目としては「コミュニケーション能力」「アサーション能力」「将来展望性」が挙げられた。

 2年次は社会的資質やコミュニケーション能力について、生徒の現状認識を調査し、自己評価をもとに、指導の効果を探るとともに指導の充実を図った。指導部校長21人の学校の生徒(3224人)を対象にアンケート調査結果から、教員では肯定的回答が比較的少ない質問項目となっていた「コミュニケーション能力」「アサーション能力」「将来展望性」について、生徒では肯定的回答が多いことが明らかになった。また、社会的資質9要因の内「自尊感情」だけは教員の評価よりも生徒の自己評価が低い結果となっていた。

 3年次である3年度は3か年研究のまとめとして、指導部の校長(21人)にアンケートを実施し、指導の深化を図った。アンケートの結果から、校長の回答には教員と概ね同様の傾向が見られたが、コミュニケーション能力に関する「教師は生徒に対して、相手と上手に気持ちを通じ合わせられるように指導している」という項目など、社会的資質に関する教員の指導について9要因(コミュニケーション能力、アサーション能力、共感性、将来展望性、自尊感情、集団参加能力、実践力、規範意識、基本的生活習慣)全てで教員に比べ肯定的な評価が多く見られた。

 また、主体的発信力に関する教員の指導についても、7項目中4項目で教員よりも肯定的な回答が多かったが、周囲のやる気を高める発言の在り方、相手の気持ちを考えながら話すこと、話し合いの方向性を意識することなどについて課題があると感じていることが明らかになった。

▼展望

 各学校においては、学校評価、教員との面談などの場を通して、自校の実態を正確に把握するとともに、主体性や他人に働きかける力、実行力などを身に付けることができるよう、他校の優れた実践例なども参考にしながら、教職員との共通理解に立った指導を行うことが重要である。

 校長会指導部としては、3か年研究の結果から、生徒一人ひとりが集団や社会の一員として自己実現を図っていくことができるよう、生徒の社会的資質を高めるため「主体的発信力」を育むことが必要と考え、今後もさらに研究の充実を図っていきたいと考える。

(札幌市 2022-04-01付)

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