札幌市中学校長会 各部の3年度 研究成果 第4回 保健体育部
(札幌市 2022-04-04付)

第4課題「新たな未来を紡ぎ、よりよい社会を創る力を育む体育・健康に関する指導―新たな未来を紡ぎ、よりよい社会を創る力を育む体育・健康に関する指導の深化」

【研究の視点】

▼体育・健康に関する指導における課題

▽体力・運動能力に関する課題

▽健康に関する課題

▽生徒の心身に関する課題

▼体育・健康に関する指導における実態把握

▽教育課程への位置づけ

▽健康教育推進の実践

▼体育・健康に関する指導における連携

▽校内における教師間の共有

▽教師と子どもとの共有

▽学校間の共有

▽学校と家庭・地域・外部人材との共有

【研究内容(一部抜粋)】

▼体力・運動能力の向上に向けた取組

 3年度は本次研究のまとめとして、保健体育部13校とそのパートナー校である小学校27校に依頼したアンケート調査に「運動機会創出のための工夫について」「小中一貫した教育の流れから」の2つの視点からの設問を入れ、その結果をもとに分析・考察を行った。

▽運動機会創出のための工夫について

 児童生徒の運動への興味や意欲を高めるため、また、運動の楽しさを味わわせ、必要性を意識させるため、各場面における運動機会創出の取組・工夫について「行っている」「行う予定である」「行う予定はない」の選択と実施内容の記述を依頼した。

▽小中一貫した教育の流れから

 体力・運動能力の向上をどのように進めるかを探るために、アンケートで小中パートナー校間の「健やかな体」育成プログラムを比較し、小中のみの活動や共通点について分析・考察を行った。

▼健康に関する意識の向上に向けた取組

 前次研究から、健康のためには健康3原則「運動」「食事」「睡眠」に基づいた生活習慣の形成を推進し、子どもの運動意欲や健康に対する意識を高めるとともに、心と体の一体化を図る取組が、小中一貫した教育のもとで行うことが求められている。

 本年度はあらためて、健康3原則の大切さを意識させる取組と工夫、小中一貫した教育の中でパートナー校に希望する取組や工夫についての設問を入れて、アンケートを実施し、分析・考察を行った。

▽健やかな心の健康に向けた取組

 健康3原則の大切さを意識させる取組については、年間を通じた多くの「教師間の共有」が必要となる。カリキュラムの作成も視野に入れながら、できることから取り組み、児童生徒が「運動」「食事」「睡眠」の話題に触れる機会を多くすることが必要であると考える。

▽パートナー校への希望

 小学生が純粋に中学生の姿に「あこがれ」を持つことが中学校での活動の意欲につながるなど、児童目線での取組へ生かせるヒントが見つけられる。

 取組をより効果的に行うために、互いの体育・保健体育の授業や運動に関する行事の参観(動画視聴)や交流を通して、あるいは部活動に関する情報交流や体験活動などのパートナー校同士を結ぶ「学校間の共有」も必要と考えられる。

▼健やかな心の健康に向けた取組

 3年度は不登校要因とその支援の具体策についてアンケートを実施し、考察と分析を行った。また、アンケートの各校の取組や小学校の実態を紹介することで、小中一貫した教育や各校の不登校・別室登校支援の一助になればと考えている。

▽不登校の実態

 アンケートの結果から中学校における不登校生徒への支援は「担任の空き時間での登校」「定期的な放課後等の登校」「相談支援パートナーやSCの活用」等、ほとんどの学校において同様の支援を行っていることから、中学校における不登校支援・別室登校支援の具体的方法は定着化していると言える。

▽不登校要因を踏まえた支援

 不登校要因は複雑に絡んでいることもあるので、子ども理解の視点を常に持ち、保護者の安心感が子どもの安心感につながることを前提に、生徒や保護者に寄り添い、情報を提供し、保護者と同じ方向を向いて改善に向かうことが重要になってくる。

▽社会的自立を目指す学校環境の在り方

 不登校の要因が多様化・複雑化した今は、環境によってどの児童生徒にも起こり得ることであり、その支援も多種多様に考えられる。担任が一人で抱え込むのではなく、SC、外部機関、ボランティア、コーディネーター等とチームとして支援していくことが大切である。

▽小学校の実態

 支援の困難を感じているのは「不登校が長期化した時の本人・保護者への対応」であり、中学校同様「保護者が学校と一切関わろうとしない」「保護者が登校する意義を見いだせていない」等家庭要因が関係する記述がみられた。

【まとめと展望】

 「体力・運動能力の向上に向けた取組」および「健康に関する意識の向上に向けた取組」については、パートナー校同士の「学校間の共有」で、効率的で系統的な指導も可能になり、9年間の継続した学びの作成に生かされると考えられる。そのためにも校長が学校経営方針に明記して職員の意識を高め、小中の育成プログラムをすり合わせ、教育課程に盛り込んで取り組んでいくことが今後の課題である。

 「健やかな心の健康に向けた取組」については、年々増加する不登校生徒の状況を改善する正解を見つけることは難しい。中学校3年間で自信をつけさせ、つぎのステップにつなげることや「社会的な自立」につながることを目指し、大局的・長期的な視点に立って、生徒や保護者に寄り添うことが必要である。

 今後は、長期に渡って不登校状態にある生徒への個別の支援計画、社会的自立と家庭要因との関わりや新たなICT活用の実践等の研究を推進していきたい。

(札幌市 2022-04-04付)

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