公立高・特校長会議の道教委所管事項説明・上 服務規律確保に万全を 世界遺産活用し次世代育成
(道・道教委 2022-05-26付)

山本純史
山本純史局長

 道教委の4年度公立高校長・特別支援学校長会議(11日、ホテルライフォート札幌)では、山本純史総務政策局長、山上和弘生涯学習推進局長、伊賀治康教職員局長、谷垣朗道立学校配置・制度担当局長、堀本厚学校教育局長が所管事項を説明した。概要を連載で掲載する。

◆総務政策局

▼予算の効率的な執行

 道財政は、新型コロナウイルス感染症の影響等によって収支不足が今後も継続する見通しであるなど引き続き厳しい状況にある。

 こうした中、本年度は感染症対策や学習保障のための予算として学校感染症対策等支援事業を計上しているが、この予算は前年度に学校裁量予算として措置した学校教育活動継続支援事業と同様の位置づけであり、引き続き各学校においてコロナ対策経費として効果的・効率的に活用いただくようお願いする。

 また特にお願いしたい点として、皆さんも承知のとおり世界的なエネルギー事情の悪化によって燃油価格やそれに関連する電気料金等が著しく高騰しており、この先も早期の改善が見通せない状況にある。

 本年度は学校運営費のうち維持基本経費について、全体として前年度比で微増としているが、燃料関連経費の価格高騰に対応できるかどうかは難しい状況となっている。

 このため各学校においては、教育活動に影響が出ない範囲で可能な限り節電等に取り組んでいただくようお願いする。

 例えば、無人の教室や部活動終了後の照明の点灯、職員帰宅後のパソコン・プリンター等の主電源の放置、執務室内で個々に電熱器具を使用しているなど、職員や生徒一人ひとりが少しずつ気を付けることによって、学校という大きな規模の建物においては年間ベースでかなりの節減が期待できることからそうした点に十分留意してもらうよう本年度は特にお願いする。

 また、校舎が古くエネルギー効率の良くない学校などでは、そうした努力をしてもなお配分額が不足するケースもあり得ると思うが、そうした際には、こちらとしても必要な経費支援を考慮するので早めに相談していただくようお願いする。

▼財務会計事務の適正執行

 財務会計事務の執行については監査等での指導・指摘や金銭事故発生の際、その都度指導通知等を通じて適正執行をお願いしているが、こうした中、前年度の道監査で授業料の徴収事務に関し数多くの指摘を受けた。

 具体的には、就学支援金の制度導入以降事務の取扱自体が減ってきている高校授業料について、口座振替が不能となった場合や就学支援金の支給対象外となった場合などには授業料徴収等について適切な措置を講じる必要があるが、こうした手続きを行っていないケースが散見されている。

 今回の道監査では、納入通知など必要な手続きを行わず授業料に未納を生じさせているものが道立学校全体で45人分、約360万円、また既に授業料を納入した者が就学支援金の支給対象となった場合には徴収済みの授業料を還付する必要があるが、収入状況の確認等を怠ったことによって還付が行われていないものが10人分、約30万円の指摘を受けた。

 こうした手続き漏れの原因として、担当者が事務処理を怠るという状況がある訳だが、一方で内部けん制が十分に機能していれば防ぐことが可能であったとも言える。

 前年度は幸いにも財務会計上の事務処理違反等で懲戒処分となる大きな事故は発生しなかったが、金銭事故や生徒・保護者の納付金等に多大な影響を及ぼすような事故が発生した場合、各学校の財務会計の責任者でもある校長の責任は、極めて重大になる。

 各校長におかれては、公費・私費に関わらず財務会計の責任者として、必ず決定書の内容を確認した上で決裁を執行するとともに、財務会計上の事務処理違反等が発生することのないよう継続的に職員への指導や内部けん制状況を確認していただくようよろしくお願いする。

▼教職員の不祥事防止

 法令順守や服務規律の確保については、これまでも機会あるごとに所属職員への指導を徹底するようお願いしてきたが、3年度においては道立学校教職員の懲戒処分件数が前年度の18件から25件へと増加しており、依然として不祥事の根絶にはほど遠い状況にある。

 中でも、処分量定が重くなった事例として、

・女子生徒へのわいせつ行為による免職が2件

・同僚職員等へのセクハラによる停職または減給が2件

・コンビニで雑誌等を窃取したことによる免職が1件

 など、児童生徒や保護者、ひいては道民の信頼を損なう悪質な事案が発生している。

 各校長におかれては、自校職員への指導に当たり、未だ後を絶たないわいせつ事案に関しては、先日周知した学校におけるわいせつ事故防止方策に留意の上、校内での会議や職員との面談など様々な機会を通して繰り返し指導するとともに、所属職員の不祥事は校長の管理監督責任が問われることを念頭に置き、服務規律の確保に万全を期していただくようお願いする。

 私ども道教委においても、先般数多く報道され議会でも多大な批判を受けたが、道立施設の指定管理者の公募・選定に関わり、本庁の管理職員による不正行為があったことが明らかとなり、現時点でも第三者調査委員会において事案の解明に向けた調査が続けられているが、こうした事案が発生したことへの自戒を込めて道教委・道立学校全体で、不祥事の根絶に向けて取り組んでいきたいと考えているのでよろしくお願いする。

▼道立学校の施設整備

 まず校舎や体育施設の大規模改造工事だが、高校については校舎のみを対象とする学校が6校、体育施設のみを対象とする学校が1校、校舎と体育施設を対象とする学校が4校であり、特別支援学校については、校舎のみを対象とする学校が4校となっている。

 その他、各事業の実施においては学校運営に支障が生じることがないよう努めることとしているが、関係の校長においては授業・行事等の予定と工事日程の調整や工事箇所への生徒の立入防止の注意喚起など工事が円滑に進むよう協力をお願いする。

▼学校施設の安全管理

 近年、台風や大雪などの自然災害に伴う学校施設への被害が数多く発生している。

 その多くはやむを得ない被害ではあるが、少しでも被害を低減するためには施設設備の定期点検が非常に重要となる。

 ご存じと思うが、建築基準法および道教委保全規程では、学校施設の機能を維持するため有資格者による定期点検を実施することが規定されているので、各学校においては年1回の点検を確実に実施するようよろしくお願いする。

 また、災害が発生した際には、災害前後の安全確認、とりわけ災害後の被害状況等の確認を徹底してもらうとともに、被害が生じた場合は速やかに連絡をもらうようお願いする。

◆生涯学習推進局

▼ネイパルの利用

 1点目は、道立青少年体験活動支援施設ネイパルの利用について。

 ネイパルの指定管理者公募にかかる不正行為に伴い、学校関係者の皆様や道民の皆さんの信用を損うこととなり心からお詫び申し上げる。今後は信頼回復に努め、安心して利用いただけるよう、魅力ある施設づくりを目指して取り組んでいく。

 さて、ネイパルでは新型コロナウィルスの感染拡大を防止するため、これまで宿泊利用定員を半数程度としていたが、通常の200人として運用を始めた。

 また、縄文やアイヌ文化など地域の特色あるプログラム、防災や新たな水上スポーツなど新たなプログラムの開発にも力を入れているので、ぜひ宿泊研修等での利用について検討いただくようお願いする。

▼北海道CLASSプロジェクト

 つぎに、北海道CLASSプロジェクト、地学協働活動推進実証事業について。

 この事業は、高校と自治体や産業界をつなぐため、地域をよく知るコーディネーターの配置や、コンソーシアムを設置することによって、地域との連携・協働体制の中で探究型学習の充実を図りながら、地域ならではの新しい価値を創造し、地域を支える人材の育成や地方創生の実現を目指すもので、2年目となる。

 今は研究指定校を中心に取り組んでいるが、将来的には道内全域で持続可能な地域社会を築いていくための連携・協働体制づくりを目指している。

 その実現に向け、教育局の高校教育指導班とともに社会教育指導班が学校を訪問するなど、人材の発掘や協働プロセスの支援をさせていただくので、困り事があったら遠慮なく教育局まで連絡いただきたい。

▼世界遺産を活用した次世代育成事業

 3点目は、縄文時代に学ぶ・世界遺産を活用した次世代育成事業について。

 北海道・北東北の縄文遺跡群をはじめとした縄文文化について、昨年、北海道で初めて世界文化遺産に登録されたことを契機に子どもたちの興味・関心を高めたいと考えている。

 具体的には、全道の小・中・高校合わせて16校を想定し、文化財・博物館課で作成した土器や石器などを観察するための3Dモデルを活用して出前授業を実施し、その中で教員の皆様から意見をいただきながら授業メニューを作成する予定である。協力をお願いする。

▼道立美術館オンラインアート教室

 最後に、道立美術館オンラインアート教室について。

 本年度、これまで実施していた道立美術館出張アート教室事業の一部をオンラインアート教室として試行的に実施することとした。

 具体的には道立美術館と学校をオンラインでつなぎ、美術作品にふれる機会の少ない地域において鑑賞機会の充実や美術作品への理解を深めるため、学芸員が子どもたちに分かりやすく鑑賞の手ほどきや美術作品に関する解説を行う。

 芸術文化によって子どもたちの豊かな創造性や情操を育むためにも、ぜひ検討いただきたい。

◆教職員局

▼教職員の人材育成・管理職の育成

 はじめに、教職員の人材育成、管理職の育成について。

 近年、教頭昇任候補者選考の受検者数が減少しており、特に高校における教頭候補者の確保が危機的な状況になっている。

 前年度、関係課や高校長協会、教頭・副校長会をメンバーとするプロジェクト会議を設置し、行動指針を策定した。本年度においても行動指針に基づき、教頭昇任候補者の受検予定リストの精査や管理職に対するアンケート調査の実施、石狩管内を中心とした各校長との意見交換など「教頭の魅力化」「人材育成」を2本柱として取組を進める予定である。

 このほか、本年度は札幌市内の教頭候補者の育成をミッションとした再任用校長を配置しており、今後も教頭候補者の人材育成に有効と考えられる手立てを積極的に進めていきたいと考えている。

 また、女性の管理職登用についてであるが、3年3月に女性活躍推進法に基づく特定事業主行動計画(第2期)を策定し、7年度までに管理職員に占める女性教職員の割合を引き続き15%にすることを目標としている。

 4年4月1日現在の割合は高校が4・6%、特別支援学校が15・8%となっており、目標数値を下回っている状況である。

 国が示している目標は道が示している目標よりも高いものとなっており、15%にとどまらず、20%、25%を目指していきたいと考えている。

 管理職の育成・登用に向けた意識の醸成には、意欲のある男性職員、女性職員を早い段階から学校目標の達成や課題解決に向けた実践に参画させ、中核となって実践できる力量を身に付けさせることが重要である。

 管理職候補者の育成は道教委としても取組を進めているところであるが、校長の力添えによるところも大変大きいものであると考えているので、引き続き尽力いただくようお願いする。

▼定年引き上げ

 続いて、定年引き上げについて。地方公務員法の改正によって5年度から定年年齢が段階的に65歳に引き上げられたことに伴い、本年度中に道職員等の定年等に関する条例などを改正する予定である。

 当該条例は、知事部局職員や道教委事務局職員、学校職員を含めた1本の条例であることから、条例を所管する知事部局と改正内容に関する協議を進めていくが、具体的な内容を示すことができる状況になったら皆さんに情報提供していきたいと考えている。

▼学校における働き方改革

 つぎに、学校における働き方改革について。

▽アクション・プラン(第2期)に基づく取組の推進

 本年度はアクション・プラン(第2期)の2年目、中間年となる。5年度までの目標の達成に向けて引き続き各種取組を進めている。

 特に、人材確保のためにも教頭が本来期待される業務に専念できる環境を整備することは大変重要であると考えており、今後も校長会等と意見交換を行いながら教頭の業務負担軽減に向けた取組を進めていくので、理解と協力、とりわけ各学校での校長からのサジェッションやサポート、伴走的な支援をお願いする。

 また、働き方改革を進めるためには、校長のリーダーシップが何より大切である。各学校においては「学校における働き方改革は学校運営そのものである」という理解のもと、真に必要な教育活動に注力するため、コアチーム、チェックリストの活用に加え、3月に道教委ホームページに公開した働き方改革アイデア・バンクや2月に改訂された文部科学省作成の働き方改革事例集の好事例を業務改善の参考にしていただくなど、さらなる取組の推進をお願いする。

▽在校等時間の適正な計測・記録

 在校等時間について、職員の健康管理や働き方改革を進める上で正確に勤務の実態を把握することが大切である。

 引き続き、職員に対し出退勤管理システムを活用し、勤務の実態を正しく計測するよう指導願う。

 時間外在校等時間については、四半期ごとに月別の推移などを公表している。時間外在校等時間が多い学校については、本庁職員が学校訪問し、学校の現状や取組状況を伺いながら一緒に検討していきたいと考えている。

▽部活動の在り方に関する方針等

 部活動については道の方針に基づき、活動時間は1週間で長くとも11時間程度、高校の弾力的な設定等の特例において長くとも16時間程度と示している。

 生徒がバランスのとれた生活を送り、多様な経験ができるよう方針の順守をお願いする。

 なお、大会前の特例などで休業日に4時間程度の指導をした教員に対しては、週休日の振替など勤務時間を調整する制度などを活用して適切に対応するようお願いする。

▼過重労働による健康障害防止対策取扱要領の改正

 つぎに、過重労働による健康障害防止対策取扱要領の改正についてであるが、これまで直近1ヵ月の従事時間が100時間を超えた者などに対しては、職員からの申出の有無に関わらず医師の面接指導を実施するよう通知でお願いしていたが、今回これを取扱要領に盛り込む改正し、3月31日付で各学校に通知しているので適切に対応願う。

 今回の改正では、他にも①持ち帰り業務は本取扱要領では従事時間に含むこと②産業医の面接指導は情報通信機器を用いて行うことができる―などの改正をしている。

 また、持ち帰り業務の把握については、これまで職員から紙様式で報告を受けていたが、本年度からはグーグルフォームを活用することにしたので、職員への周知をあらためてお願いする。

 職員の過重労働による健康障害防止対策は働き方改革とも連動する重要な対策であるので、対応についてよろしくお願いする。

▼学校敷地内喫煙

 学校敷地内喫煙については、健康増進法が改正され、学校敷地内においては元年7月より原則、喫煙が禁止されており、道教委においても児童生徒の健康に悪影響を及ぼす受動喫煙を生じさせないこと、教職員が学校で喫煙することの児童生徒への教育的影響を考慮し、道立学校全校を学校敷地内禁煙としている。

 しかしながら、依然として一般道民や同僚職員から敷地内喫煙について指摘する声が寄せられ、事実確認をしたところ実際に教職員が敷地内で喫煙をしていたことが判明した例もあった。

 各学校長においては、あらためて職員の学校敷地内禁煙について徹底をお願いする。

◆学校教育局道立学校配置・制度担当

 本年度の機構改正によって、高校と特別支援学校の配置計画や高校の修学支援などを所管することとなった。

 各校長には、配置計画の策定や修学支援にかかる業務に関し、引き続きの理解、協力をお願いする。

▼高校配置計画

 本年度は、新たに7年度の計画を策定。例年同様、6月上旬に計画案を示し、9月上旬に成案とする予定。

 7年度以降も中卒者数は全道で減少傾向にあり、7年度は928人、8年度から11年度にかけても2167人と大きく減少。今後とも都市部での再編を含めた定員調整を検討せざるを得ない状況。

 地域の実情に関する情報提供や定員調整に当たっての教育課程の工夫等の検討などについて、よろしくお願いしたい。

▼特別支援学校配置計画

 本年度は5年度の計画を策定することになるが、現在、中学校の特別支援学級の在籍者数や入選での出願率などを分析しながら検討を進めている。

 高校の配置計画と同様に6月上旬に計画案を示し、9月上旬に成案とする予定。

▼高校生の修学支援

 就学支援金、奨学給付金などの修学支援制度については、その内容や問い合わせ先を生徒・保護者に確実に周知するとともに、相談に対しても丁寧な対応をお願いする。

 特に、新型コロナウイルス感染症の影響等によって年度途中に家計が急変した世帯に対しては、授業料免除や奨学給付金の支給などが考えられるので、必要な支援に確実につなげることができるよう生徒個々の家庭の状況などにも目配りいただくなど、きめ細かな対応をよろしくお願いする。

 なお、本年も保護者や生徒が、各種修学支援制度について分かりやすく知ることができるリーフレットを作成し、各学校に送付しているので、保護者等に配布するなどして活用いただきたい。

この記事の他の写真

生涯学習推進局長・山上和弘
山上和弘局長
教職員局伊賀治康
伊賀治康局長
道立学校配置・制度担当局長谷垣朗
谷垣朗局長

(道・道教委 2022-05-26付)

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