道議会質疑 一般質問(3月10日)
(道議会 2022-08-17付)

【Q 質問Question A 答弁Answer P 指摘Point out O 意見Opinion D 要望Demand】

【質問者】

▼清水拓也議員(自民党・道民会議)

▼白川祥二議員(北海道結志会)

▼志賀谷隆議員(公明党)

【答弁者】

▼鈴木直道知事

▼倉本博史教育長

=役職等は当時=

◆医ケア児支援

Q清水議員 医療的ケア児に対する支援について伺う。先日の佐々木大介議員の質問にもあったが、医療的ケア児は、この10年で2倍、全国で約2万人とのことであり、北海道においても、直近のデータで約700人と、全国同様、増加傾向にある。

 また、一口にケア児と言っても、人工呼吸器の管理など、14の医療的ケアを受ける子どもたちのことであり、その子に合った相談対応、オーダーメードの支援が必要であるが、相談事例が少ない、あるいは、過去にない市町村では、窓口対応ができず、相談できないといった声が家族から寄せられる。制度や体制が実態に追い付いていない、こういう現実がある。

 広い道内のどの地域に住んでいても相談体制を確保していくことが重要である。道では、地域での相談体制の確保についてどのように取組を行ってきたのか、また、その課題についてどう認識しているのか伺う。

 昨年12月に、医療的ケア児の家族会であるチームどさんこが発足したが、その代表の方と先日会う機会があった。

 話を聞く中であらためて感じたが、ケア児の親同士が顔を合わせ、語り合うことの重要性はもちろんのこと、今の時代、家族の会は、SNSで道内はもとより、広く全国で居住地に関係なくつながりがあり、まさに相談体制の一翼を担う活動をしている。

 今後、こうした団体としっかり連携し、地域における相談体制の充実に結び付けていくことも重要と考えるが認識を伺う。

 続いて、受入体制の促進についても伺う。家族の会からは、医療的ケアを必要とするお子さんが、保育所を利用したくても、地域の保育所では受入体制が整っておらず、利用できないとの切実な声を聞く。

 医療的ケア児の受け入れを可能とするための体制として、保育所や認定こども園の設置者などは、看護師、または、喀たん吸引などを行うことのできる保育士の配置などが求められる。

 地域での受入体制を整備し、保育を希望する保護者の意向に沿った形で医療的ケア児の心身の状況に応じた適切な支援が受けられるようにすることが重要である。

 ところが、現実には、前年度、受け入れを行っているのは13市町村にとどまっている状況にある。

 道としてこの現状をどう認識しているのか、今後の取組について伺う。

 また、学校においても同じ傾向にあると考えるが、昨年の法の施行を受け、今後どのように体制を整えていくのか、教育長に伺う。

A鈴木知事 医療的ケア児への支援に関し、まず、地域における相談対応等への支援について。

 道では、医療的ケアが必要な子どもたちやその家族に対し、適切に支援を講じていくため、相談対応など、総合的なサポートを行う医療的ケア児等コーディネーターの養成のほか、障がい保健福祉圏域に設置している協議の場を通じて、市町村に対し、相談・支援機能の整備を働きかけてきたところである。

 こうした中、地域によっては、コーディネーターなど、支援に携わる職員が未配置であることや相談対応のスキルなどにも差があるなど、体制の充実に向けてさらなる取組が必要と認識している。

 今後は、これまでの取組に加え、新たに設置する医療的ケア児支援センターによる支援を行うとともに、地域において相談や情報交換などの活動に取り組む当事者団体の方にも、北海道障がい者施策推進審議会医療的ケア児支援部会に参画いただき、実効ある支援策の検討を進めていくほか、市町村に対し、コーディネーターの積極的な配置や当事者団体の方々などとの効果的な連携を働きかけるなど、地域における相談体制の一層の充実に努めていく。

 つぎに、保育所での受け入れについてであるが、いわゆる医療的ケア児支援法の施行によって、保育所の設置者の方には医療的ケア児に適切な支援を行うことが責務とされたことから、今後、道内各地域において受入体制を整備していくことが重要である。

 道では、これまで、医療的ケア児の状況を毎年調査するとともに、保育士の方が喀たん吸引を行うための研修経費などを助成してきており、実施市町村数も徐々に増加してきているが、ケアを受けながら保育を希望する子どもの数が年度ごとに変動することや、保育所に配置する看護師等の確保が難しいなどの課題もあると認識をしているところである。

 道としては、新年度開設する医療的ケア児支援センターにおいて、地域で実践されている好事例や受け入れ可能な保育所の情報を集約し、市町村や保護者の方々に活用いただくほか、現場の方々から意見を伺い、制度のさらなる改善を国に要望しながら支援の充実を図り、医療的なケアを必要とする子どもとその家族の日常生活を社会全体で支える環境づくりを進めていく。

A倉本教育長 小・中学校での医療的ケア児の受入体制について。道内の公立小・中学校では、概ね児童生徒の実情に応じて看護師が配置されているものの、一部の市町においては、未配置であったり、配置されていても短時間勤務であるケースも見られるなど、受入体制が必ずしも十分でない状況にある。

 このため、道教委では、特別支援学校でのノウハウを生かして、小・中学校に在籍している医療的ケア児への適切な対応や体制づくりについて、市町村教育委員会や学校に対する指導助言に努めるとともに、今後は、市町村教育委員会の職員を対象とした研修会を開催し、医療的ケア児支援法の趣旨等の理解を図った上で、該当する市町村に対し、国の事業の活用による看護師の配置を働きかけるほか、知事部局とも連携しながら、保健、医療、福祉などの関係機関で構成する検討会議を設置し、受け入れに係る課題や対応方向等を整理するなど、医療的ケア児の自立と社会参加の促進に向けて、小・中学校における受入体制の充実に努めていく。

◆新スポーツ振興の施策

Q清水議員 新たなスポーツの振興施策について伺う。昨年開催された東京2020オリンピック・パラリンピックや現在開催中の北京2022オリンピック・パラリンピックでは、多くのどさんこ選手の活躍があり、選手一人ひとりの躍動する姿が、道民に勇気と感動、希望を与えてくれた。

 そのような中、本定例会では、超党派による北海道スポーツ推進条例案が提出された。また、国においては、4年度を始期とする第3期スポーツ基本計画の検討作業が本格化してきており、スポーツによる地域の活性化など、スポーツ振興を進めていくといった機運はますます高まっていると感じる。

 さらに、札幌市においては、2030年冬季オリパラ招致実現を目指して、機運醸成に取り組んでいるところでもある。

 一方で私は競技スポーツではないが、介護予防運動やウオーキングなど、無理なく、空いた時間に運動することも重要だと考えるが、適度な運動を通じて健康で明るい生活を維持しようと、日常的に体を動かす元気なシニア層が急速に増加している。

 まさに今こそ、スポーツを身近に感じてもらい、加えて本道スポーツのさらなる発展、振興を全道一丸となって推し進めていく絶好のチャンスと考える。

 体育会系でスポーツマンでもある鈴木知事は、今後、本道のスポーツ振興にどのように取り組んでいくのか、所見を伺う。

A鈴木知事 新たなスポーツ振興施策について。東京2020オリンピック・パラリンピックや北京で開催されている冬季大会では、どさんこ選手を含む日本選手の方々が大活躍され、スポーツの力が日本中に勇気と感動と希望を与えてくれた。

 道民のスポーツへの関心が高まる中、本定例会に、道議会全会派共同によって、北海道スポーツ振興条例案が提出されているところである。

 また、現在、国においても、多様な主体が参加できるスポーツ機会の創出やスポーツを通じた国際交流など、これまで以上にスポーツの多様性や可能性が社会の活性化に寄与することができるよう、スポーツ基本計画の見直しが進められている。

 道としては、こうした動きに的確に対応し、行政だけではなく、経済界、教育機関、プロスポーツチームなど、オール北海道による新たな官民連携組織づくりを進めるとともに、私自らも先頭に立ち、一過性ではなく長期的な視点を持って、スポーツを通じた人づくりや地域づくり、さらには、誰もがスポーツに親しむことができる環境づくりを進めるなど、本道スポーツの一層の振興に取り組んでいく。

◆教育予算確保

Q白川議員 教育予算の確保についてであるが、私は、先の決算特別委員会において、道内の農業高校の今後の可能性、魅力の向上による道内外からの人材確保について質疑した。

 北海道の未来を見据えて、基幹産業である農業の礎となる農業高校を通じて、地域や社会の健全で持続的な発展を担う人材の育成につながると考えているからである。

 これは当然、農業だけに限ったものではなく、広域分散型の本道では、各地域において必要となる資質・能力を備えた人材を育成する必要があり、その要となるのが道立高校であると思う。

 昨今では、Society5・0などによる産業構造の変化やICT技術の進展による社会システムや働き方などが急激に変化しており、教育内容も時代に対応していかなくてはならない状況であるが、道立高校を含む教育予算は年々減少している状況である。

 例えば、農業高校において、GAPなどの取得費用、スマート農業やみどりの食料システム戦略に対応した施設などの整備費用、老朽化した校舎や魅力ある現代社会に見合った寮にするための改築費などが課題となっている。農業高校以外の高校でも、それぞれ同様の状況かと思う。

 厳しい道財政の状況ではあるが、北海道の未来を見据え、今こそ教育への積極的な投資が必要ではないか、知事の認識を伺う。

A鈴木知事 教育施策の推進について。人口減少やグローバル化が一層進展する中、地域を支える産業の安定的な発展に向け、担い手の育成が課題となっており、将来を担う子どもたちの可能性を引き出す教育の役割は重要であると考えている。

 このため、4年度予算案では、新たに、ICTの安定的な活用に向けた支援体制の構築や、部活動の地域移行による教職員の負担軽減などに取り組むとともに、本道の基幹産業である農業人材の育成に向けては、学校と産業界が連携して進める職業教育等の予算を拡充するほか、農業予算においても、農業高校における出前授業や農業大学校での実践的な研修教育などに取り組むこととしているところである。

 私としては、子どもたちが産業構造の変化や技術の進展などに対応し、新しい時代の北海道創生を担えるよう、道教委と議論を重ね、必要な予算を確保するとともに、市町村や地場産業の方々との協働による学びの充実を促すなど、北海道の特性を生かした教育、人づくりを一層推進していく。

◆教員不足対策

Q白川議員 教員不足についてであるが、調査によると、予定どおりの教員配置ができなかった公立の小中高と特別支援学校は、昨年5月1日時点で全体の約5%に当たる1591校あり、計2065人の欠員が出ている。

 これまでも、各教育委員会は、採用試験の年齢制限を外したり、音楽や体育の実技試験をやめたり、文科省も学習指導などに協力してくれる退職者や塾講師らを登録する人材バンクを設置したりしているが、こうした施策だけでは到底切り抜けられる話ではない。

 不要な事務作業の削減や行事の大胆な見直し、免許を持たない社会人でも教壇に立てる特別免許状制度を活用した外部人材の着実な登用や、部活動の指導者の受け入れをはじめとする地域との連携強化といった視点も重要である。

 長時間労働と教員の成り手不足という負の連鎖をどのように断ち切り、教育の充実強化を図っていくのか、教育長の所見を伺う。

A倉本教育長 教員の確保対策について。教員の確保は、学校教育の維持向上を図る上で大変に重要であり、受検しやすい教員採用選考検査の環境の整備や教職の魅力の効果的な発信はもとより、教職員の長時間勤務の改善などが不可欠と考えている。

 このため、道教委では、働き方改革のアクション・プランに基づき、本庁各課が来年度予定している調査を見直して1割以上削減するとともに、スクール・サポート・スタッフや部活動指導員に加え、本年度から、学校に対し弁護士が助言を行うスクールロイヤーを配置するほか、ウィズコロナの中で指導計画を変更した教育活動のうち、内容の精選や見直しが改善につながった事例を普及するなど、学校への支援の充実に取り組むこととしており、今後とも、特別免許状をはじめとする教員免許制度の有効な活用も含め、積極的に対策を講じながら、全庁一丸となって優秀な教員の確保と子どもたちの学習環境の充実に取り組んでいく。

◆世界文化遺産の縄文遺跡群

Q志賀谷議員 縄文世界文化遺産について。昨年7月に、道民の悲願である、北海道・北東北の縄文遺跡群の本道初となる世界文化遺産への登録が実現した。

 道と北東北3県、関係自治体で構成する縄文遺跡群世界遺産登録推進本部や、道議会議員連盟、経済界や学識者等による北の縄文道民会議など、官民が連携した長期にわたる積極的な取組が実を結んだことによって、本道にとって歴史的な瞬間を迎えることができたものであり、大変うれしく思うところである。

 新型コロナウイルス感染症の影響によって、縄文遺跡群への来訪者の大幅な増加を見込むことは、現在難しい状況が続いているものの、地元自治体や地域の活動団体などにおいては、ポストコロナも見据え、縄文の魅力の発信や来訪者の受入体制の充実などに向けた取組が進められているものと承知している。

 世界に認められた縄文遺跡群の価値を積極的に活用し、地域のにぎわいを創出していくためには、道として、情報発信や人材育成などを図る拠点機能の整備に向けた検討を進めていくべきと考えるが、知事の考えを伺いたい。

A鈴木知事 縄文世界文化遺産について。道と北東北3県においては、縄文遺跡群を保存継承するため、資産の包括的な保存や管理、調査研究や情報発信などを担う拠点機能の整備について検討するとしているところである。

 また、昨年12月には、遺跡群の保存と活用に関する情報共有や課題解決を図るため、道と関係市町や民間事業者などを構成員とする北の縄文官民連携プラットフォームを設置したほか、道としても、国内の事例も参考にしながら、受入体制の充実や情報発信などに取り組むための機能の在り方についても検討していく。

 道としては、今後とも、世界の宝として認められた縄文が、地域の誇りとなり、新たな活力につながるよう、北東北3県はもとより、関係市町や地域で活動されている皆さまと緊密に連携しながら積極的に取り組んでいく。

(道議会 2022-08-17付)

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