道議会質疑 予算特別委員会(3月18日)
(道議会 2022-08-25付)

【Q 質問Question A 答弁Answer P 指摘Point out O 意見Opinion D 要望Demand】

【質問者】

▼宮崎アカネ委員(民主・道民連合)

▼千葉英也委員(自民党・道民会議)

【答弁者】

▼倉本博史教育長

▼池野敦教育部長

▼鈴木淳学校教育監

▼唐川智幸学校教育局長兼ICT教育推進局長

▼川端雄一特別支援教育担当局長

▼髙見里佳文化財・博物館課長

▼柴田亨高校教育課長兼ICT教育推進課長

▼行徳義朗義務教育課長

▼金田敦史特別支援教育課長

=役職等は当時=

◆院内学級

Q宮崎委員 病気などによって学校へ通学することが難しい子どもたちの教育の機会をどのように確保しているのか伺う。

A金田特別支援教育課長 道教委では現在、病気によって学校へ通学することが困難な児童生徒のために、医療機関等に隣接した特別支援学校を設置し、教育環境の整備を行うほか、入院先の医療機関や福祉施設等に特別支援学校の教員が出向いて、児童生徒の実態に応じてきめ細かに指導する訪問教育を行うなど、入院前の原籍校に通学できない状況においても学習を継続できるよう、教育機会の確保に努めている。

Q宮崎委員 道内の医療機関に隣接している特別支援学校において、どのような教育を行っているか伺う。

A金田特別支援教育課長 道立特別支援学校のうち、主に肢体不自由や病弱の児童生徒を対象に医療機関に隣接して設置されている学校は、手稲養護学校など3校であり、当該医療機関に入院している児童生徒等が、個々の病状や障がいの程度に応じ、治療やリハビリなどを受けながら学ぶことができる環境を整えている。

 日常の教育活動では、同学年または近接学年による集団での学習場面を確保しつつ、原籍校の授業の進度や習得状況に合わせた個別の学習を組み合わせるなど、一人ひとりの病状等に十分配慮した指導内容により、学ぶ喜びや分かる楽しさを実感できる授業が行われている。

Q宮崎委員 教員が医療機関や福祉施設等に出向く訪問教育については、どのように教育を行っているのか伺う。

A金田特別支援教育課長 本道では、67校の道立特別支援学校のうち、主に肢体不自由や知的障がいの障がい種を対象とする12校において、医療機関や福祉施設に入院、入所している児童生徒に対し教員を派遣する訪問教育を昭和54年から実施している。

 訪問教育は、原則として週3回、1回当たり2時間で、年間指導時数は210時間を標準とし、個々の児童生徒の病状等を踏まえ、弾力的に教育課程を編成し、学習内容や指導方法を工夫するなど、保護者や医療機関、福祉施設等の関係職員とも協力を図りながら、一人ひとりに寄り添ったきめ細かな指導の充実に努めている。

Q宮崎委員 入院中の子どもたちに対して、様々な方法で教育の機会を保障している現状だが、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、通常の面会や立ち入りを禁止している医療機関や福祉施設では、訪問教育を行う教員の立ち入りも禁止している場合もあると聞いている。

 そこで、訪問教育を行っている医療機関や福祉施設等において、感染拡大防止等のために教員が訪問できない場合における教育機会の保障に関する現状と課題について伺う。

A川端特別支援教育担当局長 新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、各学校では、感染対策に十分配慮しながら訪問教育を実施しているものの、保護者からの感染不安等もあることから、教員が直接訪問できない場合には、授業動画の配信や学習プリントの配布を行うほか、GIGAスクール構想による1人1台端末を活用し、学校と病室を遠隔システムでつなぎ、双方向によるオンライン学習に取り組むなど、一人ひとりの学びを保障していくよう教育機会の確保に努めている。

 こうした中、訪問教育におけるICTを活用した遠隔授業の実施に伴い、病室内での通信機器の使用の制限やオンライン授業のスキルの向上など、新たな課題も見られる。今後、道教委としては、保健福祉部局と連携し、課題の解消のために医療機関等と協議を行うとともに、ICTの活用も含めた訪問教育の専門性の向上に向けた研修会の開催など、平常時から緊急時に移行しても円滑に訪問教育を継続できるよう、体制づくりに努めていく。

D宮崎委員 医療機関等におけるワイファイ等のネットワーク環境も含めたインフラ整備と共に、教員や職員のICT活用能力の向上も必要と考える。引き続き、入院している子どもたちの教育機会が確保されるよう、保健福祉部をはじめとした関係機関と連携した取組をお願いする。

 また、先ほど、医療機関に隣接して設置されている学校は3校と伺った。道内は広く、旭川では半年待ちの状態。医療機関に隣接して設置される学校を増やしていくことも課題で、特別支援学級の教職員の不足も大きな課題と言える。併せて取組をお願いしたい。

Q宮崎委員 本道では、小・中学校が訪問教育を実施している例は少ないと聞いている。特別支援学校へ転学しなければならない実態にあると承知している。

 近年は、入院が短期化、頻回化しており、転学による様々な負担や退院後の友人関係への不安を感じさせないためには、特別支援学校へ転学しなくても、原籍校の友達と一緒に学べるような環境を整えることも重要と考える。

 今後、病気療養中の子どもたちに対する教育の充実を図るためには、国に病弱教育に関する支援の充実等を要望したり、小・中学校と特別支援学校が十分に連携したりしていくことが必要と考える。所見を伺う。

A鈴木学校教育監 病気療養児の一人ひとりが、入院先においても学びの場が確保され、原籍校の児童生徒とのつながりを継続することは、心理的な安定をもたらし、健康回復への意欲を育むことなどにもつながるものの、医療機関が点在する広域分散型の本道においては、やむを得ず、訪問教育を実施する特別支援学校等に転学しなければならないケースもある。

 このため、道教委としては、入院期間の短期化や入退院を繰り返すなどの傾向に対応した教育の改善に向けて、原籍校と医療機関とをつないだ遠隔授業の実施など、教育の機会を可能な限り提供するよう市町村教委に働きかけるとともに、原籍校に在籍したままでの適切な教育措置の確保などについて、他県の実情なども参考にしながら研究するほか、引き続き、全国教委連等と連携して、訪問教育等に関する支援策の充実について国に要望するなど、病気療養児に対する教育環境の整備に努めていく。

◆金融教育

Q宮崎委員 4年度から、学習指導要領の改訂によって、金融商品による資産形成という内容が学校教育に盛り込まれた。

 新しい学習指導要領が実施され、高校の授業におけるライフプランに基づいた金融教育の概要や実施される背景について伺う。

A柴田高校教育課長兼ICT教育推進課長 ことし4月から学年進行によって実施される学習指導要領では、民法改正によって成年年齢が18歳に引き下げられることを踏まえ、生徒が自主的かつ合理的に社会の一員として行動する自立した消費者となるよう、全ての生徒が履修する家庭科において、「持続可能な消費生活・環境」の学習内容が新たに位置付けられている。

 具体的には、家計管理について理解することや、生涯を見通した生活における経済の管理および計画の重要性について考察することとなっており、預貯金、民間保険、株式、投資信託等の基本的な金融商品の特徴や資産形成の視点にも触れるなど、実践的、体験的な学習活動を通して、消費者、市民社会の担い手として、自覚を持った責任ある行動ができることが求められている。

P宮崎委員 成年年齢の引き下げによって、18歳、19歳の方は、親の同意を得なくても様々な契約をすることができるようになる。例えば、携帯電話を購入する、1人暮らしのためのアパートを借りる、クレジットカードを作成する、ローンを組んで自動車を購入するといったことができるようになる。

 今までは、未成年者が親の同意を得ず契約した場合は、原則、契約を取り消すことができた。未成年者の取消権は、未成年者を保護するためでもあり、未成年者の消費者被害を阻止する役割を果たしていた。

 これから18歳を迎える成年年齢の場合、自己責任になる恐れがあり、金融犯罪のターゲットになる可能性がある。資産形成と併せて消費者被害についても学んでほしい。

Q宮崎委員 金融教育は、家庭科の授業で取り扱われることになり、今までは、将来のライフスタイルをもとに、家庭生活に必要な生活資金や老後の生活資金の必要性の学びが基礎だったが、これまでの金融に関する学習内容が具体化されることに戸惑う家庭科教員も多いと思う。

 4年度から金融教育を始める上で、これまでどのような準備を進めてきたのか伺う。

A柴田高校教育課長兼ICT教育推進課長 各学校においては、家庭科の教員が道教委が主催する教育課程に関する研究協議会に参加し、外部講師による「保険と資産形成の基礎知識」について講義を受けたり、消費生活センター等が開催する各種セミナー等に参加したりするなど、金融に関する指導の参考となる知識の習得に努めている。

 また、道教委においては、指導主事による学校訪問を通じて、家庭科を担当する教員と教科指導の改善充実に向けた協議や、それに関わる指導助言を行うほか、生徒が自立した消費者となるための権利と責任について理解を深めることができるよう、効果的な実践事例を高校教育課程編成・実施の手引き等に掲載するなど、教員一人ひとりの指導力向上に取り組んでいるところ。

Q宮崎委員 金融教育について、教職員の指導の参考となるまでの知識習得までには、時間がなさ過ぎると認識する。外部講師として名乗りを上げている金融機関も多いと聞いている。金融のプロに授業のサポートを受けることができれば、教職員にとっても心強いと思う。

 外部講師をどのように活用していくのか。また、その際の授業の取り扱いについても伺う。

A柴田高校教育課長兼ICT教育推進課長 金融に関して、投資信託等の専門的な知識を必要とする学習活動においては、必要に応じて、金融機関の専門家などの外部人材を活用することが、生徒の学習指導の充実のため効果的であると認識している。

 このため、外部人材の活用に当たっては、教育課程の編成、実施に関することから、校長の責任のもとで行うことが必要であり、その際、事前学習や事後学習を位置付けた一連の流れで内容の深化を図るなど、計画的に実施されることが大切である。

Q宮崎委員 金融機関によって取り扱っている商品や薦めている商品がそれぞれ違う。子どもたちに伝える上で、教えることにバイアスがかかるのは好ましくない。

 公教育として取り扱う上では中立性が求められる。どのように担保するのか伺う。

A唐川学校教育局長兼ICT教育推進局長 外部人材を授業で活用する際は、公教育の観点から、特定の事柄を強調し過ぎたり、一面的な見解を十分な配慮なく取り上げたりするなど、特定の見方や考え方に偏った内容にならない指導が必要となる。

 そのため、授業に関わる事前の打ち合わせの際に、例えば、外部人材が直接指導する学習内容や担当教員の関わり方、配布資料などについて確認し、指導内容について事前に詳細に協議するなど、教育における中立性を確保することとしている。

Q宮崎委員 このところ、SNSを通じ、悪質な詐欺に誘導するサイトが見受けられる。また、インターネット上には、資産運用に関する情報商材もあふれており、優位性がないものも多い。

 将来の収入への不安から、このようなものに関心を持つ若年層は少なくないのではないか。注意喚起についてどのように取り上げていくのか伺う。

A鈴木学校教育監 グローバル化、情報化などの社会変化や、それに伴う販売や流通の多様化、そして、消費者と事業者の情報量の格差など、消費者に係る問題が顕在化する中、その社会的背景について十分に理解を深めることが重要である。

 各学校においては、消費者被害の未然防止につながるような、悪質商法や多重債務、そして、インターネットを通じた消費者被害などの具体的な事例を取り上げ、生徒が多様な販売方法・商法について理解するとともに、事業者からの情報を過信することなく、まずは批判的に受け止め、慎重に意思決定できるよう指導する必要があると考えている。

Q宮崎委員 子どもたちの金融に関するリテラシーを高めることによって、どのような未来像を描いているのか伺う。

A倉本教育長 高校では、ことし4月から本格実施される学習指導要領に基づき、一人ひとりが新たに自立した生活を営むために必要な生活における経済の計画や、消費生活等との関わりなどに関する理解を深め、生涯を見通した生活設計について考える「持続可能な消費生活・環境」を学ぶこととなっている。

 道教委としては、生徒が、こうした学びを通して、将来にわたり、消費者の権利と責任を自覚して日ごろから行動することや、自立した消費者として自らの意思決定の大切さを常に考えて生活することができるよう、各学校において金融教育の充実に努めていく。

P宮崎委員 ぜひ、全道のどこの地域に住んでいても一定水準で教育が受けられるよう、支援企業の皆さんとの橋渡しを教育長にお願いしたい。

◆北海道・北東北縄文遺跡群

Q千葉委員 3年7月、北海道・北東北の縄文遺跡群が世界遺産に登録された。道内に初めて誕生した世界文化遺産は、本道の文化観光等に新たな分野を開き、今後、地域や経済の振興に役立つことが期待されるが、同時に、北海道の未来を担う子どもたちがふるさとの歴史や文化を理解し、その奥深さに触れ、郷土への愛着を持つ上で大変大きな役割を果たす貴重な教育資源でもある。

 学校教育では、縄文遺跡群などの教育資源を活用したふるさと教育に、これまでどのように取り組んできたのか。

A行徳義務教育課長 本道の子どもたちが、世界遺産に登録された縄文遺跡群をはじめとする全道各地の貴重な教育資源を活用し、自分たちの住む地域の豊かな自然や歴史、産業などについて学ぶことは、ふるさと・北海道への愛着や誇りを育むとともに、地域社会の将来を担う一員としての資質や能力を育成する上で重要と考えている。

 道教委では、平成23年度から指定校が、アイヌの人たちの歴史、文化をはじめとする地域の教育資源を活用した体験学習などに取り組む授業を実施しており、学校の実践をまとめた事例集のウェブサイトへの掲載や交流会の開催などを通して、取組の成果を全道に普及するほか、本道の縄文遺跡群について理解を深めることを目的とした学習資料を校種別に作成し、道内の小・中・高校へ配布するとともに、教育課程編成協議会などの教員研修において情報提供するなどの取組を進めている。

Q千葉委員 4年度予算では、世界遺産を活用した次世代育成に係る事業の経費約650万円が計上されている。事業の概要について伺う。

A髙見文化財・博物館課長 本事業は、本道初の世界文化遺産登録を契機として、子どもたちが学校教育等を通じ、世界遺産や縄文遺跡への理解を深め、その保護や活用、将来への継承に向けた意識の醸成を図るため、当初予算案に計上した。

 道教委では、本事業によって、児童生徒が実際の出土品を見るようにリアルな体験ができる3Dモデルと、それを活用した小中学生、高校生向けの授業メニューを作成するほか、このメニューに加えて、じかに出土品に触れることができる出前授業も実施する予定である。

 さらに、北方民族博物館などの社会教育施設と連携して、展示見学や土器の製作など、学校では実施することが難しい体験授業を実施するとともに、構成資産を持つ4道県の小中学生による世界遺産子どもサミットを開催するなど、縄文文化に対する興味・関心を高める取組を進めていく。

Q千葉委員 世界遺産の構成資産となった道内の遺跡は、石狩、胆振、渡島の各管内に所在している。道内の他地域に住む子どもたちにとっては、直接、遺跡を訪れ、その内容や価値を実感し、体験を通じて世界遺産に親しむことは容易ではない。

 道教委では、世界遺産の教育的効果を全道に波及させるため、学校教育においてどのように取り組む考えなのか伺う。

A髙見文化財・博物館課長 道教委では、世界遺産を直接見る機会の少ない地域の児童生徒にも、縄文文化を身近に感じてもらうことが重要と考え、実物の土器、石器などを持参して、学校への出前授業を実施することによって、現地訪問に近い体験の機会を提供するとともに、新たに作成する出土品の3Dモデルでは、ICT端末上で自由に動かすことができるようにして、実際には触れることが困難な北東北の出土品や、重要文化財の指定を受けた遺物などにも親しんでもらいたいと考えている。

 さらに、この3Dを使用した指導計画の開発を行い、関係機関と連携しながら、積極的な活用について各学校に働きかけるなど、世界遺産を生かした教育の充実を図り、子どもたちの地域への関心を高め、愛着を育むことができるよう取り組んでいく考え。

Q千葉委員 一つの世界遺産の構成としては、北海道以外にも、青森県、秋田県、岩手県にも遺跡がある。本道の子どもたちには、それらの遺跡に対しても興味を持ってもらいたいと考えるが、道教委の見解を伺う。

A髙見文化財・博物館課長 北海道と北東北3県は、縄文時代から活発に人や物の交流が行われ、深いつながりがあったものと考えられており、現在も、教育旅行などの際に、子どもたちが相互の道県の世界遺産を訪れ、遺跡や出土品についてガイドから説明を受けるなどの機会がある。

 道教委としては、さらに交流の活発化を図るため、北海道・北東北の縄文遺跡群に関係する4道県の小中学生が参加し、縄文遺跡群についての学習やそれぞれの地域の保護の取組などについて成果発表を行う世界遺産子どもサミットをオンラインで開催して、参加者が自らの住む地域の縄文遺跡に誇りを持つとともに、いにしえからの交流に思いをはせながら、お互いの地域の縄文遺跡に関する理解がより一層深まるよう取り組んでいく考え。

Q千葉委員 道内には、今回の世界遺産となった遺跡以外にも、多数の遺跡や文化財が存在しており、また、北海道博物館や道立埋蔵文化財センター、北方民族博物館をはじめ、各地に博物館や郷土資料館などが多く設置されている。

 今回の世界遺産への登録を契機として、こうした施設とも連携し、子どもたちが縄文文化への理解を深め、地域の方々と共に保護や活用に関わるなど、地域の歴史や文化に愛着を持って、将来の北海道を担う人材を育んでいく必要があると考える。今後、具体的にどのように取り組むのか伺う。

A池野教育部長 北海道・北東北の縄文遺跡群として世界遺産に登録された6ヵ所の遺跡のほか、道内には、縄文時代の遺跡が約7400ヵ所発見されており、ふるさと教育を進める上では、身近にあるそれらも地域の歴史を実際に体験できる貴重な財産であると認識している。

 このため、道教委としては、指導計画の開発や出前授業などの学校教育における新たな取組によって、子どもたちの縄文文化に対する関心を高めるとともに、世界遺産子どもサミットでは、世界遺産の保護と活用に関し、参加した児童生徒が地域の人と共に自ら取り組んでみたい内容を共同宣言などにして発表することによって、身近な文化財はもとより、地元の資料館などにも目を向け、自主的な活動につなげていきたいと考えている。

 こうした取組を通して、縄文文化をはじめとする多様な文化や歴史、文化財の保護や活用などにも興味を広げ、学びを一層深められるよう、道立施設などでの展示内容などについて積極的な情報発信を行うとともに、4道県での連携や交流の取組を推進しながら、郷土への愛着や誇りを育み、北海道の未来を担っていく人材の育成に取り組んでいく。

◆特別支援学校の教室不足

Q千葉委員 文部科学省がことし3月に発表した、休校中を除く全ての公立特別支援学校1096校を対象に行った公立特別支援学校における教室不足調査の結果について伺う。

 調査は、国が、教室不足の解消に向けて各設置者の取組を支援するため、公立特別支援学校の新増築等の施設整備に対し、優先的に国庫補助を行うことを目的に行っていると承知している。道教委の認識をまず伺う。

A金田特別支援教育課長 特別支援学校における教育環境の整備については、従来、各学校設置者において取組を進めていたが、在籍児童生徒数の増加に伴い、全国的に慢性的な教室不足が続いていることから、文科省において、元年度に引き続き調査を行ったものである。

 文科省では、2年度から6年度までの5年間において、国の財政支援制度の積極的な活用によって、特別支援学校の新設校の設置や校舎の増築等を促すとともに、各都道府県教委による教室不足解消に向けた集中取組計画の策定などを求めており、道教委としても、特別支援学校の教育環境の改善に一層努めなければならないと考えている。

Q千葉委員 道内の公立特別支援学校における教室不足調査の結果では、児童生徒等の増加に伴う一時的な対応をしている教室数が143室となっており、このうち、授業の実施に支障が生じており、今後整備する必要がある教室が100室に上る。

 これまでの教室不足への対応について伺う。

A金田特別支援教育課長 道教委では、在籍児童生徒数の増加に伴い、平成21年度から令和元年度までに、既存施設などを活用して、知的障がいの特別支援学校を13校開校するとともに、既設の14校については、校舎増築等のため改修工事を行った。

 また、文科省によって、既存施設を特別支援学校に活用するための改修事業について、集中取組期間の措置として国庫補助の算定割合が引き上げられたことから、この補助制度を利用して、3年4月に札幌市内や苫小牧市内に空き校舎等を活用して知的障がいの特別支援学校を2校開校し、教室不足の解消に取り組んできたところ。

Q千葉委員 各都道府県において、教室不足の解消に向けて集中的に取り組むための計画として、集中取組計画の策定を国は求めており、道では、計画の策定を終えていると承知している。集中取組計画の内容および進捗状況について伺う。

A川端特別支援教育担当局長 道教委では、2年1月に文科省から通知された「特別支援学校における教室不足の解消について」に基づき、集中取組期間における教室不足の解消に向けて、3年3月に計画を策定したところ。

 本計画では、教室不足の解消に向けて、文科省において策定が見込まれていた特別支援学校の設置基準に基づき、緊急度の高い学校から校舎増築や通学区域を見直しするほか、空き校舎など既存施設を活用した整備を行うなどの基本的な方向性を定め、計画開始の本年度からは、職員が直接、学校を訪問し、施設の状況把握や実情などについての教職員との意見交換を行うなど、集中取組期間である6年度までに、改修の優先度等の考え方を整理した上で、計画の実現に向けて検討していく。

Q千葉委員 教室不足調査の結果では、6年度までに解消が計画されている教室の数が2室としているが、他都府県と比べると、その数は不足教室数からいっても少ないと言わざるを得ない。

 授業環境の改善を早期に図る必要があると考えるが、今後の教室不足解消に向け、どのような基準で解消していく考えなのか伺う。

A倉本教育長 道教委としては、児童生徒の増加が続いている学校では、特別教室等を転用することによって、必要となる普通教室を確保してきているが、その場合であっても、音楽室や視聴覚室、調理室など、専用の教材や教具を必要とする特別教室は維持するなど、学校全体の教育活動に支障が生じないよう配慮している。

 さらに、教室不足の学校では、一人ひとりの障がいの状況を踏まえ、教室以外のオープンスペースや小ホールも有効活用するなどの対応を行っているが、こうした状況は早急に改善していかなければならないと考えている。先に文科省によって制定された特別支援学校の設置基準を踏まえ、学校や地域の実態、老朽化の状況などを総合的に勘案して、国の補助制度も活用しながら、特別支援学校の教育環境の改善・充実に取り組んでいく。

P千葉委員 他都府県をみると、同じ100ヵ所の改善が必要だと挙げている茨城県の場合は、100室に対して、計画内では38室を改善していくとなっている。

 福岡県では、114室が改善が必要なところで、そのうち12室を改善すると挙げている。熊本県も107室の改善が必要だと挙げており、この計画内でほとんど改善するという意思表示をしている。他都府県に負けないよう、環境整備に努めていただきたい。

(道議会 2022-08-25付)

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