道小 4年度広域人事調査集計と考察(関係団体 2022-09-09付)
道小学校長会(紺野高裕会長)が行った4年度広域人事に関する調査の概要はつぎのとおり。
【調査の分析】
▼3年目修了者本人
「授業力の向上」「職場の仲間との関わり」「保護者・地域との関わり」を中心に、広域人事制度に参加して良かったという回答が多い。対象者が、異動した地域で多くのことを学び、教師としての成長を感じている。期間を3年間に限定しなくても良いと言う意見が複数あるのは有意義な制度として職能向上につながると感じていることが推測される。
一方「豊かな人間性育成への関与」「教育課程改善への関与」「(自分自身の)授業力向上」が大変だったという回答が本年度は少なくなっているが「精神的負担」が大変だったという回答が多くなっている。
社会情勢の変化による引っ越しの手配への困難さが増していることや生活環境の変化へ対応するための負担感に関する回答が多い。また、期待していた交流や研修がコロナ禍で思うように経験できていないことも困難感につながっていると推測される。
対象者に対するサポート体制(実務担当者の訪問面談や電話によるサポート)はここ数年でさらに充実している。こうした支援が、対象者の精神的な支えとなっていると推察される。
▼3年目終了時の勤務高校長、元いた管内への移動先校長
異動元校長の全員が「大いに貢献した・貢献した・貢献した部分がある」と回答しており、本制度の学校への貢献が大きいことが分かる。他管内との人事交流によって教育活動に対する見識を深め、授業や校務改善の活性化に影響を与えたことが「豊かな人間性」「学力の向上」「授業力の向上」「職場の仲間との関わり」「保護者・地域との関わり」など学校運営における様々な面での貢献につながっていると考えられる。
実務担当者による意向調査の有無については、異動元校長の多く(91%)が「あった」と回答しているのに対して、異動先校長では5割弱となっている。
本制度によって、異動した人材の他管での経験が自校だけでなく管内全体へも好影響を与えることを期待していることが推測されるので、異動者の知識や経験を異動先の学校や管内でどのように還元していくかを明らかにしておく必要があると考えられる。
▼1年目対象者本人
対象者全員が自らの意思で制度に参加している。制度の説明は校長からであり、制度について「理解している」「概ね理解している」と回答。対象者の異動先の規模・場所などの希望は概ねかなえられているが、一部かなえられていない対象者がみられる。
困りについては、準備段階では「異動までの期間」「異動先との打ち合わせ」「引っ越しに伴う業者の選定・依頼」に関するものが多い。また、着任してからも、引っ越し業者の情勢変化に伴い家財が届かなく困ったという意見が寄せられた。
▼1年目赴任校校長、元の管内の勤務校校長
広域人事制度の趣旨についての周知は、異動先・異動元の各校長会への説明会、意見交換会など、各管内で行われており、この制度が確実に浸透してきていることが分かる。
異動希望者受け入れに当たっては、困難に感じることが「なかった」と全ての学校が回答している。しかし、本制度趣旨への理解が不十分なために、異動先や対象者が不利益を被ることへの懸念や人材への不安に関する意見が出されている。本制度の趣旨の周知に継続して力を入れていくことが重要だと考える。
▼終了後2年経過者本人
本年度も、対象者のほとんどが広域人事制度を経験して「よい変化があった」と回答。「よい変化はない」と回答している対象者は体調不良になり職能向上を十分に実感できていないことにつながったと回答結果から推測することができる。
他の地域の教育環境(学校規模や校務組織および業務の取組)の違いを知り、教育に対する考え方が広がったり、深まったりしたという実感をもった対象者が多い。
その結果「学力向上への関与」「教育課程改善への関与」「家庭・地域と関わり」、そして「授業力向上へ関与」など、教師としての意識の変化を強く実感していることにつながっていると推測される。今後、学校の教育活動をリードする中心的な役割を担っていると思われる。
▼終了後2年経過者本人・その勤務校校長
「授業力向上への関与」「学力向上への関与」「教育課程改善への関与」などを中心に異動先の学校運営に貢献し活躍している様子が伺える。学校運営においてリーダー的存在として周囲に良い影響を与えていることが推測される。
一方、広域人事制度の趣旨に沿った適切な人事異動が実現しなかったことや人選の難しさがあるとの報告が上がっている。
人材育成の視点からも本制度の利用が増えていくことを期待する意見があるので、制度の趣旨と魅力を周知していくことが必要だと考える。
【考察】
広域人事制度に参加した多くの教諭は、教育者としての意識の変化や職能の向上を実感し、元の管内に戻ってその成果を発揮している。教育課程改善や授業力向上・学力向上への関与など、職場に良い刺激を与え、学校運営を活性化する上で大きな役割を担っている。今後も、校長は、対象者の3年間の実績を勘案し、元の管内に戻る際に力を発揮しやすい環境や役割を用意するなどの配慮をしていきたい。
本制度については教育局や教育委員会によって適時管理職への説明が行われ、広く理解されるようになった。しかし、地域によっては参加する学校や希望者が少ない状況である。希望者が増え多くの管内で積極的に活用されるよう、一般の教諭に制度の良さや魅力を丁寧に周知していく必要がある。
広域人事を終え3年目を迎えるほとんどの教諭がアンケートで「よい変化があった」と回答している。しかし、広域人事で得た貴重な経験や知識が管内や学校に還元されている報告もあれば、管内に還元されていないと感じている報告がある。本制度を経験した教諭の知識や経験を還元する研修会の開催など本制度の取組の情報発信を工夫していくことが本制度の良さを広げていくことにつながると思われる。
異動対象者の困りについては、近年、教育局や教育委員会の担当者による電話や面談等の継続的な支援や話し合いが丁寧に行われており、異動に際しての不安の軽減につながっている。しかし、例年同様に異動・着任までの準備期間の慌ただしさや住宅・生活環境の大きな変化への不安が大きいという報告が上がっている。
また、本年度特に多くなっている困り感は、引っ越しについてである。内示からの短期間で引っ越し業者を選定確保していくことに困難さや負担を感じているという意見である。要因は運送業界の情勢変化によるものだが、引っ越しは対象者の基本的な生活を支え精神的な安定感につながっていくものなので、先行した内示だけではなく個別の配慮が必要な状況となってきている。
異動者の決定については本制度の趣旨を理解した人材の選出が不可欠である。そしてお互いの管内で情報を共有することが重要である。異動者が赴任先での課題意識を高めて学校運営に積極的に参画し、さまざまな貢献を実感していくためにも、学校の状況や役割を事前に丁寧に伝えていく事前の情報交流を大切にしていきたい。また、人選に苦労する要因の一つに、後任の人材に対する不安があるので、異動させた場合の人的補償が確実に行われていく必要がある。
【課題と改善策】
▼対象者の選考
▽広域人事制度の趣旨や目的を理解し、学校運営への貢献など使命感の高い人選と人材の育成を図る
▽異動(行く・戻る)に当たっての処遇、役割などを事前に丁寧に説明する
▽教育局、教育委員会による3年間を通した定期的なサポート体制の充実を図る
▼情報の共有(対象者や対象学校)
▽先行した内示をすることによって、対象者の情報をいち早く情報共有し、力を発揮しやすい環境や役割などの受入校での体制づくりにつなげる
▽赴任先の地域の様子や住宅環境など情報共有を行い、対象者の生活面での不安解消につなげる
▼制度の運用
▽異動対象者は、異動元の学校の貴重な人材であり、学校経営上において中核的な存在である場合が多い。異動させた場合の人的な補償を確実に行う
▽広域人事制度の対象地域の見直しや優遇措置などを明確にする
▽異動者に対する精神的・経済的な負担への配慮(軽減)を行う。引っ越しへの見通しを持てるよう少しでも早い先行した内示を行うなどの配慮を行う
▽広域人事経験者による一般教諭向けの研修会など、制度の良さを還元する、広める取組を行う
(関係団体 2022-09-09付)
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