子育て深める教育フォーラム開催 子のコミュ力育むには 鶴羽元道教委委員が講演 道教育振興会(関係団体 2022-09-14付)
鶴羽氏は会話や子育てに関する様々な示唆を与えた
道教育振興会(濱田美樹会長)は6日、札幌市内のかでる2・7とオンラインで第26回「『子育て』を深めるみんなの教育フォーラム」を開催した。元道教委委員の鶴羽芳代子氏が「子どものコミュニケーション力を育むために 大人としてできること」と題し講演。元アナウンサーとしての経験を踏まえ「会話をするときには本題から入らない」など実践的なテクニックを紹介。また「子どものやる気スイッチを押すには、ネガティブな言葉はポジティブに置き換えよう」「家庭では感謝の言葉を100%伝えること」など、子育てに関する多くの示唆を与えた。
同会は昭和49年に教育の正常化と活性化を目指して誕生。教育関係者や保護者ら約2000人の会員で構成されている。
今回のフォーラムは、26回目となる「女性の視点から考える教育フォーラム」を名称変更し、より幅広く家庭教育や社会教育に生かすことを目指したもの。
全道の会員が交流できるよう、会場とオンラインのハイブリッド形式で開催し約60人が参加した。
はじめに濱田会長があいさつ。「人との信頼関係を築き豊かな人生を送るためにはコミュニケーションが重要だが、今の子どもたちは、自分の考えをうまく伝えられず、誤解されたり落ち込んだりすることも多い」と指摘。「コミュニケーションは生きていくのに欠かせない力。子どもは親や大人の言動を見て育つ。われわれ大人に何ができるか、一緒に考え学び合う機会にしよう」と呼びかけた。
このあと、元道教委委員で元HBCアナウンサーの鶴羽氏が講演。質疑応答では、講演内容の理解を深める活発なやりとりが行われた。概要はつぎのとおり。
▼講演
「下流社会」という言葉がある。所得が少ないだけではなく、コミュニケーション能力がないから働く気になれない。人生を良くしようという意欲もない。結婚もしないという層のことで年々増えている。
新入社員研修でも、人の話が聞けない、話をまとめて伝えられない人が増えた。今の子は電話よりラインで会話する。ラインは文字のみの会話である。ラジオもほぼ聞かない。耳から理解する習慣が生活の中からなくなっているのである。
小学校中学年から高学年のギャングエイジがとにかく大事。自分と他の違いを意識し助け合う力は経験でしか身に付かない。これがあれば、仲間をつくったり人を信用したりできる。自分への評価を知り、能力を知り役割を持つことができる。
今の若い社会人は指示待ち人間が多いと言われる。これは、何でも正しい正解を求められ続けてきたからである。だから、間違わないようにしたいから指示されたとおりやるのである。
会話力を伸ばすために気を付けてほしいこと。これは放送局にいた時に、初対面の人にインタビューし、答えてもらうために編み出した経験則である。
とにかく、会話をするときには本題から入らないこと。まず準備運動として、一刻も早く何でもいいから声を出してもらう。「暑くないですか?」「足元滑りませんでした?」「ご飯は食べましたか?」といった反射神経で答えられることがいい。声さえ出してもらったら関係はよくなる。
2つ目は音を出して受け止めること。「そうですか!?」でも「へぇ」「はぁ」「ほぉ」など何でもいい。間が空くと感じが悪くなるのですぐに声に出す。
これだけで十分なのだが、さらにあるとすごくいいのが、相手が喜ぶような言葉。相手が「頭が痛い」と言ったら「え?大丈夫ですか?」だけでうれしい。
保護者面談でも、いきなり「お子さんの最近の素行は…」と繰り出すのではなく「忙しいところ来ていただきありがとうございます」と保護者自身をねぎらってからだと保護者も素直に聞ける。ポイントは、相手の目を見ること。自分が何か言って相手に喜んでもらえたら「言ってよかった」と思う。それがモチベーションにつながる。
自己肯定感はどう身に付けるか。子どもの良いところを実際に見て褒めてあげること。「すごいね」だけではなく「粘り強かったね」「集中力があったね」などと具体的に褒めてあげると、子どもも「自分は粘り強いのか」「集中力があるんだ」と思い始める。
集中力のない子には「好奇心旺盛だね」、うるさい子には「元気だね」、暗い子には「落ち着いてるね」など、探せば褒める言葉はいくらでもある。
「五十音誉め言葉」で語彙を増やしておくといい。「あ」だけでも明るい、愛らしい、アクティブ、温かい、アイデア豊富など100も150も語彙はある。
また、会話はクローズからオープンに進むとスムーズ。「スポーツは好きですか?」「はい」から「どんなスポーツが好きですか?」と進む感じ。いきなりだと答えにくいし、ずっと「はい」「いいえ」で答えられる質問だけでは会話は広がらない。
子どもたちのやる気スイッチはどこにあるか。なりたい自分になるためのスイッチはどこにあるか。それが脳の「認証バイアス」である。
なりたいものになれている人は、これがやりたい、これが好き、こうなりたいと言葉に出している。できなかったらどうしようとはできるだけ考えない。
スイッチは言葉に出すこと。認証バイアスは脳が「自分が発した言葉の証拠集めをする」こと。脳はポジティブな発言をしたときはポジティブな情報を、ネガティブな発言をしたときはネガティブな情報を集める。
「緊張したらどうしよう」と考えると「緊張」を認証し、そういう情報を次々に送る。「失敗したらどうしよう」と考えると失敗を認証し失敗の情報を送る。だから、ネガティブなことを言う人には、そういう情報ばかり脳に入ってくる。
なりたい自分になるためには「どうすればできる?」と自分に問いかけること。失敗なんてない。やって駄目だったことは全部自分の糧になる。脳に常にいい認証を与えていれば、人と仲良くなる、楽しくいられる。
ネガティブな言葉はポジティブに置き換えよう。「頑固」は「意志が固い」、「決断できない」は「慎重」というように。
そして、大切な魔法の言葉が「ありがとう」という言葉。人は「ありがとう」と心を込めて言ってくれた人を敵とは思わない。大人が常に「ありがとう」と言い続けることで、子どももそれがいいことなのだと学んでいくのである。
▼質疑(回答)
大人のコミュニケーション能力を家庭の中でどう高めていくか。
家庭は一番大切なところである。感謝の気持ちを毎回100%伝えることが大切。1回褒めたからもういいというものではない。全てのことにありがとうと感謝を。「こんなにやってるのに感謝されない」という思いがあると人は優しくなれない。
家族であっても、何かをしてもらえるのは当たり前じゃない。「こっちも忙しいんだから、やってくれて当然」と思っていては互いの関係が良くなるわけがない。
とにかくありがとう。自分から言い始めないと始まらない。でも、これをすると家の中が明るく優しくなる。家の中で気持ちがつながっている人は強い。
(関係団体 2022-09-14付)
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