附属函館中 CBT活用で実証研究 個別最適な学びに手応え 試験結果など生徒に即時還元可能
(学校 2022-10-26付)

附属函館中テストにおけるCBT化の利活用
小テストや定期考査でCBTを活用している 

 【函館発】道教育大学附属函館中学校(中村吉秀校長)は本年度、全教科の小テストや定期考査でCBT(コンピュータ使用型調査システム)の活用を進めている。観点別評価に基づいた設問に対し瞬時に採点が可能なCBTは、評価や改善点を生徒に即時還元できる利点がある。個別最適な学びや指導と評価の一体化の実現に手応えを感じている一方、定期考査や実技評価にはなじみにくいという課題も見えた。同校では、実践で明らかになった成果や課題を踏まえ、各校でのCBTの広がりを期待する。

 文部科学省は、次年度の全国学力・学習状況調査における中学3年生英語「話すこと」に関する領域で、オンライン上で学習やアセスメントができる公的CBT、MEXCBT(メクビット)を活用する方針を示している。

 同校は、平成25年度から生徒の1人1台端末環境を構築するなど、ICT活用に関する先駆的な実践を重ねてきた。本年度は、文科省の動向を踏まえ「1人1台端末環境における指導と評価の一体化の実現」をテーマに2ヵ年計画で研究を開始。生徒が学習過程で身に付けた資質・能力を短期間で測る検証改善サイクルを確立すべく、小テストや定期考査でCBTを取り入れた実践を進めている。

 CBT活用に当たっては、各教科において、教員が生徒の育成したい資質・能力を総括的に評価するため①単元や題材の指導過程における評価②即時性のある検証改善③生徒の学習過程におけるデータ分析を行う手段―の3点を重点化している。

 教員らが問題作成で使用しているソフトはグーグルフォーム。主にアンケート作成・管理に使用されているが、テストを作成できるアプリケーションがある。システムでは、問いに対する解答や配点を作成者側で設定できるため、生徒の解答と一致していれば自動採点ができる機能を持つ。

 授業中の活用例をみると、単元や内容のまとまりごとにCBT形式の小テストや単元テストなどが挙がる。教員は、生徒に身に付けさせたい資質・能力に合わせて、短答式や選択式、記述式および口述式の問題を設定。前時の振り返りや知識を問う問題を出題したり、フィードバック機能によって生徒の誤答にアプローチしたりするなど、個々の習熟度を瞬時に測ることが可能だ。

 研究主任を務める金子智和教諭は「フィードバック機能は生徒の誤答に対し、正答を分かりやすく説明する動画や資料を添付できるため、個別最適な学びにつながる」と効果を実感する。

 CBTによる出題形式と観点別学習評価の親和性も検証。金子教諭は、即時採点のメリットによって「“知識・技能”“思考・判断・表現”を図る選択式、短答式の問題は指導改善と学習評価になじみやすい」と分析。一方で、実験の工程や英語のスピーキングなど実技評価に向けた設問は、即時採点が難しいが「一斉に集約できる機能や学習記録の保管には最適」という。

定期考査での活用は留意が必要だ。CBTと紙形式を併用して取り組んだ場合、ネットワークの不具合によって実施が困難になるケースがみられるなど、課題も浮き彫りに。「端末交換など生徒への補填を考慮する必要性がある」とし、導入に当たっては「慎重な運用が求められる」と指摘する。

 同校は現在、生徒の成績管理や評価蓄積に向けたポートフォリオについて、グーグルスプレッドシートでの整備を検討している。黒田諭副校長は「研究によってCBTの効果や課題が検証できた」と実践に取り組んだ意義を強調する。「国による予算配分が限られる中、グーグルフォームによるCBTの実践は比較的取り組みやすく、各校の参考になれば」と期待する。

(学校 2022-10-26付)

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