全小社研北海道大会公開授業⑫緑丘小 北海道のスマート農業追究 北大・野口教授の研究手がかりに
(札幌市 2022-12-19付)

第5学年授業研究会B(2)

札幌市立緑丘小学校5年3組(土岐友哉教諭)

これからの食料生産とわたしたち~持続可能な食料生産

◆第5学年で目指す子どもの姿

▼日本の産業を発展させている人々の営みに思いをはせ、産業構造の今を知ることで、未来に希望を持ちながら追究する子

 第5学年の社会科学習では、国民生活を豊かにしている日本の産業について学んでいく。どの産業学習でも、人々の工夫や努力、そして抱える課題を取り扱う。「資源枯渇」「後継者減少「少子高齢化」」「環境問題」「産業構造変化への対応」など、具体的な解決策を見いだすのが難しい問題ばかりである。本部会では、発想の転換によってそれらの問題解決を図り、産業の持続可能な発展や地域貢献を成し遂げている人の営みを取り上げ、子どもたちが将来に希望を持ちながら追究できる授業を目指している。

 本単元では、高度情報化社会の中で、農業におけるスマート化の進展やその価値について、子どもたちは追究する。

 担い手不足や農家の高齢化、1人当たりの田の面積の増加等、食料生産が抱える課題は日々深刻さを増している。その課題の解決に向け、北海道大学の野口伸教授を中心に研究が進められている、北海道のスマート農業を取り上げた。

 スマート農業を通して、今後の食料生産を支えていこうと努力を重ねる人々の営みから、消費者の一人として持続可能な食料生産に目を向け、未来に希望を持つ子どもの姿を目指す。

◆本単元の目標

 わが国の農業や水産業における食料生産について、生産の工程、人々の協力関係、技術の向上、輸送、価格や費用などに着目して、見学・調査したり、地図などの資料で調べたりしてまとめることで、わが国の食料生産の現状を捉え、食料生産が国民生活に果たす役割を多面的に考え、表現することを通して、スマート農業をはじめとした様々な取組が、食料生産が抱える課題の解決へと向かい、将来にわたって国民の食料を確保する上で重要な役割を果たしていることを理解する。

 また、消費者の一人として、これからのより良い食料生産の在り方について主体的に考えようとする態度を養う。

◆本時のねらい

 多額の初期費用がかかることや、新しい操作の習得など生産者にとって負担になる面があるにもかかわらず、農業のスマート化を進める北大の野口教授の意図について考える活動を通して、生産性や将来性の視点から、現在抱える農業の問題と関連させながらスマート化の必要性を判断し、その価値を表現することができる。

◆本時の展開

【子どもの主な活動】

〈問いを生む場〉

▽北大・野口教授「スマート農業を広めていきたい」↓30年以上スマート農業について研究

▽生産者「スマート農業を広めていきたい。ロボットトラクター1台1400万円…。新システムを覚える必要があるし…」

▼課題「(生産者の負担が大きいのに)野口教授は、なぜスマート農業を30年間も進めているの?」

〈考えをつなぐ場〉

▽生産者

・広い面積の畑も楽に作業できる

・農業器具に慣れていない人でもできる

・作業時間が減り空いている時間は他のことができる

▼まとめ「野口教授は“今”抱える農業の課題を解決し、“未来”の食料生産を安定させたいから農業のスマート化を進めているんだね」

〈吟味・検証・再考する場〉

▼5年3月に北大構内にスマート農業教育センターが開設

▽野口教授「農業関係者だけではなく、市民や小学生にも見学に来てほしいです」

▽「未来の農業について、たくさんの人に知ってほしいんだね」「日本の農業の問題についてみんなで考えてもらいたいんだね」

▼まとめ「野口教授は、日本の農業が続けられるようにスマート農業を進め、みんなで農業の未来を考えられるようにしているね」

【教師の具体的な手だて】

〈問いを生む場〉

▽スマート農業には多額の費用がかかったり新しい操作を覚える必要があったりするなど農家が受け入れにくい面があるにもかかわらず、野口教授が30年間にわたって研究を進めていることに着目し問いを生む

〈考えをつなぐ場〉

▽スマート化による生産者の具体的な価値を引き出し、この取組の広がりが持続可能な食料生産につながることを捉えられるよう、思考を整理する

▽既習と関連させて話し合うことができるよう、日本の農業の課題(高齢化・1人当たりの農地の拡大)を取り上げる

▽作業時間の短縮など負担感が減ることを実感させるために「広い面積の畑」の具体的な衛星写真を提示する

〈吟味・検証・再考する場〉

▽スマート農業関連施設を農業関係者だけではなく、「市民や小学生にも見学に来てほしい」と話す野口教授の言葉の意味を考えることで、農業の問題を日本全体で考えてほしいという願いに気付くようにする

▼評価

▽野口教授がスマート農業を進める意味について、生産性と将来性から考え、ノートに記述しているかを見取る

(札幌市 2022-12-19付)

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