上川へき・複連が研究大会など開催 主体的・協働的学び展開 (関係団体 2023-01-26付)
智恵文小の授業公開
【旭川発】上川へき地・複式教育研究連盟(温泉敏委員長)などは昨年9月からことし1月中旬にかけて、各地区研究大会や実践発表会、経営研修会を開催した。研究主題「主体的に・協働的に学び ふるさとへの誇りと愛着をもった人間性豊かな子どもの育成」のもと、管内へき地複式教育の充実を図った。
◆3地域で大会 名寄智恵文小・算数
上川へき地・複式教育研究連盟は9月下旬から11月下旬にかけて、各地区研究大会を開いた。東川町立東川第一小学校、占冠村立トマム学校、名寄市立智恵文小学校で実施。授業公開や研究発表、研究協議などを通し、管内へき地・複式教育の充実を目指した。
連盟の研究主題は「主体的に・協働的に学び ふるさとへの誇りと愛着をもった人間性豊かな子どもの育成」。元年度から第10次長期5ヵ年研究を推進しており、本年度は4年次目に当たる。
学校・学級経営分野で①確かな経営理念の確立と、家庭や地域と連携した確かな学びを創る特色ある教育課程の創造と推進②ふるさとで学び、新しい時代を拓く、開かれた学校・学級経営の創造と推進③地域に根差し、家庭や地域と連携して豊かな心を育む教育活動の創造と推進。学習指導分野で④個性の伸長を重視した指導計画・実践・評価の改善と充実⑤学ぶ意欲を高める指導方法の改善と充実⑥主体性を育てる学習指導過程の改善と充実―の2分野・6課題別に、各市町村・各地区、管内の共同研究体制で研究を進めている。
9月下旬には、東川第一小で1年生の国語を事前配信で公開したほか、3・4年生の国語を公開。11月中旬はトマム学校で5・6年生の書写、8年生の理科を公開した。
11月下旬には、智恵文小で上川北部地区へき地複式教育研究大会・名寄市へき地複式教育研究大会として算数の授業を公開。小林悠介教諭による3年生「分数」(児童数1人)、4年生「少数のしくみとたし算、引き算」(同3人)と、萬城目久美子教諭による5年生「割合」(同3人)、6年生「ならべ方と組み合わせ」(同3人)を同時展開した。
うち5年生「割合」は13時間扱いの9時間目で、本時の目標は「割合を(1-α)とみる場合について理解し、基準量と割合から比較量を求めることができる」と設定した。
6年生「ならべ方と組み合わせ」は8時間扱いの5時間目。本時の目標を「ものの組み合わせ方について、起こり得る場合を順序よく整理し、落ちや重なりがないように調べる方法を考えることができる」とした。
萬城目教諭は5年生がプリントの問題に取り組む間、6年生に前時の復習として樹形図では重なりができることを確認させた。
その上で課題「4チームの対戦を、落ちや重なりがないように考えよう」を示し、表を使って調べる見通しの時間を設定。ロイロノートまたはジャムボードを活用して友達の画面を参考にしながら取り組むよう求めた。
5年生に対しては「〇%引き」の計算方法を考えさせるに当たり、例題を交えながら子どもたちから「30%引きの求め方を考えることは、70%を求める式を編み出すこと」と解き方の見通しを引き出した。
終末では6年生に対し、鍵盤ハーモニカを用い、音楽の循環コードと関連付けて組み合わせの振り返りを行った。
このあと、開会式や研究発表・研究協議を行った。
◆指導上の成果など交流
上川へき地・複式教育研究連盟は11月上旬、旭川市内の上川教育研修センターを拠点に本年度教育実践発表会をオンライン開催した。オンライン参加を含め約100人が参加。学校・学級経営および学習指導上の成果や課題を交流した。
管内のへき地および複式学級を有する学校が「地域の教育課題を踏まえ、家庭・地域社会と共に子どもを育成し、魅力ある学校経営の創造」のために学校・学級経営および学習指導上の成果と課題について交流することが目的。
開会に当たり、温泉委員長があいさつ。前年度から多くの参加があったことから「主催者として大変うれしく思う」と述べ「これからも一人でも多く参加者が増えるよう、しっかりと取組を進めたい」と伝えた。
また、全国へき地教育研究大会近畿ブロック大会での信州大学教授の講演で「5、6年後に教育の世界にもメタバースが入ってくる」という内容があったことに加え「さいたま市教委が教育のデジタル化を進めるに当たり、不登校児童生徒をメタバースでの登校を支援するという話があった」ことに触れ「時代はどんどん変わっていくのだと感じた」と話した。
続いて、分野別にブレイクアウトルームに分かれ、北部・中部・南部からそれぞれ実践発表した。
学校・学級経営分野では、中川町立中川中学校の大塚竜志教頭、東神楽町立志比内小学校の山邉慎太郎教頭、南富良野町立南富良野西小学校の青山貴教頭が提言。
学習指導分野では、名寄市立中名寄小学校の坂部あゆみ教諭、美瑛町立明徳小学校の伊藤修一教諭、占冠村立トマム学校の村上唯教諭が実践発表した。
このあと、各分野からさらに分かれてグループ協議を実施。部会に関連する課題を協議の柱に、地区間で意見・情報交流した。
◆士別市へき複研究大会
士別市へき地複式教育研究大会兼士別市立上士別小学校(杉本仁校長)教育実践発表会が11月中旬、同校で開かれた。約40人が参加。複式学級の子どもたちが主体的・協働的に学びを深める授業を公開したほか、研究発表・研究協議を行った。
士別市へき地・複式教育研究連盟(森広明委員長)・上士別小が主催。士別市教委が後援した。
連盟は「主体的・協働的に学び、ふるさとへの誇りと愛着をもった人間性豊かな子どもの育成~児童生徒一人一人が仲間とつながり、地域とともに“生きる力”を伸ばす学校・学級経営と学習指導の充実を目指して」、上士別小は「みずから考え 学び合う子 の育成~小規模の特色を生かした算数の授業づくり」を研究主題に掲げ、研究を深めている。
当日はいずれも算数の授業を公開。佐藤祐香教諭による1年生「ひきざん」(児童数2人)、2年生「かけ算九九づくり」(同4人)、高田裕輔教諭による3年生「三角形」(同5人)、4年生「変わり方」(同4人)、近藤賢士教諭による5年生「四角形や三角形の面積」(同4人)、6年生「比」(同5人)を同時展開した。
3年生「三角形」は9時間扱いの2時間目で、本時の目標は「二等辺三角形、正三角形の意味を理解する」に設定した。
4年生「変わり方」は5時間扱いの3時間目。本時の目標は「伴って変わる2つの数量の関係を表に表し、変化の特徴を調べることができる(y=axの関係)」とした。
3年生の子どもたちは前時、ストローを使って二等辺三角形や正三角形などを、辺の長さごとに色を分けて作成した。
高田教諭は前時の振り返りのあと、4年生が練習問題を解く間、3年生に問題「自分たちで作った三角形を、いくつかの仲間に分けよう」を示した上で課題「どのような三角形のなかまができるか調べよう」を提示した。
見通しを持たせるため、ストローの色に着目して仲間分けすることを呼びかけた。
4年生に対しては1辺が1㌢㍍の正方形を並べる問題を示し、1段目は1個、2段目は3個、3段目は6個と規則的に増えるとき、10段目の回りの長さを求めさせた。
個人思考のあと、集団思考で3年生はロイロノート、4年生はジャムボードを使って一人ひとりの考え方を共有した。
全体会に移り、研究発表・質疑応答を実施。このあと低学年・中学年・高学年の3分科会に分かれて研究協議を行った。
◆教育経営研で会員70人研鑚
上川へき地・複式教育研究連盟は13日、第46回上川へき地複式教育経営研修会をオンライン開催した。会員ら約70人が参加。道教育大学旭川校の芳賀均准教授による講演などを通して資質向上を図った。
上川のへき地・複式教育学級を有する学校が「地域の教育課題を踏まえ家庭・地域社会と共に子どもを育成し、魅力ある学校経営の創造」に向けて、経営上の諸問題について研究交流を行うもの。
はじめに、温泉委員長があいさつ。連盟として、研修会が研究報告書の作成を除く本年度の最後の大きな事業となることから「締めくくりの事業としてこれからも内容の充実を図っていきたいと考えている」と伝えた。
つぎに、芳賀准教授が「これからの時代をつくる子どもたちを育てる~へき地・複式における教科横断的な活動の設計」と題して講演した。
合科的学習・教科等横断的な学習・総合的な学習について、子どもたちがハンバーグ定食・ギョーザを食べながら「これは洋食」「これは中華」と意識しないように「これは音楽」「これは理科」など教科を意識しない在り方の学習が「子どもたちにとって自然なことと言える」と分かりやすく説明した。
また「これからの時代を生き抜くため、生き抜く力を付けていくことが大事。地方やへき地ほどしなやかな学習を行う必要がある」とし「地方こそ、創造力が大切」との考えを示した。
へき地における開発的な教育実践では、総合的な学習の時間にSTEAM教育として行った木琴づくりの様子を動画を交えて紹介。ふるさと学習として、木育と組み合わせて図工や理科、音楽など様々な教科の要素を兼ね備えた授業を行ったことを伝えた。
最後に「先生方自身も、子どもたちと一緒にやっていて楽しいと思える時間をつくることが重要」と呼びかけた。
研修では、池田幸則研究部長が全道へき地複式教育研究大会胆振大会(ファーストステージ)、浅野潔裕研究部副部長が北部地区大会、神野伸二研究部副部長が管内中部地区大会、青山貴研究副部長が南部地区大会についてそれぞれ報告。「学校・学級経営の深化・充実」に関するアンケート調査結果の報告も行った。
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教育実践発表会の様子
上士別小の授業公開
教育経営研修会であいさつする温泉委員長
(関係団体 2023-01-26付)
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