札幌市立高特事務職員会研究大会研究発表概要③ 職員の健康管理に留意 札幌北翔支援・温泉永一氏(札幌市 2023-01-27付)
研究発表Ⅰ
▼研究テーマ=法令順守について
▼発表者=市立札幌北翔支援学校事務長・温泉永一
▼労働法について
労働に関数する問題は、私たちの心身の健康に直接影響を及ぼす。
札幌市職員でも多くの困職者が存在しており、過労死につながるような状況の方もいると思われる。
長時間労働が原因の場合は、管理監督者の労働基準法違反が考えられる。教員については多忙による長時間労働が全国的に問題となり、札幌市でも出退勤システムの導入によって在校時間を報告させ、教育職員の在校時間を把握しており、統計結果を公表しているが、効果を上げているのだろうか。
札幌市教委では、文部科学省の指針に従い時間外在校時間の目標上限を月45時間未満、年間360時間未満に設定しているが、この上限を管理監督者が意識して職員を指導し、長時間労働解消の環境をつくり上げなければ難しいだろう。
それでも、教育職員については、長時間労働解消および働き方改革を市教委が主導して行っているが、一方で事務職員はどうか。
学校では、ほぼ全職員が「出退勤システム」を利用しているにもかかわらず、事務職員・業務職員などは時間外在校時間の報告を不要としている。「出退勤システム」は出勤簿を作成するためのツールになっているだけである。
もちろん、文科省の指針では教育職員が対象であり、事務職員等は対象にはなっていないが、職員の健康管理について市教委が主体となり改善、指導していくことは必要である。
この状況では、教育職員以外の者の長時間労働について、札幌市教委は把握する必要がないと公言しているようなものだ。
これまで過労死による労災と認められた判例をみる限り、労働時間の記録が重要になっているようである。事務職員も過労死になる前に対策を取るべきだが、時間外在校時間の記録は全て保存しておくべきだと考える。
さらに、時間外在校時間の統計結果より事務補助職員の配置や業務の一部を外部に委託するなど予算措置を行い、柔軟な対応をしていただけると学校現場の業務は改善されると思う。
もっとも、時間外在校時間の報告制度も出張中の勤務時間は通算されないし、休憩時間中の労働時間も考慮されていない。学校現場では教育職員にかかわらず、休憩時間をほとんど取得できない職員が多くいる実態も考慮されていないので、まだまだ改良の余地がある。
長時間労働だけが原因ではないが、札幌市立学校では休務者に占める精神疾患者の割合が多い状況が続いている。特に3年度の30日以上の休務者および休職者の人数が例年より大幅に増加していることは心配なところ。
私たちの心身共にリフレッシュする時間を確保するためにも、5年度からは、教員以外の職員も時間外在校時間の把握を教育委員会で始めていただければと期待する。
▼個人情報保護について
私たちは、業務を行う上で多くの個人情報を取り扱う。紙による公文書・私文書を取り扱っていたころと比べ、デジタル化が進んだ現在では、その取り扱いはさらに慎重に行われなければならない。
学校での一例として就学援助事務等を取り扱うことによって、家庭の家族状況、世帯収入などの個人情報を知ることになるが、このデータを目的外に使用したり個人で学校外に持ち出したり、個人のパソコンで処理したりしてはいけない。知り得た個人情報を職場内で話題にすることも厳に慎まなければならない。
業務上、個人情報を使用する場合でも誤送信などが起きないようにしなければならないが、このような人為的ミスは完全にはなくならない。重要なデータを送信する際には、送信前に内容・送信先を確認し、必ずパスワードをかける必要性がある。
現在、イントラPCでは、外部にメール送信する際には、エクセルデータ等に自動的にパスワードがかかるが、常に自らも注意する必要がある。「個人情報の保護に関する法律」は、事業者および行政機関に対して守るべき義務を定めたものだが、改正されるごとに罰則も厳しくなっている。
私たちは「札幌市情報セキュリティポリシー」にも従い業務を行っているが、毎年職員個人によるデータの誤送信、USB紛失などの事故は絶えない。
対策として、法律等に関する知識がない場合が考えられるため「札幌市情報セキュリティポリシー」に記載されているように、毎年研修を実施することは必要である。
情報資産の持ち出しについて、記録媒体の管理が厳しくなっているが、適正に運用されなければ意味がない。また、インターネットメール等による持ち出しに関しては職員の意識による部分が大きいため、職員への教育および環境づくりが重要である。
学校内でも事務室で注意しなければならない事例の一つとして、事務室で保護者から受け取った紙の提出書類に不備があった場合、担任を通して返却することがある。その際には、担任に中身の説明をして、封をして返さなければならないと考えたい。
担任は、事務職員よりも生徒家族のことを知っているはずだが、世帯の収入状況については分からない。保護者の中には、収入状況を担任には知られたくない方がいるので、事務から発出する際の状態は、必ず厳封するように注意しなければならない。
なお「個人情報保護法」は事業者および行政機関等に対する法律なので、個人がこの法律で問われることはない。
また「個人情報保護法」第2条では「個人情報は生存する個人の情報」とされているが、故人の情報については問題ないのかとの疑問がある。
いずれにしても日ごろより多くの個人情報を取り扱う私たちは、緊張感を持って業務に当たりたい。
(札幌市 2023-01-27付)
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