地域の高校を存続させる方法は 町外から呼べる学校に 平取高存続へ初フォーラム(市町村 2023-04-04付)
多くの町民が参加し、平取高の在り方を真剣に話し合った
【苫小牧発】平取町・平取高校の魅力化を図り存続させる会(会長・遠藤桂一平取町長)は3月24日、中央公民館で「第1回平取高校と地域の未来を考えるフォーラム」を開催した。平取高存続に向け、住民と一体となって話し合うスタートとなるもの。町民からは「三笠高校のような特色ある学校にし、町外から生徒を呼べるようにしてほしい」などの声が。遠藤町長も「町外から生徒を迎えるしかない。具体的な検討に向け皆さんと話し合い、高い熱量を持ち本気で取り組んでいく」などと述べた。
平取高は、入学者数が2年度19人、3年度15人、4年度11人と3年連続で定員の半数を下回っている。
道教委では、2年連続入学生10人未満の学校を募集停止としており、平取町に隣接するむかわ町の穂別高校は7年度からの募集停止が決まっている。
フォーラムは、こうしたことから平取高存続に向け、どう魅力化を図っていくかを住民みんなで考えていくきっかけにと開催したもの。
町ではパンフレットを全戸に配布し、メールも使って全町民に参加を呼びかけた。ネットを通じた参加もできるようにした。
当日は、仕事を終えた町民や子ども連れの主婦らオンラインを含め50人が参加し、会場は熱気に包まれた。
第1部では、三菱UFJリサーチ&コンサルティングの阿部剛志氏が「高校の魅力化・存続を通して考える地域の未来」と題し基調講演を行った。
阿部氏は、島根県立隠岐島前高校を例に「これまで高校は教室で、先生と、教科を学んでいたが、隠岐では地域という実社会で、地域の大人と、生徒が自ら見つけたテーマで学んでいる」「地域を舞台にした総合的な学習に全国から生徒を募集し、全国の生徒がこの学校を選ぶようになった」と説明。地域が学びのフィールドになる大切さを説明した。
山村留学などで魅力化を図った高校の地域で人口が増加しているデータを示し「工場誘致が長らく人口増加のため行われてきたが、企業は企業の倫理でしか動かない。運営にも住民は関われない。しかし、公共のものである高校は住民が関われる」とした。
住民の在り方については「地域の大人と一緒に商品開発ができるなど、学びやすい土壌があるかどうかが大切。土壌が豊かであれば生徒も成長する」と話した。
また「挑戦している生徒に関わっている大人は、自分も挑戦しなければと思い変わっていく。生徒が成長し、大人もつられて成長し、さらに生徒が成長するというサイクルがつくられる」と訴えた。
具体的な方策として、地域と学校が協議できるコンソーシアムと、地域と学校をつなぐコーディネーターの存在の重要性を挙げ「この2つがあるとないとでは全然違う」と述べた。
第2部はパネルディスカッション。パネリストは阿部氏、遠藤町長と北海学園大学経済学部地域経済学科教授の西村宣彦氏、平取高校長の鈴木浩氏が務めた。
遠藤町長は「道内には27の地域連携特例校があるがどこも存続の瀬戸際。これまで地域と高校は離れていた部分があるが、いかに地域が高校に寄り添い関わっていけるかだと思う」との意欲を示した。
鈴木校長は「平取高では自ら考え・学ぶ新しい学習がしっかりと行われている。ぜひ一度学校を訪れ、昔とはまるで違う授業を見てほしい」と教育内容に自信を示し「1学年40人いないゆったりした中で学ぶ学びもある。苫小牧や札幌で競争しながらの学びもいいが、多様性の時代、大都市でなくても学びたい子のための存在意義があると思う」との考えを示した。
参加者を含めた意見交換では、山村留学や地域と学校の連携について「納得できる話」と好意的な意見が寄せられた。
子育て中の主婦から「娘に地元の高校に行きたいかを聞くと、留学したいので留学できる札幌の学校に行きたいとの話だった。また、平取高校は特性がよく分からない、これが学びたいというものがないと話していた」「きょうは三笠高校など、そこでしかできない特性をイメージして楽しみにしてきたのに、そうではなかった。平取高校には時間がない。町内の子が平取高を選ばないのは、部活動ができないからという子が大半。部活もできず友達も少ない学校をわざわざ選びはしない。町で1年に生まれる子は20人を切っている。生徒数を増やすため、町外の子があそこに行きたいと思う学校をつくってほしい」との意見が出された。
西村氏は「海外に行きたいという生徒の夢を実現することだってできる。どういう教育をこの地でやっていくのか。予算、人手の確保など知恵を絞っていかないと何も変わらない」と語った。
遠藤町長は「町内の生徒の平取高への進学率も低く、外から来ることを考えなければ駄目だと思う。先進事例を何件か見てきたが、きっちりとした宿泊施設、コーディネーターの設置など、今後具体的に進めたい。どういう形で来てもらうのか、皆さんと考えていきたい」と述べた。
最後に「今後もこの回を2回、3回と続けていく。役場と高校だけでできることではない。高い熱量を持ってこれからも本気で取り組んでいきたい」との決意を示した。
(市町村 2023-04-04付)
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