鹿部中・長万部中が附属函館中と遠隔交流 地方創生に向け議論 社会科地理で協働的学びに期待
(市町村 2023-04-04付)

附属函館中社会科遠隔交流
互いの町の活性化に向け画面越しに議論を交わした

 【函館発】生徒が自分の住む町の課題について調べることが一般的だった社会科の地理的分野。渡島管内の中学校では、道教育大学附属函館中学校(中村吉秀校長)との遠隔交流を通して、近隣市町の課題に視野を広げるとともに、生徒の議論を活発化させる学習に変化しつつある。ICTを活用した学校間交流の浸透によって、小規模校の協働的な学びや生徒のコミュニケーション能力の育成に期待が高まっている。

 「子育て世代の移住者を増やすことで地方創生につながると思う。全国の自治体をみると、給食費の無償化や誕生祝い金に予算を確保している。鹿部町には温泉があり、自然が豊かな地域。移住者が喜ぶ制度が必要ではないか」―。 

 2月下旬、鹿部町立鹿部中学校(後藤正弘校長・当時)と附属函館中の2年生が参加したオンライン交流授業。両校の生徒が9グループに分かれて行い、附属函館中の生徒は交流先・鹿部町の予算を確認しながら、地域活性化に向けて考えた施策を提案した。

 鹿部中の生徒は「町は独自で1人2台端末を導入していて、教育予算には大いに力を入れている。住みやすい町であるという認知度を高めるための活動も重要ではないか」と自身が住む地域だからこそ見える町の良さや可能性について言及。函館市の人口減少問題を切り口に若者の雇用確保策を提案したり、函館を舞台としたアニメの“聖地”を観光スポットにしたりするなどの意見を述べ、画面越しに議論を深め合った。交流後、竹本妃那さん(鹿部中)は「観光客増に向けて行われている他都市のイベントなどを教えてもらい、新しい気付きが得られた」と振り返った。

 学習は2年生社会科「地域の在り方」の単元で行った。鹿部中ではこれまで、生徒が特定の地域を選択し、探究学習を進めていた。社会科を担当する鹿部中の濱本城弥教諭(当時・現渡島教育局指導主事)は「地元の鹿部町をテーマとした形が一般的だったが、地方創生には外部からの視点が大切。生徒が互いの町の課題を発見し、実際に提案することで新しい考えを生み出すきっかけとなるのでは」と学習効果を期待する。

 3月16日には、附属函館中の別のクラスが長万部町立長万部中学校(雨澤啓司校長)の2年生と交流した。生徒は郡司直孝教諭(附属函館中)と山口輝晃教諭(長万部中)の指導のもと、グループに分かれて学習を開始。長万部町の活性化に向け、北海道新幹線の札幌延伸に伴い、ワーケーション人口を増やす街づくりや鉄道で町の特産品である「カニ飯」を振る舞う食事体験などを提案した。

 長万部中の生徒は、函館市における若者の雇用確保に向け、大規模ビルを建設し、多くの企業を誘致する意見などをプレゼンテーション。附属函館中の生徒は「歴史的建造物が多い函館市は和洋折衷の街並みを大切にしている。景観が損なわれてしまう危険性もある」など新たな課題を指摘した。

 ICTを活用した学校間交流学習の広がりは、生徒のコミュニケーション能力育成にも効果が見られている。堺結世さん(附属函館中)は「1人1台端末の導入後、様々な人と学習する機会が増えたので、相手に分かりやすく伝えるためのスキルが身に付いたと思う。自校単位での活動ではないため、閉鎖的なイメージだった学校がオープンになったように感じる」と話す。

 平成29年度からBYODによる1人1台端末を導入した附属函館中では、生徒主体の学びが浸透しており、日ごろから他校との遠隔交流を積極的に実施している。黒田諭副校長は「他学年、他教科においても交流学習が日常的になり、小規模校をはじめとした生徒の協働的な学びにつながれば」と取組の広がりに期待を寄せる。

(市町村 2023-04-04付)

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