空知管内5年度教育推進の重点 「そ・ら・ち」キーワードに ICT活用し授業改善など
(道・道教委 2023-04-21付)

空知教育局長山口利之
山口利之局長

 【岩見沢発】空知教育局の山口利之局長は14日、空知合同庁舎で開催した管内小・中学校長等会議において5年度管内教育推進の重点を説明した。「そ・ら・ち」という管内の名称に対応するものとして「そだつ」「ひらく」「ちかづく」という3つのキーワードのもと「新しい時代に必要となる資質・能力の育成」「地域と学校の連携・協働の推進」などの5つの重点を表明。ICTを適切に活用した主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善や、地域社会が一体となった学校づくり・地域づくりなどを推進していく意向を示した。

 教育推進の重点はつぎのとおり。

【はじめに】

 新たな「北海道教育推進計画」では、変化の激しい時代において、子どもたちが夢や希望を持ち、様々な困難を乗り越え、多様な人々と協働しながら持続可能な社会の創り手として成長していくことができるよう、これまでの「自立」と「共生」の基本理念を実現するため「子どもたち一人一人の可能性を引き出す教育の推進」「学びの機会を保障し質を高める環境の確立」「地域と歩む持続可能な教育の実現」の3つを施策の柱として22の施策項目を設定し、本道の子どもたちの課題である学力・体力の向上や、地域と学校の連携・協働の推進、ICTの活用促進、いじめ防止の取組の充実などを図っていくこととしている。

 そこで、空知局では、学校訪問や各種調査などで把握した管内教育の成果と課題を踏まえ「道教育推進計画」に掲げる施策項目の中から、管内全ての地域で共通して取り組む必要がある項目を5年度「管内教育推進の重点」として提案することとした。

 空知局としては、各市町教委や学校などが、各市町の教育行政執行方針との関連や学校等の実情に応じて、重点に基づく具体的な取組を共通して進めていただくことを通じて、各地域の特色や独自性を尊重しながら管内教育を推進していきたいと考えている。

【重点の構成】

 まず、構造図の上部に本道が目指す教育の基本理念である「自立」と「共生」を左右に配し、5年度から9年度までを期間とする「道教育推進計画」の3つの施策の柱と22の施策項目を掲げている。

 これら3つの施策の柱と22の施策項目については、管内の各地域や各学校において取組を進めていただくものだが、本年度、特に共通して取り組んでいただきたい施策項目を、5年度「管内教育推進の重点」として5つ示す。

 これらの重点については、今後5年間、管内の実情や課題に応じて毎年度見直し、管内全ての地域や学校が共通して取り組むことで、最大の効果が生み出せるよう提案していきたいと考えている。

 さらに、イメージの下部に「そ・ら・ち」という管内の名称に対応するものとして「そだつ」「ひらく」「ちかづく」という3つのキーワードを掲げた。

 「そだつ」という言葉には「子どもが育つ」「親や教師も育つ」「地域が育つ」、そういう学校や地域を目指したいという思い。

 「ひらく」という言葉には「子ども同士、子どもと親や教師、親同士、教師同士が心を開き合うこと」「学校が地域に開かれること」、さらには「異なる地域が互いに開き合い、交流し合うこと」を目指したいという思い。

 「ちかづく」という言葉には、子ども同士、親同士、親と教師、学校と地域とが近付き合うことや、物理的な距離を超えて異なる地域同士が近付き合うことを目指したいという思いを込めた。

 これらのキーワードを心に留めながら、人づくり、学校づくり、地域づくりを進めていくことが、ふるさと空知を愛する人づくりにつながることを期待し、これまでの管内教育推進のスローガンとして掲げてきた「ふるさと空知を愛する人を」については、これまで同様に継承していきたいと考えている。

【5つの重点】

 本年度、重点とした「新しい時代に必要となる資質・能力の育成」「いじめ防止の取組の充実」「不登校児童生徒への支援の充実」「働き方改革の推進」「地域と学校の連携・協働の推進」の5つについて、それぞれ説明する。

▼新しい時代に必要となる資質・能力の育成

 人口減少や少子高齢化の進行など、変化が激しく予測困難な時代の中で、子どもたちが、未来において様々な困難を乗り越え、豊かな人生を切り拓いていくためには、自らの良さや可能性を認識するとともに、全ての人を価値のある存在として尊重し、多様な人々と協働しながら持続可能な社会の創り手として成長していくため、新たな時代に必要となる資質・能力を身に付けることが求められる。

 管内の子どもたちの状況は、前年度の「全国学力・学習状況調査」の結果からみると、授業がよく分かると回答している児童生徒の割合は、小・中学校共に全国平均より高い教科が見られる。自分の考えをまとめ、発表する場面におけるICTの利用頻度は全国と比べて高い割合である一方、記述式の問題の正答率が全国と比べて低い傾向が見られることが課題である。

 このため、ICT機器を学習場面の「いつ」「どこで」「どのように」使うかを意識するなど、ICTを効果的に用いた主体的・対話的で深い学びの充実に向けた授業改善や「個別最適な学び」と「協働的な学び」の一体的な充実を一層進めるなどして、子どもたち一人ひとりの可能性を伸ばすことが重要である。

 こうしたことから、各地域や学校の実態に応じて、授業改善はもとより、PDCAサイクルを用いた教育課程の検証・改善など、子どもたちの資質・能力を育む創意工夫ある取組を進めるよう願う。

▼いじめ防止の取組の充実

 いじめへの対応については、平成25年に「いじめ防止対策推進法」が制定されて以降、管内の多くの学校で、初期段階のものも含めて積極的に認知し、その解消に向けて取り組まれているが、いじめの重大事態については管内においても数件、発生している状況である。

 管内におけるいじめの状況は、認知件数が増加傾向にあるものの、令和3年度では、解消率は小学校で97・5%、中学校で96・7%、高校で96・1%と、いずれも全国平均よりも高い状況であり、管内の各学校において早期発見・早期対応に努めた結果であると考えられる。

 一方で、いじめの把握のためのアンケート調査で「いじめは絶対に許されないことだと思う」と回答した児童生徒の割合が、児童生徒の年齢が進むにつれて低くなっていく傾向にある。

 このため、各学校においては、児童生徒が安心して学校生活を送ることができるよう、家庭、地域、関係機関との連携によって、いじめ根絶の取組を推進するとともに、児童生徒が互いを尊重し合い、主体的に望ましい人間関係を形成し、いじめを許さない態度等を身に付けることができるよう指導・支援することが重要。

 こうしたことから、各地域や各学校の実態や課題に応じて、全ての子どもたちが「いじめは絶対に許さない」という意識を持ち、主体的にいじめを防止しようとする生徒指導を展開するとともに、いじめの早期発見・早期対応に向けた生徒指導体制の充実に向け、学校・家庭・地域・行政の連携を一層強めるなど、創意工夫ある取組を進めるよう願う。

▼不登校児童生徒への支援の充実

 不登校の児童生徒数は依然として高水準で推移しており、憂慮すべき状況。管内における不登校児童生徒数は、友人関係を巡る問題や学業の不振、生活リズムの乱れや本人の気力の低下などによって、小・中学校では全道と同様に増加傾向が見られ、3年度の調査では、中学校で1000人当たりの発生件数が59・5件となっている。

 このため、不登校児童生徒への支援に当たっては、学校に登校するという結果のみを目標にせず、児童生徒が自らの進路を主体的に捉え、社会的自立への意欲を向上させることが大切である。

 こうしたことから、各地域や各学校の実態や課題に応じて、子ども同士の良好な人間関係や、子どもと教員との信頼関係の構築によって、全ての子どもにとって安心感と充実感が得られる魅力ある学校づくりの推進、不登校のほか、感染症の回避のために登校しない子どもたちへの支援に向けた1人1台端末を活用したオンライン授業等による学びの保障、関係機関と連携を図り教育相談体制を充実させるなど、不登校の子どもたちを組織的・継続的に支援する体制整備などについて、創意工夫ある取組を進めるよう願う。

▼働き方改革の推進

 学校における働き方改革は、各学校の教育目標の実現に向けて、限られた人的・物的資源を効果的に活用しながら、真に必要な教育活動に注力するために行う取組である。

 道教委では、現在、3年度から本年度までの3年間を取組期間とする「学校における働き方改革北海道アクション・プラン(第2期)」によって取組を進めているところであり、国の指針に基づき「教育職員の時間外在校等時間を1ヵ月で45時間、1年間で360時間以内とする」という目標を掲げており、各市町教委におかれても、それぞれ定められた上限を順守すべく取組を進めている。

 道教委では、新たな「北海道教育推進計画」においても、9年度までにこの数値目標を100%達成することを目指しており、平均値ベースではあるが、3年度の時間外在校等時間に係る全道調査では、職種によって、1ヵ月の目標値を達成している月も見られるようになってきている。

 しかしながら、小学校より中学校で時間外在校等時間が多い状況や、学校種を問わず教頭の時間外在校等時間が突出して多い状況が続いており、管内においても同様の傾向にある。

 こうした状況を改善するためには、教職員の在校等時間を客観的に計測・記録することはもとより、それを公表することで「見える化」を進めることによって、設置者や学校の管理職、教員本人、保護者、地域の方々が学校における働き方の現状を認識することが必要だと考える。時間の「見える化」と並行して勤務内容の「見える化」にも取り組むことによって、例えば、教諭であれば生徒指導や部活動指導、教頭であれば調査業務や学校現場での深刻な児童生徒間トラブルへの対応、渉外業務など、負担となっている業務の実態を把握することで、実効性のある対策を取ることが可能となる。

 特に、部活動指導に関わる負担などについては、行政・学校・地域が一体となって実効性のある負担軽減を進めることによって、学校における働き方改革はもとより、地域における、生涯にわたるスポーツ・文化活動の充実にも寄与するものと考えている。

 このほかにも、行政・学校・地域が一体となって取り組むことができる業務には、各学校や地域ごと、様々なものがあると考えるので、皆さまにおかれては、創意工夫ある取組を進めるよう願う。

▼地域と学校の連携・協働の推進

 人口減少、少子高齢化などの社会の変化に伴い、地域と学校を取り巻く課題はますます複雑化、多様化している。家族形態の変化、価値観やライフスタイルの多様化といった様々な要因によって、地域社会における支え合いやつながりが弱まり、地域機能の停滞などにつながっているという指摘もある。

 4年度管内教育推進の重点に係る取組の検証においては、家庭教育に関する学習機会の充実や地域住民の主体的な社会参画を促す取組の推進などについて、未実施となっている学校が散見。こうしたことから、地域や学校の実情に応じて、例えば、学校と地域住民、企業、行政等が連携し、子どもたちが主体的に学び、その成果を発信する場の充実や、コミュニティ・スクールの仕組みを活用した取組を進めるなど、地域と学校が一体となって推進する魅力ある学校づくりや地域づくりについて、創意工夫ある取組を進めるよう願う。

【終わりに】

 元年度に始まった新型コロナウイルス感染症の感染拡大は、社会生活に大きな影響を及ぼし、とりわけ学校教育においては、これまで良くも悪くも当たり前に進めてきた活動の見直しを迫られたが、その一方で、管内全ての学校においてICT機器の導入が急速に進み、教育の在り方そのものも大きく変わりつつある。

 ICTは、子どもたちの特性や環境に応じた教育のほか、学校における働き方改革の実現、関係者間の連携強化など、多くの可能性を秘めており、ICTの活用によって、子どものみならず、教師や保護者、地域の方々など多様な主体同士が、共に育ち合い、開き合い、近付き合うことで、つながりをより強固なものとしていくことが期待される。

 教育局としても、管内の子どもたちがふるさと空知に愛着と誇りを持ち、将来に向かって夢や希望を描くことができるよう、大きなポテンシャルを秘めた管内の豊かな資源を学校教育・社会教育それぞれの場で効果的に活用しながら、学ぶことの楽しさ、喜びを実感できる教育を実現することを通して、子どもたちはもとより、管内全ての人々が生涯を通じて主体的に学び続ける意欲を育み、持続可能な地域づくりを担う人材育成に向け、学校・家庭・地域・行政による連携をこれまで以上に深め、管内が一体となった取組を支援していく。

 それぞれの地域において、教育行政の推進役としてリーダーシップを存分に発揮され、ふるさと空知を愛する子どもたちの育成や、教育を通じた持続可能な地域づくりに向け、一層の力添えを願う。

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空知教育局・5年度教育推進の重点
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