道高教組と道教組が声明 公立高・特配置計画案の見直しを 少人数学級導入訴える(関係団体 2023-06-23付)
道高教組(尾張聡中央執行委員長)と道教組(中村哲也執行委員長)は13日、道教委が6日に発表した公立高校配置計画案および公立特別支援学校配置計画案に対する声明を発表した。道教委が示した「これからの高校づくりに関する指針」改定版に言及し「少人数学級に背を向けた施策を遂行するもので、改定版に基づいた配置計画案では本道の高校を守ることができない」と断じた。その上で、道独自の少人数学級などを導入し、小規模校の存続を強く訴えた。声明の概要はつぎのとおり。
道教委は6月6日、「公立高校配置計画案」(2024~26年度)と24年度「公立特別支援学校配置計画案」を発表した。
高校配置計画案には、26年度に奈井江商業高校を募集停止、函館水産高校を1学級減、ニセコ高校の農業科を総合学科にするなどの案が示されている。
奈井江商業高は、昨年の地域別検討協議会で町教委が「名前を呼ばれても顔を上げることができなかった生徒が卒業式では堂々と顔を上げることができるよう成長した」と発言し、これまで小規模校としての役割を果たしてきている。そうした学校の募集停止は、その子どもたちを切り捨てることとなり、進路選択の幅を狭め、遠距離通学によって経済的、精神的、身体的負担をも増やすことになる。
道教委は、7月に開催される第2回協議会で当事者である子ども・保護者・地域の意見を尊重し、柔軟な検討を進めるべきである。
また、昨年募集停止を1年先延ばしにした留辺蘂高校については、PTA代表から存続を強く求められ、本年度の入学生は23人と再編基準をクリアしたにもかかわらず、「中卒者が増加するなど状況が変わらない限り変更はない」と通り一遍の回答で募集停止を強行した。
今回の高校配置計画案は、道教委が新たに示した「これからの高校づくりに関する指針」改定版も、これまでと同様に40人学級で計算された数の論理で学校・学級を削減していく方向を示したものであり、私たちは配置計画案の抜本的な見直しを強く求めていく。
【1 指針改定版に基づいた計画案では北海道の高校は守れない】
道教委は、5月に全道各地で行われた第1回地域別検討協議会で指針改定版を示した。これまで「望ましい学級規模は4~8学級」に固執してきたが、その姿勢が破たんし、指針改定版では少子化の進行から小規模校が多くなり1学年1学級校は50校以上存在する現状に対して「小規模校のメリットを最大限に活用」し「多様な学習ニーズに対応」と、その存在価値を認めている。
しかしその一方で、基本的な考え方として「1学年1学級は2年連続20人未満、離島は2年連続10人未満」「定時制は3年連続10人未満」で再編すると、具体的な数値を示して再編の強行をも示唆している。
また「活力と魅力ある高校づくり」として学校設定教科・科目の開設などをうたっているが、これまで総合学科や単位制、フィールド制などの多様なタイプの高校を推進してきたことの総括をせず、国が進める普通科新学科を導入するなど「多様化・特色づくり」「高校の魅力化」を学校現場に押しつけ、減る一方の中卒者をお互い取り合って生き残り競争を煽る内容となっている。
そして「高校標準法に基づき40人」と生徒減少が進む中でも相変わらず少人数学級に背を向けた施策を遂行しようとしている。
このような「指針」改定版に基づいた配置計画案では、本道の高校は守れないことは明白である。
【2 生徒の悩みに向き合う学校こそ求められる】
文部科学省の調査では21年度小・中学校の不登校は24・5万人と過去最多であり、22年度の小・中・高校の自殺者も514人と過去最多となり、さらに学校はこうした数字には表れない困難もたくさん抱えている。
教員不足も深刻であり、現在教員定数が埋まらない状況のもとで多数の学校が運営されている。その結果、高校教員の月平均時間外勤務は96時間という深刻な結果が表れている(全日本教職員組合の調査)。
こうした状況にあって生き残るための「活力と魅力ある」を外部にPRすることを学校と地域に求めることが、学校設置者としての道教委の役割ではないはずである。小規模校は一人ひとりの生徒と向き合う教育実践を積み重ねてきた。今求められる学校は、全ての生徒たちが安心して学校生活を送られる学校であり、生徒に真摯に向き合える学校である。
【3地域の高校教育を守る施策を】
配置計画に求められることは、これ以上学校を減らさないための施策である。全ての学校は、そこにいる生徒たちが必要としている学校であり、少子化が進む中で学校を残すためには、小規模校の良さを認め、少人数学級をさらに進めていく施策に転換することである。
道教委は、募集した学級数に対し入学者数が足りていない場合に「自然減」としている。毎年3月にその発表があるが、学校現場では突然の学級減は教職員数の減少や予算措置の変更など、教育条件が大きく低下することとなり、学校運営体制や人事異動にも影響することから学校は常にその影に脅かされている。成り行きまかせの適正配置計画でなく、入学生数にかかわらず、配置計画で示した学級数は維持することを強く求める。
今後、27年度以降の中卒者もより一層減少する状況が続き「指針」改定版に基づいた配置計画では募集停止や学級削減など子どもたちの教育を受ける権利が脅かされる事態がさらに進んでいくことになる。これでは道教委が求める「多様化・特色づくり」「高校の魅力化」さえも失われ、地域は疲弊するばかりであろう。
地域別検討協議会では、訓子府町長から道教委に対して「人口減少が著しい北海道で、高校配置の在り方をどのようにしていくのか鈴木知事の見解を聞いてほしい」との要望が上がった。まさに今求められていることは、道教委として40人から学級定員の縮減を知事に要望し、そして鈴木知事は道独自の少人数学級を決断することである。
【4 特別支援学校設置基準の制定を踏まえ、教室不足解消も含めた配置計画の策定を求める】
公立特別支援学校配置計画案においては、小平高等養護学校、紋別高等養護学校で間口減および閉科となっている。このことは生徒の学びの選択を狭めるものである。
また、併設高等部について、特別支援学校小・中学部の児童生徒数が増え教室不足が一層進んでいるにもかかわらず、施設設備の整備を行うことなく現状維持または間口増になっている学校が多数あることは、障がいのある子どもが安全な環境で安心して十分な学習をすることをなお一層困難にするものである。
このような状況を放置することは、教育行政の不作為による障がいのある子どもたちへの人権侵害であると言わざるを得ない。
一昨年に制定された「特別支援学校設置基準」は、「児童・生徒数の上限」「備えるべき特別教室などの施設・設備」「通学時間の上限」が規定されないなど、教室不足解消と教育環境改善という制定の趣旨に照らすとあまりに不十分と言わざるを得ないものであった。
とはいえ、設置基準は、そこで学ぶ子どもたちの教育条件改善の足がかりにしなければならず、とりわけ教室不足解消は喫緊の課題である。
しかし、今回の「特別支援学校配置計画案」には、高等部の学級数の増減は示されているものの、小・中学部も含めた教室不足解消に関する計画について一切触れられていない。設置基準公布の際、文科省は各教委に対して教室不足解消の計画、いわゆる「集中取組計画」の策定を行うことを要請しており、教室不足に関する文科省調査(22年3月公表)に対し道教委は「計画有り」と報告しているが、実態として具体的なものは何ら示されておらず、「集中取組計画」も踏まえた配置計画を早急に策定すべきである。
昨年の道内特別支援学校において「児童生徒の増加に伴う一時的な対応をしている教室数」は143教室で、特別教室の転用、教室の間仕切りなど工夫して対応しているという実態が明らかとなった。しかも、調査時点(21年10月)で、24年度までに教室不足の解消が計画されているのが2教室にとどまるなど、問題が放置されていると言っても過言ではない。
道教委は、今後の見通しとして「既存施設等の活用による対応を検討」と、これまでと変わらない配置計画の方針を示しているが、「既存施設への詰め込み」はやめ、本来あるべき単独校舎による新増設の計画を示すべきだ。
この後も当事者の声、学校の実態をよく踏まえ、特別支援学校の過大・過密の解消、小・中学部も含めた教室不足解消の道筋を明らかにするとともに、狭隘化・教室不足が深刻な自治体との連携を図りつつ、それらの早急な実行を強く求めるものである。
また、特別支援学校の寄宿舎の統合や廃止も見過ごせない問題である。広大な本道では毎日の通学が現実的ではない地域も多く、寄宿舎の存続は教育権保障の要である。札幌圏の義務併置型知的障害特別支援学校は、全校から寄宿舎がなくなったため、家庭事情や発達課題などから寄宿舎教育を希望する場合は遠く離れた学校を選択するしかない現状がある。
これが「身近な地域で専門的な教育を受けられる特別支援教育」の現実である。これを打破し、寄宿舎の再建を進めていくことこそ、本来の特別支援教育のあるべき道である。
【5 20人学級こそが教育の希望~「高校配置計画案」を撤回し「指針」改定版の転換を求める】
日本の子どもたちは、幸福度をはかるユニセフの調査で、精神的な幸福度が38ヵ国中37位であり、自己肯定感が極めて低い。私たちはこれまでも、教育効果の観点から小規模校や少人数学級の優位性を訴えてきたが、この状況において、ゆきとどいた教育ができる少人数学級は大きな希望である。
小学校では35人学級が進んでおり、「高校配置計画」も、その流れに即したものとなるよう、例えば、1学年1学級の高校は、道独自で20人学級とするなど、本道の実態を踏まえた現実的な少人数学級への転換が求められている。
子どもたちと教職員の笑顔、本道の未来のために道教委は教育条件整備に全力をあげるようあらためて強く求める。
(関係団体 2023-06-23付)
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