インタビュー 4種校長会長に聞く② 子ども主語の教育推進 オール北海道でしなやかに 
(関係団体 2023-06-28付)

4種校長会インタビュー道中会長森田聖吾
4種校長会インタビュー道中会長森田聖吾

―会長としての抱負

 全道561人の会員の総意に支えられ「中学校長の職能向上を図り、北海道中学校教育の振興を目的とする」として結成された本会の会長職の任に就くことは大変光栄なことであると同時に、その職責の重さを強く感じている。本会役員の副会長の皆さんをはじめ、運営委員・地区理事、事務局・幹事の皆さん、そして何よりも全道20地区の校長会の皆さんのご支援とご協力をいただき、これまでの歴代会長をはじめ、諸先輩方が築かれ、継承されてきたことを受け継ぎ、北海道の中学校教育の発展のため、北海道の未来を担う中学生のために全力を尽くしていく。

 私たち校長は、会の総力を結集し、教育改革の着実な推進と教育課題に果敢に挑戦し、今、求められる中学校教育の充実を「オール北海道」で実現し、教育の真価を発揮していかなければならない。

 そのためには、本年度のキャッチフレーズである「新たな時代へ“連携”し、“しなやか”に歩む 道中」を合言葉に、皆さんと共に諸活動の充実に努めていく。

―中学校長会の抱える課題と対策

 学校は子どもたちの多様化や教育DX、少子化等の社会の変化を踏まえ、個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実を図り、主体的・対話的で深い学びの実現に向けた取組をさらに進化させることが期待されている。さらに、不登校生徒への初期段階からの組織的・計画的な対策や、いじめの積極的な認知と組織的な対応によるいじめ防止や早期対応の徹底など、安心・安全で楽しい学校生活の構築も喫緊の課題である。

 道中学校長会(以下、道中)は、子どもたちの豊かな学び・幸せな学校生活を保障するために、教員が心身共に健康な状態で子どもたちと向き合い、教師としての専門性をアップデートできる時間的余裕を持って働くことのできる学校の指導・運営体制の充実に、会の総力を結集し取り組まなければならない。

 そのためには、市町村校長会と各地区校長会、他校種の校長会との緊密な連携が不可欠である。

 このような協力体制および連携をもとに全道の中学校教育の実態や課題をまとめ「道中としての方向性」を見いだし、様々な課題について現場の立場から教育行政機関に対して要望するとともに、互いの役割を尊重しながらも知恵と情熱を結集し、北海道の実情や地域性を踏まえた教育改革につなげていきたいと思う。

―本年度の重点

 一つは「子どもを主語」とした教育活動の推進である。

 各学校では、1人1台端末などのICT機器を効果的に活用し、主体的・対話的で深い学びの視点からの授業改善への歩みを加速しなければならない。さらに子ども一人ひとりの可能性を引き出す教育では、一人ひとりの生徒が「何を学び、何ができるようになったのかを自覚し、自分の良さや可能性への認識や新たな気付きにつながる」、子どもを主語にした授業づくりへの改革が不可欠である。このような自立した学習者を育成する新たな学びの景色への挑戦を「オール北海道」で「しなやか」に推進していきたいと思う。

二つは、安心・安全で楽しい学校生活の構築に向けた取組である。

 学校は、全ての生徒が伸び伸びと安心して楽しい生活を送ることができ、自分も他者も大切であることを認識し、互いに尊重し合う関係の中で、自己肯定感や幸福度を高め、誇りを育んでいく場であると思う。一方、いじめ問題では、校長のリーダーシップのもと、学校いじめ対策組織を中心に「いじめ見逃しゼロ」を合言葉に積極的な認知と早期からの組織的対応の徹底を図っていかなければならない。また、重大事態が起きてから急きょ調査を行うための組織を立ち上げることは困難であることから、3月に改定された道いじめ防止基本方針等に沿って対処できるよう、市町村教委との連携を一層深めていきたいと思う。

 三つは、教育改革を進めるための対応と情報の発信である。

教員免許更新制度の発展的解消によって、新たな研修の仕組みが導入された。今回の改革は、まさに今起きている学校教育の課題に的確に対応できる力量を兼ね備えた教員の育成につながるものである。しかしながら、教員自身が望む研修を確実に受けられたり、自己研鑚に励んだりすることができる環境が整備されなくては意味がない。4月に速報値が発表された4年度の教員勤務実態調査集計において、1日当たりの在校等時間はいまだ多くの教員が10時間近く、またはそれ以上である。この数値から、働き方改革の推進に当たっては、学校現場で取り組むこと、関係機関に働きかけて支援いただかなければならないことについて、全道の中学校長と課題や対応策などを共有し、教育環境の充実につなげていきたいと思う。

 また、部活動の地域移行は、待ったなしとの強い思いで、円滑な移行につなげるために、各地区の校長が自治体と緊密な連携が図られるよう、全道の推進状況等を発信していきたいと思う。

 四つは「校長として学びたい」という思いに応える研究会の開催である。

 道中の活動の柱となる研究活動では、9月に「第64回北海道中学校長会研究大会小樽大会」を開催する。4年ぶりの「顔を突き合わせての研究協議」等を通じ、中学校長の職能向上につながる地区を越えた「気付き」や、校長同士の「心のつながり」をさらに強固にできることを願い、現在、小樽市中学校長会を中心に準備が着々と行われており、道中の総力を挙げて成功を目指したいと思う。

―アフター(ウィズ)コロナへの対応

 新型コロナウイルス感染症との闘いは、いまだに終息していないが、去る5月8日から感染症法上の扱いが変更された。移行後の学校教育活動の在り方については、これまで制限されてきた教育活動のうち、真に必要なものを積極的に実施するとともに、GIGAスクール構想のもとで生み出されてきた多様な教育実践の工夫を生かし、さらに進化を図っていくことが必要だ。人数制限のない入学式や体育祭では、子どもたちの希望に満ちた表情や輝く姿をより多くの皆さんにご覧いただくことができた。また、4年ぶりの校歌斉唱や部活動等での応援は、仲間との連帯感や愛校心の高まりにつながっている。

 一方、3年以上に及ぶ長いコロナのトンネルを駆け抜ける列車内(学校)の子どもたちの様子は、出口に差しかかった今でも、トンネルに入る前の状態に戻ることはない。この間で身に付いたコロナ対策にまつわるマスクの着用は、かつてほどの脅威がなくなった現在でも、人に素顔を見られることに抵抗感を持ち、マスクを外さない生徒が多いことも否めない。子どもたちには、このマスク着用の問題に限らず、自分と違う考えの人を一方的に批判するのではなく、世の中にはいろいろな考え方があることを受け入れ、常に互いを理解し合おうとする姿勢を持ってほしいと思う。

 結びに、道中では学校教育こそが、生まれ育った地域や環境等にかかわらず、未来を担う子どもたちが、夢と希望にあふれ、健やかに成長する礎になるとの認識のもと、道教委をはじめ、全日本中学校長会などの教育関係諸機関や団体と連携し、その充実・発展に、「しなやか」に「力強く」取り組んでいきたい。 

北海道中学校長会会長 森田 聖吾 氏 

 昭和63年道教育大旭川分校卒、平成13年道教育大大学院修。昭和63年旭川市立旭川第一中を振り出しに、平成16年旭川市教委指導主事、21年同課長補佐。24年旭川第二中教頭、26年光陽中教頭、28年東光中教頭、30年神居東中校長、令和2年北星中校長を経て、4年から忠和中校長(現職)。

 昭和39年9月11日生まれ、58歳。滝川市出身。

(関係団体 2023-06-28付)

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