インタビュー 4種校長会長に聞く④北海道特別支援学校長会会長 地域と共にある学校づくり推進 特支の専門性向上に尽力
(関係団体 2023-06-30付)

道特長・須見千慶会長
道特別支援学校長会 須見千慶会長

―会長としての抱負

 道特別支援学校長会は昭和38年に創立され、令和5年度は創立60周年を迎える節目の年となった。この間、特別支援学校に関する教育課題に正対し研究協議を進めるとともに、地域の小・中学校等と連携し、特別支援教育を振興させ、障がいのある児童生徒等の教育の充実に努めてきた。令和の時代を迎え、全ての会員が学校経営の基盤を再認識するとともに、道教委、あるいは社会全体に対する積極的な提言を行うなど、引き続き大きな役割を担っていきたい。

 4年12月には、中教審から答申「令和の日本型学校教育を担う教師の養成・採用・研修等の在り方~“新たな教師の学びの姿”の実現と、多様な専門性を有する質の高い教職員集団の形成」が出され、今回の教育公務員特例法の改正によって、新たに研修等に関する記録を活用した資質の向上に関する仕組みが導入された。

 教員にも新たな学びが求められている今、本会としても道教委や関係機関等と連携して、北海道全体の特別支援教育の専門性の向上を図るため力を尽くしていきたい。

―特別支援学校長会の抱える課題と対策

▼各障がい教育について

 視覚障がい教育では、札幌視覚支援学校、函館盲学校、旭川盲学校、帯広盲学校の4校の協力のもと、自校および担当地域の視覚障がいのある子どもの指導・支援の充実に向けて一体となった取組を進めている。4校の指導の充実とさらなる専門性の向上を目指して、4校の教職員全員がそれぞれの専門分野に所属し、授業等の研究を行うオンラインおよび参集による研究を継続する。

 また、道教委事業「HANDS―ON―Project」が最終年となり、4校協力で進めてきた視覚障がい教育におけるICTの活用、効果的な遠隔合同授業の在り方について、3年間の取組を形にしていく。

 また、前年度から札幌視覚支援学校、帯広盲学校に配置されたスポットビジョンスクリーナー(屈折検査機器)を活用し、視力検査が難しい幼児を対象にした視覚スクリーニング検査を実施するとともに、地域の保健担当者への研修を行っていく。

 聴覚障がい教育では、道内の聾学校7校(釧路鶴野支援学校を含む)が各地区での聴覚障がい教育のセンター的機能を担い、医療機関や保健機関、行政機関などの関係機関と連携して多面的に子どもを捉え、効果的・効率的な言語指導、学力向上に取り組んでいる。また、日常的な学習でICTを活用しているほか、修学旅行をきっかけに事前学習で見学地の聾学校の生徒とリモート交流したあと、実際に学校訪問を行うなど工夫した取組を進めている。

 高等部がある学校と義務段階の学校間の連携も深められている。聾学校に在籍する幼児児童生徒の障がいの状態や実態が多様化していることを踏まえ、従来からの手話、音声、文字、指文字等を適切に活用し、思考力・言語力の育成や的確な意思の相互伝達が行えるような指導の工夫に加え、個の特性に応じた教育をさらに進めていく。

 知的障がい教育では、自立と社会参加を目指す教育を進めているが、年々増加する児童生徒や障がいの多様化に対応するため「狭あい化」等教育環境の整備と教育課程の改善・充実が喫緊の課題である。

 また、新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行されたことから、学校教育・教育活動においても参加型、参集型の形に戻っていくことが考えられるが、コロナ禍の中で各校が実践してきたICT教育機器の効果的な活用も含め、GIGAスクール構想の実現に向け、全ての児童生徒の学習保障に積極的に努めていく。

 これまで培ってきた知的障がい教育の知見を継承しつつ、様々な環境の中でも教育効果を上げる方法、行事の持ち方等を交流していく。知的障がい特別支援学校は最も学校数が多く、広域に点在することから、各学校の課題の集約、情報提供を迅速に行い、昨年以上に各学校同士の連携強化を図っていく。

 肢体不自由教育では、前年度末で白糠養護学校が閉校となり道立7校と札幌市立2校で、学びを通して可能性を広げる教育を進めている。幼児児童生徒の障がいの状態の重度・重複化、多様化に対応するため、一人ひとりの教育的ニーズを的確に把握し、より質の高い教育を行うとともに高等部卒業後に地域等での豊かな生活につなげることを目指している。

 そのため各校が連携・協力して教職員の専門性の維持・向上を図ることを目的に、北海道肢体不自由教育研究大会では各校での教育課程の編成等を中心に、専門性向上セミナーでは時々の課題から全体講演と分科会を設定し、研修の充実を図っている。

 コロナ禍で根付いた遠隔での研修会等について、今後は参集も取り入れながら、効果的な方策を探り参加しやすく充実した内容となるように工夫を図り、教職員の専門性の維持・向上を行っていく。

 病弱教育では、道立2校と札幌市立1校において、病気や障がいに対応したきめ細かな教育を進めている。北海道医療センターに隣接し校舎を共にする手稲養護学校三角山分校と市立札幌山の手支援学校もICTを活用した交流学習を進め、互いの教育実践を生かし成果を上げてきた。

 手稲養護学校三角山分校では、様々な関係機関との遠隔授業や地域も交えた就労体験実習等について幅を広げて実施し、大きな成果を上げている。

 また、従来の筋ジストロフィー等の教育のほかに札幌市内の医療機関に入院する児童生徒のための訪問教育の拠点校としての取組が本年度から進められており、それぞれの病状に応じた心理面等の理解や各教科等の指導には高い専門性が求められている。そのため、道の病弱教育の中心的な役割も手稲養護学校から三角山分校に移動しており、様々な情報発信等を行うとともに研修会では道内外からの講師を招いて、本道全体の病弱教育の充実につなげていく。

―本年度の重点

▼コミュニティ・スクールを活用した学校運営の活性化

 本年度、学校運営協議会が全ての特別支援学校に設置された。各学校において、学校運営協議会を効果的に活用して学校運営の活性化を図るとともに、さらに「地域と共にある学校」づくりを推進する。

▼副校長・教頭を含めた働き方改革のさらなる推進

 他の学校種に比べて特別支援学校の副校長および教頭の時間外勤務が突出している状況にあることから、これまでの取組での成果と課題を踏まえ、各学校における副校長・教頭を含めた業務の平準化や道教委との連携によってさらなる業務の縮減を図っていく。

▼ICT等を活用した効果的・効率的な取組

 ICTを積極的に活用し、交流および共同学習も含めたオンライン授業の展開、教職員の研究会や研修会、会議等にICTを積極的に活用することで、効率的・効果的な学校運営に努めるとともにクラウドの活用等を通して働き方改革のさらなる推進にも連動させていく。

―アフター(ウィズ)コロナへの対応

 コロナ禍4年目を迎え、新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行されたことに伴い、学校における対策も変わったが、児童生徒の生命と健康、学びを守る取組は継続されている。また、GIGAスクール構想によって整った義務校における1人1台端末、高等部におけるBYODの取組等によるICT教育環境を有効に活用し、学校における新たな学びの文化を構築すべく様々な取組が進められている。

 これまで各学校、各障がい種別で抱えてきた課題をICTの活用等を通して解決し、特別支援学校の教育のさらなる充実を図りたい。また、5年度から全ての特別支援学校においてコミュニティ・スクールが導入され、学校と地域が力を合わせて子どもたちの成長を支援する仕組みが整った。このような中で、各障がい種の専門性や各支部の機動性など、横のつながりを効果的に活用しながら各学校の指導・支援の充実が図られるよう協力していきたい。

 昭和62年道教育大旭川分校卒。平成28年帯広聾校長、31年札幌聾校長を経て、令和4年から道高等聾校長。

 昭和38年6月7日生まれ、60歳。旭川市出身。

須見 千慶氏

(関係団体 2023-06-30付)

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