肢体不自由部門 釧路に設置求める 道特長等 6年度文教施策要望
(関係団体 2023-07-04付)

 道特別支援学校長会(須見千慶会長)、道特別支援学校副校長・教頭会(鴻江康人会長)、道公立学校事務長会(岩間淳会長)が道教委に提出した「6年度北海道文教施策に関する要望書」の要望事項はつぎのとおり(6月29日付1面既報)。

1特別支援教育の充実に関すること

▼「特別支援教育に関する基本方針」の改訂

 新たに策定された5年度から5ヵ年を計画期間とする「特別支援教育に関する基本方針」に基づき、各種施策が計画的に実施されるよう要望する。施策を具体化する段階で、校長会や関係する学校などと十分協議するよう要望する。―新規

▼特別支援学校管理運営予算―重点

 様々な障がいや疾病を有する児童生徒が学校や寄宿舎で安心・安全に過ごし、生活の質の向上や充実した教育を提供するために必要な予算を確保されるよう要望する。

▼学校給食関連運営費―重点

 学校給食関連運営費について、給食衛生管理基準に対応することができるよう配当額の増額を行うとともに、学校規模や生徒数などを踏まえた傾斜配分とすることを要望する。

▼訪問教育―重点

 病院で行う訪問教育(準ずる教育)については、教員の専門性や病院との連携を効果的に行う必要があることから、拠点校方式の導入について検討されるとともに、具体的な行程のスケジュールを示すことを要望する。

▼スクール・サポート・スタッフおよび学習指導員配置事業―重点

 スクール・サポート・スタッフや学習指導員は、学習指導の充実や感染症対策および教職員の業務負担軽減において非常に有効であるため、今後も配置事業の継続と拡充を強く要望する。

▼インクルーシブ教育システム

 国連勧告を踏まえインクルーシブ教育システム構築に向けた特別支援教育の一層の充実と進展を図るため、市町村教育委員会やPTA団体等から意見や要望を聴取するなどして成果や課題を明らかにし、道教委としての今後の具体的な施策やスケジュールを示されるよう要望する。

 特別支援学校や特別支援学級から高校へ進学した生徒に対し、個々の障がいの状態や特性に応じた指導・支援が図られるよう、「個別の指導計画」の作成と活用の促進、支援員の配置や通級による指導の充実など、高校における特別支援教育の一層の充実を図る施策を高校教育課など関係部課と連携して講じることを要望する。

 医療的ケアを受ける児童生徒が充実した教育活動を受けられるよう、看護師を複数名配置する特別支援学校においては、常勤職の看護師を配置することを要望する。―新規

 障がいのある児童生徒が、どのような教育の場を選択しようとも、同じ水準の教育が受けられるよう、児童生徒の指導や支援に関する情報を地域で共有できる支援システムを構築することを要望する。―新規

▼特別支援教育パートナー・ティーチャー派遣事業

 予算削減とコロナ禍でリモートによる相談の実施や職員研修の実施等、支援の有り様も変化する中、PT派遣事業の方法や内容についての見直しならびに派遣事業継続の可否について検討することを要望する。

 今後PT事業が継続するならば特別支援学校による専門的な支援を継続的かつ安定的に行うために、全ての特別支援学校にコーディネーター加配を付けることを要望する。―新規

 幼児児童生徒の適正な就学に係る心理検査等の実施に向けて、各市町村教育委員会に心理士の配置、又はスクールカウンセラーの業務への位置付けなど、必要な環境整備を行うよう市町村教育委員会に働きかけることを要望する。

▼特別支援学校に在籍する幼児児童生徒への指導や支援

▽食べる機能に障がいのある児童生徒の摂食指導(給食指導)

 摂食嚥下に関わる最新の知見に基づき「特別支援学校における再調理のガイドライン」の全面的な見直しを行うことを要望する。

 特別支援学校で提供する段階食の基準を明確にするとともに、調理員が厨房で段階食の調理、提供を行うことができるよう体制整備を要望する。

 摂食指導に関する知識・技能の向上を図る教職員研修の充実や自立活動教諭の派遣等による支援体制の整備を図るよう要望する。―新規

▽就学奨励費

 昨今の物価高の現状を踏まえ、就学奨励費各費目の増額を要望する。―新規

 就学奨励費ICT機器購入費の支給限度額の増額を要望する。―新規

▽修学旅行に係る旅費配分基準

 特別支援学校の修学旅行経費の実態を踏まえ、「修学旅行引率旅費配分基準」の見直しを要望する。

 割高となる車いす対応バスの借り上げや、小規模校のバス借上費用に対する加算を要望する。

▽スクールカウンセラーおよびスクールソーシャルワーカー等活用事業

 社会の多様化が進む中、児童生徒が安心して学べる環境、教職員が本来業務に専念できる環境を整備するため、必要とする特別支援学校に対しては、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーを通年配置できるよう条件整備するとともに、スクールロイヤー利活用についてのガイドラインを示すことを要望する。

 聴覚障がいのある児童生徒に対応可能な手話のできるスクールカウンセラーおよびスクールソーシャルワーカーを確保することを要望する。また、確保が難しい場合は、手話通訳者の予算措置を要望する。

2各障がい種に関すること

▼視覚障がい教育

 幼稚部に在籍する幼児の障がいが多様化していることから、4・5歳児学級を4歳児学級と5歳児学級の単独設置とすることを要望する。

 幼稚部においては、幼稚園等との副籍や認可保育園の利用が可能となる制度を要望する。

 広大な校区を有する盲学校・視覚支援学校が、視覚障がい教育の拠点校としての役割を果たすため、全ての学校に対して特別支援教育コーディネーター加配を要望する。

 札幌以外の盲学校における高等部重複障がい学級の設置について、検討を要望する。―新規

▼聴覚障がい教育

 聾学校におけるデジタルワイヤレス補聴援助システムの整備および、継続的な音声文字変換システムの運用を要望する。

 広大な校区を有する聾学校および釧路鶴野支援学校が、聴覚障がい教育の拠点校としての役割を果たすため、全ての学校に対して特別支援教育コーディネーターの加配を要望する。―新規

 重複障がいのある幼児に対して適切な指導・支援を行うため、幼稚部に重複障がい学級の設置を要望する。

 早期から一貫した指導・支援体制を充実させるために、乳幼児相談室の安定的運営に必要な人員配置と予算措置を要望する。

 札幌聾学校に言語聴覚士(ST)を配属し、全道の聴覚障がい教育校への「幼児児童生徒の聴覚管理」「人工内耳やデジタルワイヤレス補聴援助システムを含む補聴機器等管理」「教員への研修サポート」を行うことができるよう要望する。

 手話検定費用の補助を要望する。―新規

 小・中学校等に在籍する聴覚障がいのある児童生徒への支援の充実に向け、聾学校と小・中学校との連携推進に係る旅費等の増額を要望する。―新規

▼視覚障がい教育・聴覚障がい教育―重点

 特別支援学校の寄宿舎に入舎する幼児の指導・支援について、幼稚部幼児に配置する職員を標準法定数の義務定数とは切り離して配置基準を法制化するよう国に働きかけるよう要望する。

▼知的障がい教育

 単置高等部、併設高等部の位置付けを整理し、社会のニーズや地域の実情に応じた学科やコース設定を検討するとともに、知的障がい特別支援学校高等部の在り方について道教委としての施策の評価、検証を具体的に行うことを要望する。

 知的障がい特別支援学校高等部における職業教育や進路指導の充実を図るために、民間企業等の人材を非常勤講師として活用できるよう制度の整備と予算措置を要望する。

 市町村教委ならびに教育支援委員会に対して、障がいの種類や程度および就学先の決定について、法令等に則って対応するように周知徹底されるよう要望する。

 知的障がい特別支援学校への自立活動教諭の配置をさらに拡充することを要望する。―新規

 大規模改修や狭あい化解消に当たり、特別支援学校設置基準および特別支援学校施設整備指針等に基づく改修を要望する。―新規

▼肢体不自由・病弱教育

 白糠養護学校の閉校に伴い、釧路管内の特別支援学校おいて肢体不自由教育部門の早急な設置を要望する。―新規

 医療的ケアの必要な児童生徒も含め、希望する全ての児童生徒がスクールバスを利用できるよう、看護師のスクールバス添乗をはじめとする条件整備を要望する。

 岩見沢高等養護学校の学科の再編等について、「“特別支援教育に関する基本方針”の策定に向けた検討会議」等において、魅力ある学科づくりに関して具体的な検討・協議を行う場を設けることを要望する。

 手稲養護学校三角山分校と市立札幌山の手支援学校の在籍児童生徒の状況を鑑み、今後の2校間での学校経営の在り方や特通生(給食の提供)などについて具体的な検討・協議を行う場を設けることを要望する。

 旭川養護学校の特例通学生に対する就学の在り方について検討を要望する。―新規

3教職員の専門性の向上に関すること

▼特別支援教育に関する教職員研修―重点

 本道の広域分散型の地域性やコロナ禍の状況を踏まえ、テレビ会議システムやウェブ会議アプリケーションを活用したオンライン研修の一層の充実を要望する。

 寄宿舎指導員や実習助手の専門性や資質・能力の向上を図るため、職種や経験年数に応じた段階研修を導入することを要望する。

 児童生徒等の支援を行う介護員や特別支援教育専門支援員、および学習指導員など、児童生徒の指導に直接関わる職種について、専門性の向上のための研修機会の一層の拡充を要望する。

 特別支援学校の養護教諭および栄養教諭の研修ニーズを把握し、研修機会の一層の拡充を要望する。

 知的障がい特別支援学校高等部における生徒指導の充実に向け、道教委主催の生徒指導研究協議会の立ち上げを要望する。―新規

 事務職員・看護師の職務能力向上のため、研修機会の確保と実務研修の充実に努めるよう要望する。特に事務主任現任研修の継続、事務長の現任研修再開のほか、オンデマンド研修等を整理したポータルサイトを作成するなど、OFF―JTの充実を図るよう要望する。―新規

▼校内研修の充実―重点

 学校における弾力的で多様な研修・研究活動を促進するため、校内・地域教職員研修促進費について、教職員の研修会等への参加費や単独で実施する研修会に係る講師を招く際の経費として支出できるように執行要領の見直しを要望する。

▼道立特別支援教育センター

 北海道における特別支援教育の進展と特別支援学校に対する支援の一層の充実を図る観点から、特センが担っている「教育相談事業」「研究・研修事業」「広報啓発・ICT教育推進事業」の推進や、その機能と役割を最大限に発揮することができるよう、十分な予算措置と必要な支援を講じることを要望する。

4自立と社会参加に関すること

▼障がい者雇用の拡大と定着に向けた就労支援

 障がい者雇用に関する民間企業の理解を一層促す施策を講じるとともに、北海道をはじめとする各自治体に対しても、障がい者雇用の拡大を促す施策を講じることを要望する。

 知的障がいのある生徒の進路選択の幅を広げ、企業等への就労を促すため、全道の道立高等技術専門学院に知的障がい者対象の訓練コースが設置されるよう関係部署に働きかけることを要望する。

5交流および共同学習に関すること

▼居住地校交流

 居住地校交流の一層の充実を図るため、副籍制度の導入を要望する。

 市町村教委に対して、居住地校交流の理解・啓発を行うとともに、小・中学校等と連携した実効性ある施策を講じることを要望する。

6施設設備等に関すること

▼施設設備―重点

 特別支援学校設置基準に基づく道立特別支援学校の現状と課題を明らかにし、校舎狭あい化等の問題の解消に向けた具体的な対応策とスケジュールを示されるよう要望する。

 多様な障がいを有する児童生徒の在舎する(在舎が今後も見込まれる)寄宿舎においては、寄宿舎生活の改善に向けて児童生徒の障がい特性を考慮した設備の抜本的な改修を要望する―新規

 知的障がい高等部単置校の職業学科に設置されている大型設備、機械の計画的な補修や修理のための予算措置および特色ある教育活動のため、原材料費の配分増を要望する。

 各特別支援学校の児童生徒の障がいや疾病の状態、およびエアコンの必要度について状況把握を行い、優先順位を整理の上、学校と寄宿舎に計画的にエアコンを設置することを要望する。

 学校給食調理施設設備の老朽化や稼働状態について状況把握を行い、計画的に修繕や更新することを要望する。

▼スクールバス―重点

 スクールバスの乗務員経費について、人件費高騰や児童生徒の安全確保の観点から予算の増額を要望する。

 スクールバスの入札や契約事務を学校で行うことは本来業務ではなく、様々なリスクもあるため、道内全ての地域について教育局または道教委で入札・契約事務を行うよう要望する。

 スクールバスの安全性や安定的な運行を確保するため、地域あるいは学校の状況に応じた安全に関する入札資格要件を付すことやプロポーザル方式の導入を要望する。

 スクールバスによる送迎の在り方について、利用している児童生徒のニーズ、運行実態、委託コスト等について評価を行い、福祉事業所の送迎サービスや民間タクシー等の活用も視野に入れた検討を行うよう要望する。

 スクールバス誘導業務の外注または必要職員の加配を要望する。

▼ICT関連設備・機器―重点

 GIGAスクール構想やICT教育の推進に係る施策や予算の策定に当たっては、学校現場の実態や要望等を踏まえた上で策定されるよう要望する。

 校内ネットワークやサーバーシステムなどのICT機器の管理およびメンテナンス等については、外部委託またはICT支援員などの専門職員を配置(派遣)することを要望する。

 寄宿舎で児童生徒が端末を使った自学自習ができるよう、寄宿舎のワイファイ環境の整備を要望する。

 教育活動や校務を行うための教職員用最新OSを登載できるパソコンならびにタブレット端末が全員に割り当たるよう予算措置を要望する。

 寄宿舎指導員、技能労務職員、会計年度任用職員に対する校務用パソコンの予算措置を要望する。

▼AED(自動体外式除細動器)―重点

 児童生徒の生命を守るため特別支援学校の寄宿舎にAEDを配置することを要望する。

7教職員に関すること

▼教育職員の人事異動

▽人事異動要領

 「“道公立特別支援学校教職員”人事異動実施要領」の厳格な運用を図るとともに、一定の経験を有する中堅やベテラン層職員のC群への異動促進を要望する。

 「“道公立特別支援学校教職員”人事異動実施要領」や人事異動に係る教職員配付資料等の見直し、改訂に当たっては、本会と道教委による検討会議での十分な議論を踏まえながら推進することを要望する。

 長年勤務の自立活動教諭や主任看護師の異動促進について、具体的な施策を講じることを要望する。

 教職員の人事異動にあたっては、人事異動要領の運用を図るとともに、学校種ごとの専門性を維持するための配慮を講じることを要望する。―新規

▽人事異動に係る学校郡区分

 「“道公立特別支援学校教職員”人事異動実施要領」の見直し・改定に当たっては、教職員の生活スタイルや交通事情等の変化を踏まえ、学校群区分の抜本的な見直しを要望する。

▼教職員の安定的な確保―重点

 教育に対する高い志を持ち、有能な人材を確保するため、学校における働き方改革の推進とともに、教職員の給与・手当など待遇面の改善を要望する。

 期限付教員等を確保するために、教職員課、各教育局、教員養成大学、ハローワーク等と人材確保のネットワークを構築するなど、具体的で抜本的な施策を講じることを要望する。

 郡部校における寄宿舎指導の専門性を維持するため、全道的視野に立った寄宿舎指導員の異動を促進するとともに、郡部校寄宿舎指導員の欠員補充を期限付職員で補充することのないよう適切な採用者数の確保を要望する。

 養護教諭・栄養教諭の支援の仕組み作り(特にメンタルヘルスにつながる研修や業務の実務に係る研修を設ける)を要望する。―新規

▼学校職員の配置等―重点

▽教員

 特別支援学校における学部主事に対する手当の制度化を要望する。―新規

 勤務状況に問題のある教職員の対応する専門職員を道教委に配置することや時間講師等の加配を要望する。―新規

▽事務職員等

 事務長や事務主任を目指す職員を増やすための、具体的な施策(インセンティブの付与、待遇や人事面での優遇など)を講じることを要望する。―新規

 特別支援学校における学校事務の特殊性や業務量を踏まえ、学校規模等に応じて事務主任を優先的に配置するなど、事務職員の適切な人員配置を要望する。

 道立学校運営支援室および教職員事務課の業務が、各学校事務室との相互理解と連携・協働によって円滑に行われ、効率的な学校事務が進められることを要望する。

▽給食調理員

 学校現場の実態を把握し、調理員定数の改善または各学校の実情に応じた臨時給食調理員の加配を要望する。

▽障がいのある教職員

 視覚障がいのある職員が勤務する学校に対する公文書については、点字文書またはスクリーンリーダー対応のデータを添付するなど、視覚障がいのある教職員の情報保障(合理的配慮)を要望する。

 聴覚障がいのある教職員が、業務に必要な情報を他の教職員と共有しながら業務を遂行することができるよう、画像表示システムの整備を要望する。

▽非常勤寄宿舎指導員

 非常勤寄宿舎指導員の年次有給休暇等の取得を見越した宿直回数の配分を要望する。

8働き方改革に関すること

 出退勤管理システムについては、システムの一層の効率化と労力の軽減を図ることを要望する。

 特別支援学校の管理職(副校長、教頭)の具体的な改善策を示されるよう要望する。

 副校長、教頭が校務の調整に専念できるよう、文書処理等の業務を補佐する職員の配置を要望する。―新規

 「校務の自動化」の実現に向け、必要な予算を確保されるよう要望する。―新規

(関係団体 2023-07-04付)

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