インタビュー 4種校長会長に聞く③ 4つのS念頭に人材育成など 協働とバランス意識し
(関係団体 2023-06-29付)

インタビュー③道高協宮澤一氏
道高校長協会 宮澤一会長

―会長としての抱負

 道高校長協会の代表として会長職を担うことは身に余る光栄だが、重責であることに身が引き締まる気持ちである。

 公立、私立を含めて277校ある高校にはそれぞれ課題があり、各校長がその課題に向き合い解決を図るべく尽力されているが、課題解決を迅速かつ的確に図るためにも、校長間のネットワークを構築していくことが肝要である。

 そのために、校長協会会員が互いに気兼ねなく、意見交換や相談をできるような空気感を道高校長協会に根付かせていければと考えている。

 本年度における北海道の高校教育および協会運営のキーワードとして「協働」と「バランス」を掲げている。

 「協働」については①教員個々の資質・能力を高めるとともに、質の高い教員集団が協働体制を築いて教育活動に当たること②管理職間の絆を強め、管理職の協働体制を教職員に示すこと③校長間の仲間意識を醸成し、校長協会会員の協働体制を構築すること―の3点を大切にしていきたいと考えている。

 「バランス」について、私自身が、道教委の示唆を仰ぐことと、現場の声を道教委へ意見具申することの両面をバランス良く実践するなど、バランス感覚を忘れずに会長職を務めていく所存である。

 そして、会員一人ひとりが「生徒、教職員、保護者、地域、外部機関等をバランス良く観察し適正に把握した教育活動、学校経営を推進すること」「国の動向や北海道教育全体をバランス良く注視し、自校の教育活動に加えて北海道の高校教育全体の質の向上のために行動すること」「ワーク・ライフ・バランスを学校に普及させ、働き方改革を推進すること」の3点についても、浸透させていきたいと考えている。

 また、一昨年度から協会運営の柱としている「4つのS(支える・備える・攻める・育てる)」についても継承していく。対話を重ね支える関係を少しでも多く築く。いつなんどき訪れるかもしれない危機に対して備える。問題に直面したときに、逃げずに攻める姿勢で解決を図る。

 公教育の要である教職員、そして将来の管理職候補であるミドルリーダーを育てる。

 常日頃からこの「4つのS」を念頭に置き、会長としての使命を果たしていく。

―高校長協会の抱える課題と対策

 一つ目は、人材確保、人材育成。「教育は人なり」は不易の言葉。教職に魅力を感じ、意欲の高い優秀な人材を確保することは高校教育における喫緊の課題である。5年度、全道各地において、かつてないほどの多くの高校が欠員のある状態の中でスタートした。われわれ校長も「教員離れ」に歯止めをかけるべく、教員を目指す人材が増えるような方策を道教委と共に考えていくことの必要性を切に感じている。

 また、管理職候補者の発掘および育成について、一昨年度道教委と校長協会による「未来の教頭応援プロジェクト」が立ち上がり、道教委による特例措置の設定や各校長の尽力によって、前年度の教頭昇任候補者選考の受験者は増加した。しかし、場当たり的ではなく、今後も末永く安定した人数を確保し管理職の質を高めていくためには、校長がミドルリーダーたちへの声かけや後進育成に努めるとともに、定年引き上げに伴う特例任用や役付暫定再任用に関して、先を見通した適切な制度設計や柔軟な運用を道教委に意見具申していくことが肝要と考えている。

 二つ目は、働き方改革。心も体も元気である教員は、子どもたちの元気を生み出す。また、学校が教職員の働きやすい場であることは、生徒の健やかな育成に大きく寄与するとともに、教職員を目指す人材の確保にもつながると考える。各学校で会議のペーパーレス化・デジタル化などICTを活用した業務改善や業務の平準化のための校務分掌の適正化などに取り組んでいるが、教職員の抜本的な意識改革が大切であると考える。

 「生徒のために」と考え、行動するほど、時間も労力もかかっている現実がある。教職員一人ひとりが、教科指導・進路指導・部活動指導等、学校としてできることの範囲を的確に判断し、自分自身の健康や家族のことを大切にできるような学校文化を醸成していくことが必要である。

 そのために重要なことは、保護者や地域等が、学校文化の変革に理解・協力をいただくことと、教職員定数の増加など人材や財政面における行政の支援であると考える。校長協会としても、各学校における働き方の見直し・改善を図るとともに、行政への働きかけを絶えず行っていく所存である。

 三つ目は、危機管理の推進。生徒の命は何よりも大切であり、防災や不審者対策を含め、危機管理マニュアル等の不断の見直しは肝要である。

 また、教職員の不祥事を回避するとともに、保護者や地域と適切な関係を築き、学校が真の信頼を得ることは学校教育や危機管理を推進する上で必要不可欠である。

 さらに、校長は危機の未然防止に努め、危機や課題に直面したときには、最終目標を見通し、管理職をまとめチームとして機能させ、最後は責任を取る覚悟を持つことが重要であると考えている。

―本年度の重点

 一つ目は、本協会が道教委から信頼され、本音で語る校長からの意見具申を道教委に受け入れていただくとともに、道教委から率直かつ明瞭な示唆を賜ることができる良き関係性を築くことである。

 そのために、道教委の施策や方針等を踏まえた教育活動を推進することや、北海道教育全体を俯瞰した学校経営に尽力することが肝要である。

 その上で、文教施策要望や全道代表校長研などにおいて、丁寧かつ適切な意見要望を重ねていきたいと考えている。

 二つ目は、全高長との緊密な連携を図ることで、国の動向や各都府県の課題などを迅速かつ的確に把握し、各校の学校経営に資する情報を北海道の高校全体で共有することに努めていきたいと考える。

 三つ目は、校長協会の柱とも言える調査研究部の活動。教育課程委員会、管理運営委員会、生徒指導委員会、進路指導委員会、高大接続小委員会の5つの委員会が、全国との関連や北海道の実情を踏まえて、各分野の教育課題について調査研究を行う。今の北海道教育に何が必要で、各校長にいかに還元できるかという視点で研究を進めていくことが大切であると考えている。

―アフター(ウィズ)コロナへの対応

 この3年間、子どもたちは中学時代に部活動をあまり経験できなかったことや、学校行事にも制限がかかるなど多くの弊害を受けて入学してきており、教職員はそのことを認識し、適切な教育活動を展開する必要性があると感じている。

 また、学校はコロナ禍でも「学びを止めない」ために、様々な工夫改善をしてきた。そこで、学校が学んだICTの効果的な活用や健康・安全指導等の実効性を高めるなど、教育の質の向上を図ることが大切であると考える。

 感染症を含め先行き不透明な社会において「国の宝物」である子どもたちの果敢にかつ柔軟に生き抜く力を育成することは、これからの学校教育に課せられた大きな使命である。校長が遺憾なくリーダーシップを発揮して、多様性を重んじ、周囲と協働しながら主体的に考え、壁に直面しても積極的に挑戦・行動し、自らの答えを導くことのできる生徒の育成に、北海道の高校全体で尽力したいと切に感じている。 

北海道高等学校長協会会長 宮澤   一氏

 平成元年北海道大工学部卒。21年知内高教頭、23年砂川高教頭、24年室蘭栄高副校長、27年札幌啓成高副校長、28年滝上高校長、31年岩見沢緑陵高校長を経て、令和4年から札幌南高校長。

 昭和40年1月1日生まれ、58歳。北見市出身。

(関係団体 2023-06-29付)

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