道高校倫理・公共研究会調査 自己有用感育む仕掛けを 現状肯定、将来の諦念強く
(関係団体 2023-08-18付)

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高校生、保護者の意識の変化に関する研究(クリックすると拡大表示されます)

 道高校「倫理」「公共」研究会(鈴木究会長)は高校生、保護者の意識の変化に関する研究をまとめた。授業や学校行事に対する生徒の満足度は約8割、人間関係では約9割と高い一方、「将来、社会で求められる人材に自分はなれる」との設問に47%の生徒が否定的に回答するなど、現状肯定と将来への諦念が強い傾向が浮き彫りとなった。また、自己有用感の高い生徒ほど自己の将来像を肯定的に捉えており、社会的課題への関心も高い傾向にあり、同研究会は生徒が自己有用感を育むことができる仕掛けづくりが必要と指摘する。

 研究は、高校生とその保護者の意識構造を解明して授業や生徒指導に役立つ視点を提案するため、昭和50年から5年ごとに実施しているもの。今回10回目の調査となり、新型コロナウイルス感染症の影響で7年ぶりの実施となった。

 コロナ禍の影響を踏まえて調査の基本コンセプトや項目などを大きく変更しており、オンライン形式で49校の生徒1699人、保護者485人の計2184人から回答を得た。

▼生活充実度・人生観

 規則正しい生活を送っているかとの設問に「当てはまる」「どちらかと言えば当てはまる」と肯定的に回答した生徒の割合は73・7%。学習計画を立てている生徒の割合は45・3%だが「自分の子どもは学習計画を立てている」と考えている保護者は73・0%と認識に差がある。

 平日の家庭学習の時間は「取り組んでいない」が25・1%、「30分」が23・7%、「1時間」が28・2%、2時間以上は全体の23・0%。スマートフォンの使用時間は「2時間程度」が23・2%、「3時間程度」が25・5%、「4時間程度」が16・2%と長時間化の傾向が見て取れた。

 授業の満足度は平成17年調査の26・6%から一貫して上昇。今回の調査では前回調査から28・0ポイント上昇し79・3%となった。学校行事の満足度も8割を上回っており、同研究会は1人1台端末の導入やコロナ禍による行動制限の緩和など環境の変化を要因として挙げる。

▼青年期の発達課題や困難

 「保護者や周りの人の影響を受けず、自分で判断したり価値を決めたりできる」との設問に70・5%が肯定的に回答した一方、「自分らしさを押し出すより、周りの人と同じことをしている方が安心する」との設問にも68・5%が肯定的に回答。同研究会は「自己判断や価値決定はできても、自分らしさを押し出すことを控え、周囲と同調しようとする傾向がある」と推察する。抱えている悩みは「進路(67・2%)」「学業(53・4%)」「友人関係(18・8%)」「保護者との関係(13・5%)」の順に高い。

▼他者との関わり

 88・2%の生徒が「他者との関係に満足している」と回答。良好な関係を望む相手は友人が90・6%、先生が75・9%、インターネット上の相手が46・2%で友人との関係を重視する傾向が見て取れた。また、友人関係が良好な生徒ほど学校行事、授業、生活の満足度が高く、自己有用感の高さにもつながっている傾向がある。

▼社会参加

 社会貢献をしたい生徒は80・6%、働くことは大事と考える生徒は91・0%と高い反面、地域のボランティアに興味がある生徒、興味がない生徒は半々と拮抗している。

▼将来像への影響

 社会で必要な力として9割以上が「自分の意見を分かりやすく伝える力」「社会とのルールや約束を守る力」を捉えている。61・9%の生徒が「将来は自分にとって働きやすい社会にならない」と悲観的な将来像を持つ生徒が多い。

 「将来、社会の中で求められる人材に自分はなれる」との質問に肯定的に回答した生徒は53・0%だが、保護者のわが子に対する考えは86・6%と子どもへの期待が見て取れた。

(関係団体 2023-08-18付)

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