インタビュー 道教育大教職大学院 北村善春特任教授に聞く 「対話」通した組織づくりを 新研修制度、働き方改革テーマに
(関係団体 2023-08-30付)

北村教授インタビュー
北村善春特任教授 インタビュー

 近年、学校現場においては、新たな研修制度や教職員の働き方改革への対応など、取り組むべき課題があふれている。しかし、解決に至るプロセスは各学校の実態に左右され、一概に論じることはできない。本紙日刊教育版では、道教育大学教職大学院の北村善春特任教授による連載「人が育つ組織づくりの実現に向けて~管理職と教職員の関わり合いに着目して」を予定している。各学校の特性に応じた特殊解にたどり着く一助になることを願う北村特任教授に、連載への思いを聞いた。

 ―連載に当たっての思い

 学校では、多様で複雑な要素が絡み合い、そこから様々な問題が生じてきています。そのような問題は、目指すゴールや取り組むプロセスが複数想定されるなど、簡単には解決に至らない特性を有していると言えます。

 従って、例えば「それぞれの先生の良さを生かしましょう」「協力し合える学校にしましょう」など目指す方向を示しても「なぜ必要なのか」「具体的に何をするのか」「どのような段取りで進めるのか」「実践しようとすると、どのようなあつれきが生じるのか」などのプロセスを明らかにしなければ、解決には近づきません。

 連載では、このようなことに着目して、その職場の問題状況の特性に応じた特殊解を導き出すプロセスを考えていきたいと思います。

 ―取り上げたい具体的な事例は

 一つは、先生たちと管理職が対話をしながら研修を受講奨励していく「新たな研修制度」にどう取り組むか。もう一つは「働き方改革」についてです。

 ―新たな研修制度について

 まず、実践が「対話」に基づいているかに着目します。「対話」と指導助言は何が違うのか、「対話」と日常会話は何が違うのかなど、「対話」に大きなヒントがあると考えているからです。

 また「職場で人が育つ」とはどういうことかについても関連付けて考えていきたいと思います。管理職を含めて学び合う環境をどうつくるか。研修が結果として実務に生きているかなどに着目することが重要です。そこで、日常業務自体が学びの場となることにも着目したいと考えています。

 例えば、困り感や考え方を共有し、その人の「本当にやってみたいこと」を引き出していくには、どのような関わり方が考えられるかという感じです。

 先輩が過去の経験則を語り、足りないところを指摘するだけというアプローチでは、一人ひとりの教職員が自分はどうありたいのかを考え、職場で共有し、学び合う関係をつくることは難しくなるように思います。

 つまり、人と人との相互作用をより良い方向に持っていけるような関わり方を探究することが、今、学校に求められていると言えるでしょう。従って、仕事自体に学びの要素を見いだし、それを「対話」を通じて共有して実践につなげるという観点からも「対話による受講奨励」を考えてみたいと思います。

 ―働き方改革について

 働き方改革は、そもそも何が求められているのかを、原点に戻って考える必要があります。管理職を含めて、学校の教職員一人ひとりがどう捉えていくかが重要です。

 例えば、職場で「働き方改革は、なぜ必要か」などと意見交換したり、職場の働き方に関する問題状況を共有したりしているでしょうか。就業時間内に収めるために何をするかという切り口は重要ではあるものの、「自分がやりたい仕事」「重視したい仕事」「省力化」について、一人ひとりの認識は違うかもしれません。

 そこで、従来の取組に加えて、一人ひとりの仕事と結び付けて、働き方改革を実現する手だてはないのだろうかというアプローチも考えてみたいと思います。

 なお、働き方改革へのアプローチは、それぞれの立場の責任と権限の範囲で行っていくことが必要です。従って、学校の責任と権限でできる問題状況に焦点化することが重要です。それが焦点化できれば、学校で解決できるアプローチを考えることができます。

 例えば、データを集めて分析し、全国や本道の教育課題として整理した上で施策を講じることは、行政の責任と権限で行うことです。学校は、それらのデータや施策を自校の現状や問題状況とつなげて解釈しなければ、当事者としての受け止めにはならないでしょう。

 従って、特に管理職は、働き方に関する自校の問題状況の要因はどこにあるのかを明らかにするために、教育活動がどのような働き方によって成り立っているのかという自校の実態を把握することが重要になるのです。

 この点についても、管理職と教職員の関わり合いに着目していきたいと考えています。

 ―シリーズを通して

 様々なアプローチでチャレンジしている現場があることを伝えたい。その上で、皆さんと一緒に考える切り口を提示したいと考えています。

 きたむら・よしはる

 昭和57年二松学舎大文学部卒。平成22年静内農業高校長、24年清水高校長、25年日高教育局長、28年道教育庁学校教育局長、30年道立教育研究所長を経て、令和2年から道教育大大学院教育学研究科(教職大学院)特任教授。

 昭和34年9月30日生まれ、63歳。長野県駒ヶ根市出身。

(関係団体 2023-08-30付)

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