道議会質疑 予算特別委員会(7月11日)
(道議会 2023-11-28付)

【Q 質問Question A 答弁Answer P 指摘Point out O 意見Opinion D 要望Demand】

【質問者】

▼渕上綾子委員(民主・道民連合)

▼白川祥二委員(北海道結志会)

【答弁者】

▼倉本博史教育長

▼山本純史学校教育監

▼村上由佳生涯学習推進局長

▼川端香代子学校教育局長

▼齊藤順二道立学校配置・制度担当局長

▼山城宏一指導担当局長

▼伊藤伸一生徒指導・学校安全担当局長

▼谷垣朗教職員局長

▼伊藤直人社会教育課長

▼手塚和貴道立学校配置・制度担当課長

▼遠藤直俊義務教育課長兼幼児教育推進センター長

▼大槻直広生徒指導・学校安全課長

▼中嶋英樹働き方改革担当課長

◆さわやか相談員

Q渕上委員 子どもの身近な相談役として、仙台市、さいたま市では、さわやか相談員が導入されている。さわやか相談員について道の認識を伺う。

A大槻生徒指導・学校安全課長 仙台市とさいたま市の相談員について。仙台市のさわやか相談員は、児童生徒が抱える不安や悩み、ストレスの緩和のため、学校に配置され、児童生徒の話し相手や遊び相手となることを業務とし、国の補助事業を活用して配置されている。

 また、さいたま市のさわやか相談員については、児童生徒や保護者の相談に、より専門的な見地から対応するため、市内の中学校等に相談室を設けて配置され、市の単費で措置されている。

Q渕上委員 スクールカウンセラーとどう違うのか伺う。

A大槻生徒指導・学校安全課長 スクールカウンセラーとの相違点について。スクールカウンセラーは、公認心理師や臨床心理士、児童生徒の心理に関して高度に専門的な知識および経験を有する者や、それに準ずる知識および経験を有すると認められる者の中から、各自治体で配置しており、児童生徒へのカウンセリングやカウンセリング等に関する教職員や保護者等に対する助言を行っている。

 一方、仙台市やさいたま市に配置されているさわやか相談員は、臨床心理士等の資格を必要とせず、主に児童生徒や保護者の相談に対応することを業務としている。

Q渕上委員 学校は人手不足で、スクールカウンセラーは常設ではない。人材確保などの課題をクリアできれば、道でも導入する意義があると思う。所見を伺う。

A伊藤生徒指導・学校安全担当局長 相談しやすい環境づくりについて。学校生活などに関し、様々な不安や悩みを抱えている児童生徒や保護者にとっては、定期的に学校を巡回しカウンセリングを行うスクールカウンセラーに加え、日常的に相談できる人材や相談窓口は、相談しやすい環境が身近にあるという点で意義のあることと考えている。

 道教委としては、今後、児童生徒や保護者がいつでも気兼ねなく相談することができるよう、子ども相談支援センターによる24時間対応の電話・メール相談や来所相談、SNSを活用した相談体制のほか、前年度開設した1人1台端末を活用して相談できる「おなやみポスト」、さらには、道関係部局が開設している「親子のための相談窓口」などを周知し、児童生徒や保護者が相談しやすい環境づくりを進めていく。

P渕上委員 資格が不要なので、人材確保のハードルが低く、多くの業務を抱える先生方の負担を減らすことにもなると思う。

 まずは調査研究を深めていただくことを求める。

◆性の多様性

Q渕上委員 LGBT理解増進法の制定に際し、ネットでは当事者への誹謗中傷にあふれている。フィルタリングできないため、子どもたちに直接降り注ぎ、深く傷ついている。

 中傷する人の方が不適切だと子どもたちに明確に示すべきと考える。所見を伺う。

A大槻生徒指導・学校安全課長 誹謗中傷対策について。いわゆるLGBT理解増進法は、性的指向およびジェンダーアイデンティティーの多様性に関する国民の理解が必ずしも十分でない現状に鑑み、国民の理解の増進と多様性を受け入れる精神をかん養し、多様性に寛容な社会の実現に資することを目的にしていると承知している。

 学校においては、性的マイノリティーに関して、性的指向などを理由とする差別的扱いが不当であると人権教育等を通して指導するとともに、教育活動においても、関連する法律などの理解および人権に配慮した丁寧な関わりや、児童生徒が多様性を認め、自分と他人を尊重することができ、安心して過ごせる環境を整備することが重要と認識している。

Q渕上委員 LGBT理解増進法によって、むしろ理解増進が妨げられるとの懸念もあるが、道内の教育の場でどう解釈し、どう活用するかの裁量は道教委にも委ねられる。道教委はどのように考えているのか伺う。

 また、傷ついた子どもたちにどう対応していくのか、教育の場でどのように啓発していくのか、併せて伺う。

A伊藤生徒指導・学校安全担当局長 LGBTに関する理解について。道教委では、性的マイノリティーに関する理解促進に向け、教職員研修資料の作成、配布や指導助言を行うほか、ことし2月には、市町村教委職員や道立学校長等を対象に専門家の講演などによる研修会を実施したところ。今後も、適切な支援策に関する教職員研修の一層の充実を図り、校内に支援チームをつくり、ケース会議を開催するなどして、児童生徒が安心して学校生活を送ることができるよう努めていく。

 また、昨年12月に改定された国の生徒指導の基本書である生徒指導提要に、性的マイノリティーに関する理解と対応が示されたことから、道教委では、SNS相談等での性的マイノリティーの相談対応を行うとともに、学校においては、教職員が、いかなる理由でもいじめや差別を許さない適切な生徒指導、人権教育等を推進することはもとより、悩みや不安を抱える児童生徒のよき理解者となるよう努めることについて、引き続き、市町村教委と連携し、指導助言していく。

◆農業学習

Q渕上委員 先日、北海道国営農地再編整備事業推進連絡協議会と意見交換した中で、道内の小学校において、農業科という名称で農業に関する学習を行っている例について説明いただき、意義を共有したところ。

 道内の小学校で、どのような農業に対する学習が行われているのか伺う。

A遠藤義務教育課長兼幼児教育推進センター長 農業に関する学習について。農業については、学習指導要領において、小学校第5学年の社会科で、わが国の食料生産は自然条件を生かして営まれていることや、国民の食料を確保する重要な役割を果たしていることなどについて理解することとなっている。

 また、こうした学習に加え、各学校が目標や内容を定めることとなっている総合的な学習の時間において、農業を学習課題に設定して調査や体験活動を行っている学校もあり、美唄市内の小学校では、生きる力やふるさとを愛する心を育むことを目的として、田植えや生育観察、稲刈りなどの農業体験などを行っていると承知している。

 このほか、道内では、当麻町において、米や地域の特産物の栽培活動や農舎を活用した農業の歴史学習を行う「田んぼの学校」、壮瞥町において、地域の農業に携わる方の協力を得た果物栽培や収穫、調理を行う体験活動など、地元の産業に関わる多様な学習が行われている。

Q渕上委員 食料基地・北海道において、農業を次世代に引き継ぐことは重要である。教職員の働き方改革の件はあると思うが、子どもたちが農業に触れる機会をつくろうとする取組は最大限応援すべきと考える。所見を伺う。

A倉本教育長 今後の取組について。子どもたちが身近な地域の自然環境や文化、産業などについて、地域の施設や人材等を効果的に活用した体験的な学習などを通して理解を深めることは、子どもたちが地域の魅力や課題などを知り、地域の構成員の一人としての意識や本道に対する愛着や誇りを育む上で重要である。

 このため、道教委としては、今後も、本道の豊かな自然や文化、農業や観光をはじめとする産業などの教育資源を活用した体験活動などに取り組んでいる学校の実践や指導のポイントを全道の学校に紹介し、地域の環境を生かした学習活動が一層充実するよう取り組んでいく。

◆高校配置計画

Q白川委員 今春の中学卒業者数について、ピーク時と比較して示していただきたい。

A手塚道立学校配置・制度担当課長 中卒者数について。本道におけることし3月の中卒者数は4万1176人であり、昭和60年以降最多であった昭和63年3月の9万2222人と比較し、5万1046人、55%減少している。

Q白川委員 全日制の公立高校数について、過去20年間の減少数とともに伺う。併せて、1学年1学級の高校数も伺う。

A手塚道立学校配置・制度担当課長 学校数等について。本道のことし4月における全日制の公立高校は210校であり、20年前の平成15年4月における269校と比較して、59校、22%減少している。

 また、本年度、第1学年1学級の高校は62校であり、20年前の35校と比較して、27校、44%増加している。

Q白川委員 中卒者数の減少に伴い、高校数も減少する中、道教委は、今春、高校を取り巻く環境の変化に対応し、教育機能を維持するため、公立高校の設置指針を5年ぶりに改定した。その概要について簡潔に説明願う。

A手塚道立学校配置・制度担当課長 指針の概要について。改定前の「これからの高校づくりに関する指針」では、社会の変化や時代の要請に応える高校づくりを進めることや、中高一貫教育校や単位制高校といった特色ある学校の導入、1学年4学級から8学級の望ましい学校規模を維持するための再編整備、地域連携特例校などの小規模校に関する再編整備やその留保についての取り扱いなどを定めていた。

 改定した指針では、新たに、地学協働の推進など、地域における教育機能の維持向上、普通科新学科の設置など、生徒のニーズや社会の変化に対応できる活力と魅力のある高校づくりなどの考え方を示したほか、一定の圏域内で高校が担う役割や配置の在り方などについて協議を行う仕組みの導入、地域連携校などに対して、道教委と地域が連携して、高校の特色化、魅力化に取り組む集中取組期間の設定などを盛り込んだところ。

Q白川委員 小規模校は、集団活動は難しいものの、きめ細かな指導が可能である。都市部の大規模校などで不登校となった生徒を受け入れるなど、公教育の重要な役割を果たしている面もある。数の論理だけで、なくすべきではないと考えるが、所見を伺う。

A齊藤道立学校配置・制度担当局長 小規模校について。高校において生徒一人ひとりがその可能性や能力を最大限に伸ばしていくためには、互いに学び合い、切磋琢磨できる環境が大切であり、小規模化が進んだ場合は再編整備について検討することが必要と考えている。

 しかしながら、地域創生における高校の役割なども踏まえ、一律に再編整備を進めるのではなく、地域連携校のほか、農業、水産、看護、福祉に関する学科を置く高校については、在籍者が20人未満となった場合であっても、一定の期間、再編整備を留保し、道教委が地域と一体となって特色化や魅力化に取り組み、入学者確保を図ることとしており、小規模校においても教育環境の充実を図り、地域とつながる活力と魅力のある高校づくりを進める考えである。

Q白川委員 通学圏内にある複数の市町村、道教委、民間が、それぞれ維持すべき高校の数や各校の規模、役割を徹底的に議論し、小規模校でも可能な限り連携して支える仕組みを整えるべきだと考えるが、所見を伺う。

A山本学校教育監 小規模校の在り方について。本道においては、高校の小規模化が進む中、学校と地域が連携協働し、生徒に選ばれる魅力ある高校づくりを推進していくことが求められていることから、このたび改定した指針において、通学区域などの一定の圏域単位で、関係市町村の参画を得ながら、将来を見据えた高校づくりを地域とともに考える仕組みを示したところ。

 道教委としては、圏域での協議において、圏域内の高校が担うべき役割や高校の魅力化、多様な学習ニーズに応える高校配置の在り方などについて協議を行い、その結果を配置計画に生かすことで、圏域における高校の教育機能の維持向上を図っていく。

P白川委員 生徒が減った道立高校の中には、市町村立化し、地域色豊かな教育を推進して存続を図る事例もある。

 三笠高校は、食物調理科を設け、生徒が地場産品を使ったレストランを運営、奥尻高校は、スキューバダイビングや防災の授業を展開し、生徒を全国から募集している。

 さらには、高校は地域活性化の役割も担っている。本道教育の中枢を担う道教委として、自治体がこうした取組を円滑に進められるよう、知事部局と連携を図りながら、国などに対して積極的に働きかけを行っていただくよう強く申し上げておきたい。

◆働き方改革

Q白川委員 教員の成り手不足について。文部科学省は、働き方改革を掲げ、仕事のスリム化を図ってきたが、労働環境の改善には程遠い状況である。学校現場では、長時間労働の悪影響が目立っており、若手を中心にメンタル面の不調による休職者が増え、教員の成り手不足も深刻化している。

 こうした事態について、道教委としてどのように受け止め、どのような対策を講じてきたのか伺う。

A中嶋働き方改革担当課長 学校における働き方改革などについて。教員が健康でやりがいを持って働くことができる職場環境は、子どもたちの学びの充実はもとより、優秀な教員を安定的に確保していく上でも極めて重要である。

 そのため、道教委では、これまで、教員の業務軽減に向けて、学校行事の精選などの促進や学校に関わる施策の見直し、教員業務支援員などの支援スタッフの活用などによって、学校における働き方改革を進めてきたほか、研修やセミナーなどを通じた心の健康への意識付け、家族、同僚なども含めた誰もが気軽に相談できる心の健康相談室などの相談体制の充実などによって、教員のメンタルヘルス不調の未然防止、早期対応に努めてきた。

 しかしながら、依然として長時間勤務の教員が多いことから、教員が生き生きと誇りを持って働くことができる魅力ある職場となるよう、働き方改革の取組をさらに加速させるとともに、地域や大学、関係機関との連携を一層深め、教員の確保に取り組んでいく。

Q白川委員 教育職員給与等特別措置法、いわゆる給特法の見直しも重要な課題である。

 この法律に基づき、公立校の教員には基本給の4%が教職調整額として支給される代わりに、残業代は、原則、支払われていない。このため、管理職による勤務時間の管理が甘くなり、長時間勤務が増える一因と指摘されてきている。

 この問題に対する道教委の認識と今後の対応について伺う。

A谷垣教職員局長 給特法について。給特法は、教員の職務と勤務態様の特殊性に基づき制定されたものであるが、管理職の時間外勤務命令に基づく業務を、災害時の対応など超勤4項目のみとする現行の規定は、教員の時間外勤務を抑制する動機付けを奪っているといった指摘があり、こうした観点から、給特法の見直しなどに向けた検討が必要と考えている。

 現在、国においては、教員確保のための環境整備に向けた方策の検討を進める中で、教職調整額や超勤4項目の在り方も含めた、教員の処遇改善について議論が行われており、道教委としては、こうした国の動向を注視するとともに、引き続き、教員の勤務実態を踏まえた給特法の見直しなどの検討について国に要望していく。

P白川委員 課題の抜本的な解消に向けて業務の削減につなげるための議論を進めることはもとより、教員の定数を見直し、人員を手厚く配置することが最も有効と考える。国への積極的な働きかけなど、より一層の尽力をお願いする。

◆生成AI

Q白川委員 現在、学校現場においては、チャットGPTなどの生成AI、いわゆる人工知能の取り扱いをめぐり、戸惑いが広がっている。

 思考力や表現力について、作文などの学習で重要なのは、自分で主張や構成を考えたり、言いたいことが伝わるように文章を推敲したりする過程である。それを省略した場合、思考力や表現力が身に付かないおそれがある。

 こうしたことに対する道教委としての考えを伺う。

A遠藤義務教育課長兼幼児教育推進センター長 思考力等の重要性について。生成AIを使いこなしていくためには、各教科等で学ぶ知識や文章を読み解く力、物事を批判的に考察する力、問題意識を常に持ち、問いを立て続けることや、学びに向かう力、人間性等のかん養がこれまで以上に重要になると認識している。

 そのため、体験活動の充実をはじめ、教育活動におけるデジタルとリアルのバランスや調和に一層留意する必要があると考えている。

Q白川委員 誤った情報をもとに、AIが間違った答えを出す場合もある。不適切な使用が広がれば、知的な成長を妨げるおそれもある。これについての所見を伺う。

A遠藤義務教育課長兼幼児教育推進センター長 生成AIの教育利用について。教育現場では、例えば、生成AIが宿題に使われ適切な評価が損なわれる、作文やレポートに生成AIを使うことで児童生徒の創造性等が低下する懸念があるなどの喫緊の問題があると承知している。

 一方で、生徒の理解度に合わせて教え方を調整する、評価テストを簡易に生成し、学習効果をきめ細かく確認する、AIとの対話的な教育方法を導入するなど、生成AIをうまく活用した教育を進めていくことで、AIの利用により教育効果が上がり、教員の負担も軽減できる可能性があることから、各学校においては、こうした生成AIの性質や教育活動で利用する際のメリット、デメリットを踏まえる必要があると考えている。

Q白川委員 AIが提示する様々な見解は、議論のたたき台となり、大きな可能性を秘めており、使い方次第では学習の活性化に大いに役立つとの声もある。

 このことに対する道教委の認識と今後の対応について伺う。

A川端学校教育局長 今後の対応等について。学習指導要領では、情報活用能力を学習の基盤となる資質・能力と位置付け、情報技術を学習や日常生活に活用できるようにすることの重要性を示しており、児童生徒に対し、新たな情報技術であり、多くの人が活用する生成AIがどのような仕組みで動いているかという理解や、どのように学びに生かしていくかという視点を意識的に育てていく姿勢が重要である。

 また、国のガイドラインでは、教育活動や学習評価の目的を達成する上で、生成AIの利用が効果的か否かで判断することを基本とすると示されており、各学校において、こうした点を十分踏まえた上で利用の可否について判断する必要があると考えている。

 道教委としては、国のガイドラインを参考に、各学校が生成AIの特性等について理解を深め、適切な利用がなされるよう指導助言していく。

P白川委員 今の時代、メリット、デメリットを踏まえた上で、子どもたちにAIリテラシー教育を施すことは欠かせない。

 子どもたちの主体的な学びをAIが健全にサポートできる仕組みづくりを早急に築けるよう、新しい技術の可能性とリスクをしっかりと見極めていく必要がある。

◆半導体人材育成

Q白川委員 次世代半導体開発・製造のラピダスの千歳進出を受け、苫小牧市内の理系の高校や高専が、生徒の将来の有望な就職先として期待を寄せている。半導体の基礎を教える授業を始める学校もあり、地理的に近い苫小牧の生徒にとって進路の選択肢が増えることが見込まれる。

 これまでのところ、同社は、千歳の半導体工場の雇用規模について、技術者は500人から600人で、その他の従業員を含め、全体で1千人規模との見通しを明らかにしており、政府も、ラピダスを次世代品量産の重要拠点と位置付け、知事や道内経済界も協力姿勢を示す中、道教委として、今後、人材教育にどのように取り組んでいくのか、ビジョンがあれば伺いたい。

A山城指導担当局長 人材育成について。道教委では、これまで、各教科での学習を実社会での問題発見・解決に生かしていくための教科等横断的な教育を推進するS―TEAM教育推進事業において、高校生のIT、データサイエンスに関するリテラシーの向上や、言語能力や情報活用能力、問題発見・解決能力の育成に取り組んできたところ。

 今後は、この事業において、大学や研究機関等との連携を一層深めることや、道外の生徒との探究活動を通じた交流機会を確保することなどによって、生徒の探究活動への参加意欲や実社会で必要とされる資質・能力のさらなる向上を図るほか、産業界、教育機関、行政機関などで構成する北海道半導体人材育成等推進協議会と連携し、半導体産業の魅力発信として小・中・高校生向けPRなどに取り組むとともに、IT企業などの技術者を講師に招く道立高校での出前講座の機会を拡充するなど、半導体関連産業を含めた次世代の産業を担う人材の育成に努めていく。

◆いじめ対応

Q白川委員 いじめ防止対策推進法が成立してから10年が経過したが、状況は一向に改善されていない。法律施行後、いじめの認知件数は3倍以上に増加、重大事態の発生件数も増加傾向にある。

 こうした中、文科省は、こども家庭庁の発足を前に、各地の教育委員会に対し、児童や生徒に重大な被害が生じるおそれのあるいじめが起きた場合、警察にすぐ相談、通報するよう通知を発出している。

 学校や教育委員会は、問題が起きる前の平時において、子どもにとって最善の対応は何か、どこまで自力で解決し、どうなったら警察と連携するのかといったことなどについて事前にしっかりと検討しておく必要があると思うが、所見を伺う。

A大槻生徒指導・学校安全課長 学校と警察との連携について。各学校においては、いじめ事案が発生した際、警察に相談、通報すべきかを的確に判断する必要があることから、道教委では、北海道いじめ防止基本方針において、警察への相談、通報に係る基本的な考え方や、学校において生じる可能性がある犯罪行為等として、暴行や傷害、強制わいせつなど、いじめの対応に応じた刑罰法規や具体例を示し、各学校や市町村教委が適切に対応できるよう指導助言してきた。

 また、ことし2月に、いじめ問題への的確な対応に向けた警察との連携等の徹底について通知を発出し、その中で、学校・警察連絡員の指定の徹底や学校警察連絡協議会等の活用について指導助言したところ。

Q白川委員 学校は、保護者に対して、あらぬ誤解を招くことのないよう、事前に十分に説明しておく必要があると思うが、所見を伺う。

A大槻生徒指導・学校安全課長 保護者への説明について。道教委では、ことし3月に、保護者向け資料「警察と連携した“いじめ問題”への対応」を作成し、学校で、いじめ行為のうち、犯罪行為として取り扱われるべき行為が発生した際には、被害を受けた児童生徒の命や安全を守ることを最優先に対応するため、直ちに警察に相談、通報し、連携して対処することを示した上で、こうした内容を入学式、始業式や保護者会等の様々な機会を捉えて全ての児童生徒と保護者に周知するよう、学校および市町村教委に指導助言してきた。

Q白川委員 学校や教育委員会が主体的に問題の解決を目指すのが基本だが、社会が複雑化する中、自治体の福祉担当者やスクールロイヤーといった専門家の力を活用することが求められている。こうした専門家の活用状況について伺う。

A伊藤生徒指導・学校安全担当局長 専門家の活用について。道教委では、昨年10月に、学校や教育委員会だけでは解決が困難な事案に対して、指導主事と弁護士や臨床心理士などの専門家から成る支援チームの体制を整備したところであり、その後、学校の初期対応によって生じた保護者間のトラブル対処への法律上の助言や、被害者および加害者への指導、援助に関する心理面での助言などの対応を行ってきたところ。

 学校からは、専門的見地からの助言を受け、組織的かつ多角的に対応でき、複雑化、深刻化した事案の解決に向けて道筋を整理できたなどの声があった。

 道教委としては、今後も、いじめが複雑化するなどの事案に即して、専門家の知見を活用する実効性あるいじめ対策を講じるなど、一層の危機感を持って取り組んでいく。

◆学校図書館

Q白川委員 学校や地域による学校図書館の充実度の格差について、道教委としてどのように認識し、その解消に向け、どのように対応していくのか伺う。

A伊藤社会教育課長 学校図書館について。国の学校図書館の現状に関する調査では、学校図書館における図書や資料の整備状況、新聞の配備状況等について市町村間で差が見られることから、学校等における読書活動を充実させる意義や重要性について理解を深めていただくことが必要である。

 このため、道教委では、これまで、学校図書館の読書環境の整備があまり進んでいない市町村を訪問し、環境整備に係る地方財源措置などについて説明を行い、積極的な取組を促しているほか、各市町村教委に対し、学校図書館に関する様々な事例の情報提供や助言を行ってきた。

 こうした取組に加え、本年度は、図書や新聞等の蔵書の整備の流れや図書整備に従事する司書教諭や学校司書等の具体的な役割を示したリーフレットを作成、配布するなど、市町村教委や学校等に一層の働きかけを行い、児童生徒の学びを支える学校図書館の資料等が充実するよう取り組んでいく。

Q白川委員 学校図書館がより一層利活用しやすくなるように、その環境の整備充実に向け、今後どのように対応していくのか伺う。

A村上生涯学習推進局長 今後の対応について。近年、情報化の進展やメディアの発達、普及などを背景として、児童生徒の読書離れが指摘されているとともに、感染症拡大の影響による学校図書館の利用制限や新しい生活様式の確立などによって、子どもの読書環境が急激に変化をする中、学校図書館においては、授業や様々な学習活動を通して計画的に利活用し、主体的・対話的で深い学びの実現や、児童生徒の情報活用能力の育成を図ることが期待されている。

 このため、道教委では、ことし3月に策定した北海道子どもの読書活動推進計画第5次計画において、学校図書館の利活用の支援に従事する学校司書の配置促進や担当職員等を対象とする研修会の実施、1人1台端末との連携などICT化の環境整備、保護者やボランティア、公立図書館、民間団体等との連携などを今後5ヵ年の重点的な取組として位置付けたところであり、児童生徒が様々な本にアクセスしやすい環境整備が進み、各学校で積極的に学校図書館の利活用が図られるよう働きかけていく。

Q白川委員 司書教諭有資格者の採用状況やICTを活用した学校図書館の運営状況について伺う。

A伊藤社会教育課長 司書教諭有資格者の採用状況等について。道教委では、司書教諭の有資格者を積極的に採用しており、毎年、定期人事異動において、司書教諭を置かなければならない学校には優先的に有資格者を配置している。

 また、ICTを活用した学校図書館の運営状況について、4年度の道教委の調査では、蔵書をデータベース化している学校の割合が全校種で80・2%、蔵書をデータベース化し、かつ、図書貸出し等を電子管理している学校の割合が全校種で69・3%であり、先進的な学校の取組として、町立図書館と学校図書館の電子管理システムをつなぎ、双方で図書の貸出し、返却を確認できるよう整備している事例や、市内全校で児童生徒の1人1台端末を用いて市立図書館の電子図書を利用できるよう整備している事例がある。

Q白川委員 学校現場ではデジタル教材が普及しつつあるが、情報活用能力を育む図書室の役割は増している。図書室の設置や整備が不十分なケースは特別支援学校でもあり、一部の専門家からは、貧富の差や障がいの有無にかかわらず、全ての子どもに自発的に学ぶ権利があり、その中心となるのが学校の図書室で、格差を漫然と放置している現状は学習権の侵害に当たるといった指摘の声も出ている。こうした指摘に対する教育長の所見を伺う。

A倉本教育長 学びを支える学校図書館について。学校図書館は、児童生徒の読書活動、読書指導を支える場であるとともに、学習活動を支援する学習センターとしての機能や、情報収集・選択・活用能力を育成する情報センターとしての機能を有しており、学校教育において欠くことのできない基礎的な設備であることから、道内全ての学校において、それらの機能を十分に発揮し、児童生徒の学びを支えることが重要である。

 このため、道教委では、今後5ヵ年の重点的な取組として、新たに、読書環境の整備を担う学校司書の配置や運営体制の整備、蔵書のデータベース化の導入や電子書籍の導入の検討、障がいの有無にかかわらず、誰でも利用しやすい書籍や設備の整備などを位置付けるとともに、取組の進捗状況を確認できる目標指標を設定し、本道の全ての児童生徒が、いつでもどこに住んでいても豊かな感性や表現力、創造力を伸ばし、健やかに成長していける学習環境の整備が図られるよう取り組んでいく。

(道議会 2023-11-28付)

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