心の健康観察 6年度導入へ 人員確保含め検討必要 文科省会議で有識者意見
(国 2023-12-18付)

 文部科学省は15日、児童生徒の自殺予防に関する調査研究協力者会議を開き、「ICTを活用した悩みや不安を抱える児童生徒の早期発見・早期支援」のイメージを示した。パイロット校における導入までの流れや検討事項を示し、有識者から意見を聴取。新たな業務に対応する学校現場の負担を懸念し、人員確保を含めて検討する必要性が指摘された。

 不登校、いじめ、自殺する児童生徒数が増加する中、文科省は1人1台端末を活用した心身の変化を把握する「心の健康観察」の全国的な導入を計画。6年度は10億円をかけて発達段階や留意点を考慮したモデル構築に取り組む。

 導入に向けた第1段階として、教育委員会において検討委員会を設置し、活用するICTツール、把握する情報、対応ルールなど全体の方針を決定する。つぎに操作方法や対応フローに習熟するための教職員研修を行うとともに、児童生徒・保護者への普及啓発、援助希求を高める自殺予防教育などの準備を進める。

 試行実施に当たりパイロット校では、ICTツールで把握した情報と実際の児童生徒の様子を重ね合わせ、従来の取組を補完する形で個々の状況を把握・支援する。検討委員会が取組をフォローアップし、アンケートによって課題や改善事項を整理。成果報告会など他校への展開を図る。

 導入するICTツールは、発達段階への対応、教職員の使いやすさ、個人情報の取り扱いなどを踏まえて決定する。入力内容を確認する職員や援助要請があった場合の対応など学校のルールを作成し、全教職員で情報共有を図る。危機的状況や援助要請があった場合、管理職や教育委員会の担当部署にも情報が届く仕組みとする。

 出席者からは、児童生徒からの相談要請を把握できるようになる一方、データを確認するという新たな業務に対応する教員の負担増加を懸念し「従来の人員で対応することは困難。ダブルチェックも必要でゆとりがなければ見逃しが生じる可能性がある」「学習指導と生徒指導の専門性を併せ持つ日本型学校教育の強みを生かしいくためには、一人ひとりの子どもを見取る人員体制が必要」と指摘した。

 また、扱い慣れていないアプリを操作する教員をサポートする体制やマニュアル整備の必要性が指摘された。

 会議ではこのほか「実践的な自殺予防教育の推進」テーマに意見を交換。保健体育、道徳、特別活動などこれまでの自殺予防教育を体系化・周知するほか、SOSを出し合える教員・子どもの関係づくりの必要性を示した。

 また、若年層の薬物の過剰摂取(オーバードーズ)が増加していることから、薬物乱用防止のみならず自殺予防の観点から対策に取り組むべきと意見した。

(国 2023-12-18付)

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